2021.04.23

知っておきたいマタニティハラスメントのこと

Column

「マタニティ・ハラスメント」略して「マタハラ」という言葉を聞くようになって久しいですが、具体的にマタハラとは、どのような扱いを受けたことを指すのでしょうか。
また、もしもマタハラを受けたら、どうしたらよいのでしょうか。マタハラの基礎知識とともに、事例や対応などを探ります。

マタハラとは?

マタハラとは、職場において、働く女性が妊娠・出産・育児を理由に解雇や雇い止め、降格など人事で不利益な扱いを受けるなど、精神的・肉体的な嫌がらせを受けることをいいます。マタハラには大きく分けて、「制度等利用への嫌がらせ型」と「状態への嫌がらせ型」があります。

●「制度等利用への嫌がらせ型
出産・育児に関連する社内制度の利用に際し、利用をあきらめざるを得ないような言動で制度等の利用の請求や制度利用を阻害する行為をいう。
[具体例]
「上司に育休の取得の相談をしたところ、“ウチは育休を取ってもらう余裕などない”と言われた」
「子どもの発熱で子の看護休暇を数回利用したら、同僚から“専業主婦になった方がいいんじゃない?“と言われた」

●「状態への嫌がらせ型
出産・育児により就労状況が変化したことなどに対し、嫌がらせをする行為をいう。
[具体例]
「同僚から“こんな忙しい時期に妊娠されて困る”と言われた」
「つわりがひどく休んだら“妊婦はいつ休むかわからないから、本当に迷惑”と上司に言われた」

マタハラ防止措置は法律で義務化されている

男女雇用機会均等法および育児・介護休業法の改正により、2017年1月から、企業に対してマタハラ防止のための措置と、雇用管理上の措置を講じることを義務づけています。
具体的には、マタハラがあってはならないことと育児休業等の制度の利用ができることを明確化し、社員に周知・啓発することや、相談窓口の設置など、当事者からの相談や苦情に適切に対応できる体制を整えることです。
当事者に精神的な苦痛を強いる心ないマタハラを根絶するためには、組織全体でマタハラが陰湿ないじめ行為であることを理解し、マタハラを認めない姿勢を持つことが重要です。

マタハラの悪影響

「実際に職を失っては困る」「職場の人間関係を悪くしたくない」などの理由から、マタハラを受けても歯を食いしばって耐えている人は少なくないでしょう。
しかし、マタハラを受けることで、下記のような悪影響が懸念されます。

● 妊娠期の心と体への影響
● おなかの赤ちゃんへの影響(早産や流産の危険性)
● 仕事へのモチベーションの低下
● 育児への影響(育児ストレスの増大)

もしもマタハラを受けたら

もしマタハラを受けた場合は、まず、夫や家族に相談しましょう。信頼できる同僚や上司がいたら、話をするといいでしょう。ひとりで抱え込まないことが大切です。
それでも解決に向かわない場合は、社内の窓口や人事部に相談しましょう。
なお、相談する際には、マタハラを行った相手やマタハラの内容、日時や回数などを正確に伝えるために、メモを残しておくといいでしょう。
社内に相談できる窓口がない、会社が対応してくれない場合は、外部の相談窓口に連絡してみましょう。
日本労働弁護団の「女性のためのホットライン 」はマタハラを含む女性特有の問題を扱う女性専用の無料電話相談です。女性の弁護士が対応し、相談内容に関する秘密はもちろん厳守してくれますので、ひとりで悩まず相談してみてください。
また、職場でマタハラなどについて民事上のトラブルが生じた場合、都道府県労働局雇用均等室でも、解決の援助を行っています。



小さな命を育む大切な時期に受けるストレスの悪影響は甚大です。
愛するわが子のためにも、そしてママ自身の心と健康のためにも、ひとりで抱え込んだり我慢したりせず、まずは身近な人に相談してみてくださいね。