2020.01.31

インフルエンザ、ノロウイルス、ロタウイルスなど……。感染症流行シーズンに気をつけたいこと〈食べもの編〉

Column

空気が乾燥し、寒さで体温が下がり体の抵抗力が弱まる冬は、インフルエンザを筆頭とした感染症や、ノロウイルス、ロタウイルスといった感染性胃腸炎が流行しやすくなります。
流行時にはマスク着用や規則正しい生活を送ることを心がけるほかに、どんなことに気をつければいいのでしょうか。
今回は、罹患後の重症化が心配な赤ちゃんと妊婦・母乳育児中のママに向けて、控えた方がよい食べものや、調理で注意することなど、「食事」をテーマに予防策を探ります。

この時期、控えるべき食べものは?

特に感染性胃腸炎と食事には密接な関係があると語るのは、管理栄養士として保育園勤務経験のある、清水季代さんです。

【妊婦・母乳育児ママの場合】
「加熱が十分でない牡蠣や、あさりやシジミなどの二枚貝はノロウイルスの主な感染源です。しかしノロウイルスは感染力が非常に強く、大体は人や糞便などを介した2次感染によるものなので、貝に限らず、生野菜、お刺身、スモークサーモンなど非加熱のものは避けたほうがよいでしょう。
また、調理にたくさんの食材や器具、人を介する外食も、この時期はなるべく控えたほうが安全です。体内を冷やすと免疫力も下がり、感染しやすくなるので、冷たい食べ物、飲み物は全体的に控えましょう」
(管理栄養士 清水季代さん、以下同)

【離乳食期の赤ちゃんの場合】
「赤ちゃんの場合、消化能力や免疫力が大人よりも弱いので、冬のウイルス対策はさらに注意が必要です。お刺身や生野菜などの生ものや、半熟卵など加熱が不十分なものは避けましょう。貝類は加熱していてもNGです。
ウイルスではありませんが、はちみつはボツリヌス菌の危険があるため、1歳を超えるまで絶対にあげてはいけません」

調理で気をつけることは?

感染性胃腸炎を防ぐための調理のポイントを聞きました。

【妊婦・母乳育児ママの場合】
「食材は購入後なるべく鮮度の良いうちに調理を行うようにします。調理前はキッチン台を拭き、髪型やエプロンなど、身の回りの清潔を心掛けてください。特に手は、調理前はもちろん、生の魚や肉などを触った後も石鹸とブラシを使い、こまめに洗います。
また、生魚、生肉は使う直前に冷蔵庫から出すようにします。下味をつける際、ポリ袋を使用すると調理器具やシンクを汚さず、衛生的で後片付けも楽になります。
ノロウイルスは比較的熱に強いので、食材の中心温度85度~90度、90秒以上の加熱が必要になります。ですので、調理はそれ以上の温度と時間になるよう十分に行ってください。保存する場合は4度以下で、再加熱する際はしっかりと沸騰するまで加熱しましょう」

【離乳食期の赤ちゃんの場合】
「肉や魚、卵は使用する直前に冷蔵庫から出します。基本は妊婦・母乳育児ママの場合と同じですが、離乳食など作り置きをする場合は、調理後すぐに小分けにして粗熱を取り、必ず冷凍庫に入れること、解凍の際はお鍋かレンジで85度以上になるまでしっかり加熱をしてから冷まして与えること、日付を書いておき、1週間以内には使い切ることを守りましょう」

このほかにも、何度も拭くキッチンの手拭きタオルは常に清潔を心がけ、こまめに取り換えるか、キッチンペーパーを使用してほしいと話す清水さん。まな板、包丁は肉魚用と野菜用の2種類を用意し、使い分けることも予防策になるといいます。
「さらに離乳食用のまな板、包丁、洗浄用のスポンジは大人用とは分けて使用することをおすすめします。離乳食を作る前はキッチンを一度きれいに拭き、流しなどもきれいな状態にしてから始めてください。
貝や生ものを調理したシンク内、調理器具、布巾やスポンジは使い終わった後すぐに洗浄・消毒を。ノロウイルスは熱湯や塩素による消毒が有効です。アルコールは効きませんが、最近はノロウイルス対策として有効な酸性アルコール消毒液も出ているので、冬は上手に活用するとよいでしょう」

感染症予防におすすめのメニューは「鍋」!

「さまざまな食材をバランスよく取り入れられる、栄養たっぷりの鍋物がおすすめです。免疫力をあげるのはβカロテンやビタミンC。ネギや春菊、にんじん、白菜などに多く含まれています。インフルエンザの抑制効果が期待されているビタミンDは、キノコ類や鮭に。鶏肉や魚介類、豆腐などの良質なたんぱく質も体を温め、免疫力をアップします。
また、鍋物は離乳食にとり分けしやすいメニューでもあります。5〜6カ月ごろの赤ちゃんには、鶏以外の肉や白身魚以外の魚介類のだし汁は与えないようにしましょう。エビやタコ、貝などの魚介類も、9〜11カ月ごろでもNGです。これらのものを入れる前に、赤ちゃんの分の素材をとり分けるようにしてください。
ひとつの栄養素にこだわるのではなく、バランスを考えた食生活こそが、インフルなどの感染症予防に役立つと考えてくださいね」

体調で不良で食べられないときは?

「ショウガをお湯で加熱し、てんさい糖などで甘みを加えた「生姜湯」をどうぞ。加熱したショウガには殺菌効果や胃腸の調子を整える働きや、体を温める効果があります。
赤ちゃんの場合は、離乳食の段階を1~2段階戻して、食べやすい状態にしてあげましょう。おもゆやかぼちゃのスープなど、甘めのものにしてあげると赤ちゃんも食べやすく消化にもよいです。
体調が回復してきたらお豆腐などから少しずつたんぱく質も増やしていきます。下痢が続いてる場合は脱水症状になりやすいので、食事はできなくても水分をこまめに摂るようにしてください」



この時期になると、小さなお子さんのいるご家庭で「ノロウイルスが家族全員にまわって大変だった!」という話も耳にします。
食事や調理で予防できることはたくさんあります。今日から実践して、感染症シーズンを元気に乗り切りましょう!


教えてくれた人 清水季代さん/管理栄養士、フードコーディネーター、フードスペシャリスト。1児の母。子どもの食育コンサルタント「せたがやはらぺこだん」代表。保育園勤務経験後、独立。体にやさしいレシピ開発、季節の料理教室、お子様のいる家族の出張作り置きなどの活動を行っている。