2022.06.10

知っておきたい中学受験のこと vol.5 中学受験、親はどんなサポートが必要? 共働き家庭でもできる?

Column

中学受験を選択するうえで気になるのが、どれくらい親のサポートが必要かということ。経済面、健康面、勉強面、そして心のケアにいたるまで、親のサポートなくして進めることは難しいに違いないけれど、具体的にどのようなサポートが必要なのでしょうか。また、共働き家庭であっても可能なサポート内容なのでしょうか。中学受験に悩むママたちに向けたサポートを行う、中学受験アドバイザーの西 和美さんにお聞きするとともに、中学受験を経験した、共働き家庭のママたちの声をお届けします。

中学受験において保護者が担うべき役割

わが子が中学受験をする際に保護者がするサポートを5つ、西さんにお聞きしました。

1.健康管理
長い受験生活を乗り切るためには、健康であることが基本です。入試本番の頃は、例年、さまざまな感染症が流行しやすい時期。また、コロナの感染状況は落ち着いているものの、先は読めません。このため、西さんはまず、健康管理の大切さをお話しされていました。
「健康管理で最も大切なのが、睡眠時間の確保です。高学年になり、勉強量が多くなってくると、睡眠時間を削ってまで勉強しようと無理をしがちに。睡眠不足は体調不良にも繋がります。様子を見て『今日は終わりにして、明日にしよう』と声かけして睡眠時間を確保しましょう。また、感染症対策としては、親子で人混みを避ける、手洗いうがいを徹底する、栄養バランスのよい食事で体力をつけるなど、可能な対策はすべて行うようにしましょう」

2.スケジュール管理
中学受験の勉強が始まると、学校、塾、家庭学習と忙しくなるため、効率よく学習を進められるよう、スケジュール管理が必須になります。とはいえ、小学生はまだ遊びたい時期。上手なスケジュール管理のポイントは?
「塾、習い事、学校の宿題、友人との遊び時間の管理。受験勉強のストレスでドロップアウトしないようにバランスよく、そしてお子さんと相談しながらスケジュールを立てていくことが大事です。徐々に自分でスケジュールを立てられるようにすることは後々の人生に大きく役立ちますので、保護者がすべて決めて行うのではなく、ぜひお子さんと一緒に取り組みましょう。あまりタイトにせず、柔軟性を持つことが長続きするコツです」

3.心のケア
受験本番までの間、保護者の存在はお子さんにとって大きな支えとなります。どんな心のサポートが必要なのでしょうか。
「受験勉強は新しい学習ができる喜びや良い成績がとれたという喜びだけではなく、成績が伸び悩んだり、テストが思うようにできなかったりと、苦しむ時期もあります。そんな時は、お子さんに寄り添い、相談相手になりましょう。時には勉強から離れ、一緒に自然豊かな場所へ出かけゆっくり過ごす、好きなスポーツ観戦に出かける、など息抜きすることも大切です」

4.学習サポート
受験勉強のカリキュラムは塾にお任せしていても、家庭でもサポートできることがあると西さんは言います。「計算問題を丸つけしたり、漢字はトメ、ハネなど細かいところを見てあげましょう。受験勉強を一緒に楽しむようにサポートしてあげると、お子さんのやる気もアップするでしょう。また、 配布されるプリントや資料をまとめ、整理してあげるのもいいですね。整理しながらプリントの中に大事な書類、講習の申込書が紛れていないか、チェックすることもできます」

5.志望校、受験校の情報収集
大人と小学生では情報収集力に差があるため、志望校や受験校の情報収集も保護者がしてあげるといいでしょう。
「志望校の説明会の日程や見学の申込など、塾からの配布物やホームページで細かくチェックして、お子さんが知りたい情報を調べてあげましょう。学校の情報を調べることで、個性を大切にしてくれる、ご家庭の教育方針に合っている、など学校の特徴を知ることができます」


共働きママの声 | 中学受験のサポート、わが家の場合

共働き家庭のママたちは、どのように中学受験のサポートをしたのでしょうか。

夫と二人体制でサポート
「最初はすべてこなそうと張り切っていましたが、塾弁が始まってから早々にノックアウト。勉強時間や模試などのスケジュール管理と塾弁作りは私、塾の送迎や模試の付き添いは夫、と役割分担して、サポート体制ができあがりました。夫はコロナ禍でテレワークが多かったので協力してもらえましたが、そうでなかったら……と思うと、ちょっとゾッとします」(S.Rさん / 中1の女の子のママ)

ママ友に助けられた
「夫婦ともに土日出勤のある仕事に就いています。このため、土日の塾や模試の送迎は、同じ塾に通う幼なじみの友だちのママにお世話になりました。情報通のママで、受験する学校の情報をいろいろと教えてくれたこともとてもありがたかったです」(R.Yさん / 中2の男の子のママ)

健康管理と心のケアに力を入れた
「勉強のことはわからないので、塾におまかせし、健康管理と心のケアだけはしっかりやりました。朝食をパン食から和食にして栄養バランスの良い食生活にシフト。ポジティブな言葉掛けをするようにして、心穏やかに過ごせるよう心がけました。その結果、家族みんなの体調や関係性も向上しました」(Y.Sさん / 中3の女の子のママ)

中学受験、保護者の要注意行動とは?

中学受験をする子どもを支えるうえで、保護者がとってはいけない行動を西さんに聞きました。

1.結果が出ないことに対する叱責
「模試、復習テスト、実力テストなど、思うような結果が出ない、なかなか成績が上がらない時、一番落ち込んでいるのはお子さん自身です。もどかしさから『勉強しないから』『ゲームばかりしているから』『努力が足りないのでは?』とつい口にしてしまいそうですが、親御さんが一方的に決めて責めることはやめましょう。『原因は何だろう?』とお子さんに寄り添い、一緒に考えてあげると、『次はもっと〇〇してみる』など自分で解決策を考えられるようになってきます」

2.ほかの子どもと比較する
「お友だちが優秀で『〇〇ちゃんは、今回も〇位で素晴らしい』『〇〇君は、超難関中学受験するから、あなたも受験しよう』などと言われたら、気持ちがいいものではありません。お子さんに劣等感を与えてしまいます。周りが気になる気持ちは、私も息子たちの受験で経験したことなので、とてもよくわかります。しかし比較は禁物です。周りがどうしても気になるときは、中学受験の目的は、親の自慢のためやブランドを持つためではなく、お子さん自身の将来のための勉強や経験であることや、保護者は大きな挑戦を支える立場であることを思い出しましょう」

3.関わりすぎる
「何事にも関わり過ぎてしまうことで、お子さんが窮屈に感じ、伸び悩むことがあります。スケジュール管理ややることリスト作りをお子さんと相談せずに親御さんが勝手に決めてしまったり、カリキュラムを熟知して『これはまだやってないの?』と口を出すことは、子どもの意欲を失わせることになります。親の指示で行動することは、自分で考えなくてよいため、楽なように感じますが、長く続くと自主性のない子に育ってしまいます。勉強は中学受験で終わりではなく、大学受験もありますし、その後も一生続けていくものです。見守り、寄り添い、困っているようであれば、手を差し伸べ、一緒に考える。そんな、程よい距離感を保つ努力をしましょう」


共働き家庭が中学受験をサポートするコツ

共働き家庭の場合、中学受験をする子どもをサポートするために注意したいこと、うまくサポートするためのコツとは?

1.協力者を見つけよう
「近所にご両親や親戚がいる場合は、塾の送迎、お弁当作りなど、協力をお願いしましょう。我が家の場合は、息子たちの同級生が数人同じ塾に通っていたため、ご近所同士の3家族で、お迎えの車を交代で出していました。協力者を見つけることは、心身ともに負担の軽減ができるので、とても助かります。また、学校説明会、学校見学は、可能な限り参加したいもの。ご夫婦で情報共有し、多くの学校を見学できるように分担することも大切です」

2.塾弁は完璧じゃなくてもいい
「塾のお弁当は、出勤前に作って冷蔵庫に入れ、塾に行く前にお子さんがセットして出かけられるようにご家庭で何度か練習しましょう。コンビニのおにぎり、サンドイッチをお子さんが通塾途中で購入したり、お弁当を注文できる塾もあるそうなので、活用するとよいでしょう。保護者の都合を一番に考えた塾選びはお勧めしませんが、コンビニでの購入に抵抗があり、お迎えの負担が大きいと感じる方は、近年はオンラインで自宅で受講できる塾もあります」

3.入試時期は夫婦で有休を取得する
「試験本番から入学手続きまで、1校につき3〜5日ほど付き添いがあります。短い期間に、入試の付き添い、面接、合格発表、入学手続きが続くので、ご夫婦で協力し合って進めなくてはなりません。有休は早めに職場に申請しましょう」



共働き家庭であっても、中学受験するお子さんをしっかりとサポートすることができます。西さんから最後にもう一つ、大切なメッセージをいただきました。「お仕事と家事とで忙しくしていると、受験勉強で疲弊してきたお子さんの変化に気づくことが遅くなったり、お子さん自身も保護者に気を使って、気持ちを言えずにいることがあります。1日5分〜10分でもいいので、手を握って話を聞き、親子のコミュニケーションを積極的にとりましょう」。保護者の寄り添いが、お子さんにとって、最も大切なサポートになると言えそうです。


教えてくれた人

西和美さん

中学受験アドバイザー

双子の母。長男次男とも中学受験をし、別々の私立中高一貫校へ進学。その後、大学受験で国立大学へ(東京大学 / 東京医科歯科大学)。受験は親子関係が大切であり、ママの負担も大きい。自身の経験から中学受験のサポートに悩むママたちの心に寄り添ったサービスを提供している。
サポート詳細や受験期ママへのヒントはブログにて

知っておきたい中学受験のこと