2020.09.04

イマドキ七五三事情。お参りはいつ頃がベスト? 人気の衣裳は? 前撮りはいつする?

Column

子どもの健やかな成長をお祝いする七五三。
11月の神社は、晴れ着に身を包み、千歳飴を持ったお子さんたちの姿で賑わいます。
女の子は3歳と7歳に、男の子は3歳と5歳にお祝いする行事として周知されていますが、近年は、お祝いの仕方もご家庭によって多種多様のようです。
とはいえ、せっかくの大切な行事。子どもに負担なく、家族みんなの思い出に残る七五三にしたいですよね。
そこで、東京・世田谷区三軒茶屋にある子ども写真館「en-studio(エンスタジオ)」のオーナー・本房哲治さんに、七五三のお参りや前撮りのベストシーズン、人気の衣裳などについて教えてもらいました。
文末の先輩ママの七五三エピソードもぜひご一読ください!

七五三の起源は!? 〜わが子を思う親心が形になった行事〜

七五三の由来は諸説ありますが、平安時代に貴族の間で行われていた3つの儀式(3歳「髪置きの儀」・5歳「袴着の儀」・7歳「帯解(おびとき)の儀」がもとになっていると言われています。
江戸時代になると武家や商人の間に広まり、庶民にも広まったのは、明治時代。三歳・五歳・七歳の三つの祝い事をまとめて「七五三」と呼ぶようになりました。現在のようなお祝いの形になったのは、大正時代以降だと言われています。
なお、11月15日に祝うようになったのは、収穫祭を由来とする説、五代将軍・徳川綱吉の息子の袴着の儀式が11月15日であり、それが踏襲されたとする説など、さまざまあるようです。
昔は子どもの死亡率が高く、「7歳までは神のうち」という悲しい言葉がありました。7歳までは、常に死と隣り合わせであり、いつ神様のもとに帰ってしまうかわからないほど、はかない存在だったのです。
だからこそ、わが子が7歳まで無事に育ってくれた喜びは、計り知れないものだったことでしょう。いにしえから受け継がれている七五三は、いつの時代も子を思う親の気持ちが込められた、神聖な行事なのです。

どんなふうにお祝いする?

「参拝はせずに写真撮影のみ」「10月までに前撮りし、11月に参拝と食事をセットで行う」など、近年は各家庭のスタイルで七五三をお祝いするのが一般的になりました。

「自分たちに合ったスタイルで七五三をするご家庭が増えていますが、やはりお子さんの成長をお祝いする節目の行事なので、七五三は写真館でしっかりと撮影されるご家族が多いです。
撮影は、10月〜12月にされる方が多いですね。メインは11月15日前後の土日で、当スタジオでも、8月中旬から11月の予約開始後、その日程から埋まっていきます」(en-studio 本房さん、以下同)

___撮影、お参り、会食を同日に行うご家庭が多いのでしょうか。

「最近は、お参りは11月15日前後に行い、撮影は10月もしくは12月に別で行うというご家族も増えています。お子さんにとって、『撮影、お参り、会食』と3つを1日に盛り込むのは負担になります。疲れてしまい、撮影のハードルも上がってしまうので、当スタジオでは、撮影を別日にすることをお勧めしています。
どうしても1日で行いたい場合は、一番最初に撮影を行うスケジュールを組まれるといいと思います」

人気の七五三衣裳は?

写真提供/en-studio

男の子は、定番の黒や紺色が人気だそうです。

「黒地や紺地に龍やかぶと などの古典柄といった、オーソドックスなものを選ばれる方が多いですね。重厚感のある黒地に伝統的な和の古典柄が好相性で、写真映えします。落ち着いた印象の紺地は、高貴な印象を与えます。
女の子は、3歳だと赤やピンクなどかわいらしい色味が人気です。7歳の場合は、暖色系のみならず、寒色、白や黒など色のバリエーションが広がり、個性的な色を選ばれる方も増えます。
当スタジオでお貸ししている着物は大半が正絹のアンティーク着物なのですが、正絹特有の上品な光沢と高級感を気に入られて、正絹を選ばれる方が多いです。和髪に結って、昔ながらのビラかんざしを飾るスタイルが人気です」

___最近は、化学繊維の晴れ着も普及しているそうで、新しい着こなしも見られるようになったのだとか。

「レーヨンやポリエステル素材で、男の子だと色は紺やこげ茶、無地の現代風の晴れ着も見かけるようになりました。昔のモダンな人が着ていたかもね…というようなデザインで、大人っぽい印象です。
また、襦袢の代わりにデニムシャツを着るというスタイルを提案しているスタジオもあり、今後新しいものを取り入れたいと思う方の間で広まっていくかもしれません。女の子は、今のところ昔ながらの伝統的な晴れ着を選ばれる方が多いですね」

早生まれのお子さんは、いつ七五三をする?

写真提供/en-studio

数え年と満年齢、どちらでも七五三のお祝いをしてもOKですが、最近では満年齢でお祝いするのが主流。しかし、早生まれのお子さんの場合は、同級生と一緒にお祝いをするために数え年を選ぶお子さんも多いのだとか。

「撮影する立場からお話しさせていただくと、満年齢でお祝いされることをお勧めしています。
特に3歳のお祝いを数え年で行う場合、満2歳で七五三のお祝いをすることになります。2歳といえば、イヤイヤ期真っ盛り。着物を嫌がったり、泣きじゃくって袖を通すことのできないお子さんもいらっしゃいます。このため、できるだけ3歳になってからにしましょうとご提案させていただいています」

記念撮影、どんな写真を残す?

写真提供/en-studio

___お参りや食事会はしなくても、写真だけは残すというご家庭も増えている中、どのように記念写真を撮るご家庭が多いのでしょうか。

「数年前から、神社出張撮影とスタジオ撮影のセットプランを設定しているスタジオも増えましたね。当スタジオでも神社出張撮影を希望されるお客様はいらっしゃいますが、スタジオのみで撮影されるご家庭が圧倒的に多いです。
撮り方は、ひとりで撮る、きょうだいと一緒に子どもだけで撮る、家族で撮るというのがスタンダードですが、ママとお子さん、パパとお子さんという組み合わせで撮影するのもおすすめです。
ママとふたりで顔を合わせていると、お子さんもリラックスして、いい笑顔が出るんです。当スタジオでは、たとえばお子さんがくしゃみをしてみんなで大笑いしているなど、ご家族の自然な瞬間を切り取るようにしています。
将来、お子さんが成人を迎え家族で七五三の写真を見返したとき。真顔の集合写真より、自然な写真の方が断然ご家族の笑い声が聞こえる素敵な時間が流れると思っています」

___以前は、いわゆる街の写真館で撮影されるご家族も多くいましたが、イマドキの写真スタジオとどう違うのでしょう。

「昔からあるような街の写真館は、1枚いくらという形での販売だったため、表情やポーズのバリエーションは選べませんでした。
今はデータ販売がメインになっているので、カメラ目線でビシッと撮影した写真だけでなく、目線をはずして自然に笑っている写真も欲しい!というお客さまが多いですね。
シチュエーションだと、昔ながらの写真館で撮影するような、バックペーパーを背景にして撮影したいというリクエストも増えつつあります」

先輩ママ発! 七五三 〜わが家の場合〜

ここでは、先輩ママの、七五三エピソードをご紹介します。失敗談から成功談まで、お子さんの七五三の参考にしてくださいね。

「長女が3歳のとき、来月は七五三だからそろそろ準備を始めなきゃ…と、気になっていた写真スタジオに予約の電話を入れたのが10月。11月15日前後の土日はおろか、11月の土日祝日はすべて埋まっていました。
やむを得ず、私も夫も有休を取って、空きのある平日に撮影することにしたのですが、今度は晴れ着のレンタルで問題が! いいなと思う色柄のものはすべて予約済みで残っていなかったのです。
何社も探して、やっと好みのものを借りることができました。後で聞いたら、みんな8月頃からスタジオを押さえるなど準備を始めるのが一般的なのだとか。完全に出遅れました」
(A.Hさん/6歳と小学4年生の女の子のママ)

「長男の七五三。初めての七五三ということもあり、かなり前からはりきってお参りに行く神社を決め、写真館と両家の両親を呼んで食事会をするレストランを予約しました。
ところが当日は雨天。それでも写真館とレストランは予約してしまっているからと、決行することに。よくなかったのが、自宅から電車を乗り継いで行く、有名だけどだいぶ遠い神社を選んでしまったこと。
息子は洋装だったのですが、履き慣れないローファーで、靴ずれに。さらに雨が染み込み、靴下はびしょ濡れ。泣く息子(5歳、縦にも横にも平均よりだいぶ大きい)を夫がおんぶし、どうにか神社までたどり着いて参拝を済ませたものの、撮った写真は息子の不機嫌そうな写真のオンパレードでした。神社は近場に限ります(涙)!」
(C.Kさん/3歳の女の子と7歳の男の子のママ)

「11月中旬から下旬は神社も写真館も混むので、わが家はあえてピークをはずした12月に七五三をすることにしました。これが大成功! 
まず、ハイシーズンは過ぎているため、衣裳をたくさんの晴れ着の中から選ぶことができました。また、4月〜10月の前撮り時期はイヤイヤ期真っ盛りだった娘でしたが、12月にはだいぶ落ち着き、スムーズに撮影できました。
わが家の場合は結果的に良かった!という感じでラッキーでしたが、数カ月の間で成長がめまぐるしい3歳のお子さんには、後撮りを強くお勧めします!」
(H.Kさん/4歳の男の子と6歳の女の子のママ)

「娘が7歳のときの七五三は、夫の両親とお参り・写真撮影をしたほかに、九州の実家に帰省し、私の両親ともお祝いしました。
母、私、娘と、親子三代同じ着物で、私が子どもの頃お参りした氏神様へ。そして一番の目的である、90歳になるおばあちゃん(娘にとってはひいおばあちゃん)に、娘の晴れ姿を見せに行きました。
おばあちゃんの嬉しそうな顔は、今でも忘れられません。翌年亡くなるまで、おばあちゃんはひ孫の七五三の話をよくしていたと母から聞きました。娘も晴れ着を2回着られたうえに、たくさんの人にお祝いしてもらって、忘れられない思い出になったようです」
(Y.Yさん/小学3年生の女の子のママ)



古くからある日本の伝統行事、七五三。どのようなスタイルでお祝いするかはご家族によってさまざまですが、わが子の健やかな成長を喜び、感謝する気持ちを家族みんなで共有できたら素敵ですよね。
ママやパパにとっても、そして何よりお子さんにとって、笑顔の記憶として心に刻まれる七五三となりますように!


教えてくれた人 フォトグラファー、en-studioオーナー/本房哲治さん
雑誌や広告にて幅広く活躍。わが子の誕生をきっかけに子どもを撮影する楽しさを実感。2013年、東京・世田谷区三軒茶屋に子ども写真館「en-studio(エンスタジオ)」をオープン。子どもたちのあふれる笑顔とご家族のかけがえのない一瞬を切り取る写真が好評を博している。
 en-studio公式HP