2021.12.14

初節句のお祝いに。老舗人形店〈久月〉で「ひな人形」事情をチェック!

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3月3日はひなまつり。ひな人形の購入は1月半ば以降がピークだそうですが、女の子がいるご家庭ではひな人形の準備はお済みですか?
今回は老舗人形店〈久月〉に伺い、ひな人形のあれこれについて教えていただきました。これから購入をお考えの方はもちろん、すでに購入した方も含めて、ぜひ参考にしてみてください!

ひな人形の由来や飾る意味を知ろう

_ 横山専務、商品部の林田さん、今日はよろしくお願いします!まずは、ひなまつりの歴史について教えてください。


左)横山久俊 専務取締役 右)商品部:林田実穂子さん

林田:ひなまつりの起源は中国から渡ってきた文化で、奇数が重なると「陰」になるとして暦の中で奇数の重なる日に季節の旬の植物を食することで邪気を払い「健康であれ」と願った行事があります。それが日本では一月七日(人日)三月三日(上巳)五月五日(端午)七月七日(七夕)九月九日(重陽)の五つとなり五節句と言われるものです。
三月三日に雛を飾るのは、上巳の祓いとして人形(ひとがた)に罪、穢れ(けがれ)などをつけて川に流したり、もやしたりする神事と、ひいな遊びといって男女ペアの人形でままごとの様な遊びをする、そこに神が宿る。この二つが交ざりあってできたものとされています。
それがまた五節句と結びつき今の形になりました。

_ ひなまつりのルーツが中国とは知りませんでした。

横山専務:穢れを移した人形(ひとがた)は、その人の厄災を引き受ける、いわば「身代わり」。ひな人形はお守りのような存在なんです。ですから、本来は1人にひと飾り(1セット)用意するのが理想です。自身のひな人形を、子どもや孫に引き継ぐのはお守りを使いまわすのと同じ意味合いになるのであまりおすすめはしません。

_ なるほど。では何歳まで飾るのでしょうか。お嫁に行くまで?

林田:昔は元服が行われる頃まででしたが、今では成人するまでと言われています。

_ 持ち主が無事に20歳を迎えられたら、お役目を果たしたということなんですね。その後、ひな人形はどうすればいいのでしょう。

横山専務:お守りですのでずっと飾り続けても問題ありませんよ。どうしても処分しなければならない場合は、神社やお寺で供養することをおすすめします。日本では昔から人形には魂がこもる、厄災を引き受けると考えられていますから、大切に扱ってあげてください。供養については〈久月〉でも毎年5月に第六天榊神社で行っていますので、お気軽にご相談ください。

今、どんなひな人形が選ばれている?

_ よく見ると人形の顔だちや衣裳にバリエーションがありますね。

林田:大きく分けて「衣裳着人形」と「木目込(きめこみ)人形」のふたつがあります。「衣裳着人形」は、わらなどで組んだ胴体に衣裳を着せて華やかに仕立てられた十二単姿で、切れ長の目に、鼻筋の通った高貴な顔だちをしているものが多いです。
一方の「木目込人形」は、多くは桐塑という桐の粉をしょうふのりをまぜて作られるボディに筋彫りを入れて、そこに裂を木目込んで仕立て、頭は筆で目を描き入れる「書き目」という技法を用いたやさしいお顔が特徴です。
基本的にデフォルメされたボディとお顔に仕上げられたものが多いです。

衣裳着人形
木目込人形

_ 売れ筋はどういったものですか?

林田:衣裳着では、最近特に若いお母さん達にはパステルカラーのやさしい風合いのものが人気です。また一方では、古来からの伝統である有職柄を選ばれる方も多いです。木目込は古典的な作品も多いですが、弊社オリジナルの「ほのか」のような丸い輪郭でガラスの目を埋め込んだ「入れ目」で可愛いタイプも人気があります。

_ たしかに現代的なお顔ですね。

林田:衣裳もやさしい色合いで、今の住環境にうまく溶け込むのも、選ばれる理由のひとつだと思います。様々な世代の方の意見を総合すると、伝統的な衣裳着人形を好まれる方が多いですね。黄櫨染や有職紋様柄の衣裳は優美ですし、ある程度の大きさがあると見栄えもします。なにより昨年は天皇の御即位もありましたので「ハク」がつくといいますか(笑)。

_ わかります(笑)。高価なものだし、「せっかく買うなら伝統的なものを持たせたい!」って思いますよね。収納飾りも最近は売れているそうですね。

林田:収納用の箱がそのまま台座になり、飾りやすいのが人気の要因のようです。格調高い塗物のほか、お部屋の一角に置いておいても違和感のない、木目(もくめ)調の人気も高まってきています。

左)収納飾り 右)名前旗

_ こちらは旗ですか?

林田:ひな人形の脇に飾って、お節句をより華やかに演出する名前旗です。お子様のお名前と生年月日を刺繍できるので、世界にひとつのアイテムとなり、大変喜ばれています。また久月の特別オリジナルとして「永遠のきずな」という、お子様のお名前と生年月日を無料で入れられるサービスのついたお人形もあります。

_ たしかに、自分専用のアイテムがあると子どもは喜びますよね。初節句は一生に一度の大切なお祝いなので、後悔なく選んであげたいです。ひな人形を選ぶポイントを教えてください。

横山専務:売場に来たら、第一印象を大切にひな人形をご覧ください。眺めているうちに、わが子にぴったりと思われるひな人形に必ず出合えます。それを大切にしてください。値段や大きさも大事ですが、直観を信じていただきたいと思います。

そして、日本の美しい伝統は繰り返される

_ ひなまつりが終わったら早く片づけないと婚期が遅れる…と言われることがありますが。

横山専務:根拠はありません。「てきぱきと片づけられる女性になってほしい」という、行儀作法のしつけから生まれた言葉ではないでしょうか。あわてて片づけて、思いがけず人形を傷めてしまうこともあるので、余裕をもって。片づける日は湿気の少ない晴れた日を選んでください。湿気を含むと人形が一番嫌うカビの原因になりますから。

_ 人形が壊れてしまうからと、子どもに触らせないご家庭が多いと思います。

横山専務:高価なものですから無理もありませんが、私はお子さんには積極的に人形に触らせてあげてください、と言いたいですね。触ることでもともとの意味である厄払いになりますから。最初に申し上げたのですが、ひなまつりの原型は平安時代の「ひいな遊び」からで、人形や身の回りの道具を模した玩具で遊んで厄払いをしたそうなんです。

_ なるほど!長い年月の間に、現在の「ひなまつり」へと姿を変えていったんですね。

横山専務:そうです。しかし形は変えても「気持ち」、「心」は変わりません、お子様の幸せを祈りお母さんが「あなたの大切なものだからやさしく扱ってね」と伝えて丁寧な取り扱いを教えましょう。そうやって、ひな人形の意味や物を大切にするということをお子さんたちへ伝え、日本の文化を受け継いでいってほしいですね。



取材のなかで、横山専務は「ひな人形は、親の祈りが込められたその子だけのお守り。ひなまつりは、親子の絆を、家族のコミュニケーションを強める行事。繰り返し受け継がれてきた“わが子を想う気持ち”を、次代に伝えていってほしい」とおっしゃいました。
そして、「そのためにも我々が、伝統を継承しつつ、新しい感性を柔軟な発想で取り入れていかねば」とも。
東急百貨店では〈久月〉をはじめ、名匠や人気作家による親王飾り・段飾りを多数ご用意。お嬢様のお守りにふさわしいひな人形をお探しください。

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※取材日:2020年1月10日