2022.09.16

知っておきたい中学受験のこと vol.8 中学受験の志望校、いつ決める? どう選ぶ?

Column

これまで、共働き家庭の親のサポートや費用など、中学受験をする上で気になる問題を取り上げてきましたが、今回は成績の伸び悩みやお子さんのやる気をはじめとした、中学受験がうまくいっていないときの乗り越え方です。中学受験アドバイザーの西 和美さんにお聞きするとともに、先輩ママたちの声もご紹介します。

志望校はいつ決めるべき?

中学受験の志望校選び、多くのご家庭ではお子さんが小4か小5の頃に決定しているようです。実際のところ、いつ頃決めるのが理想なのでしょうか。
「受験すると決めたら、早々に志望校を選ぶとよいでしょう。受験本番となったとき、いざ受験校を決める際にも、多くの学校を十分調べる時間があった方が比較検討しやすいです。また、お子さんにとっても、目標があるほうが勉強のやる気がアップします。尚、志望校選びの最初のステップは、10校程度候補を上げることです。子どもと大人とでは情報収集力に差があるので、保護者が主体となって、リストアップしましょう。お子さんに合いそうと感じる学校を選び、その中でお子さんが興味を持つような学校から見学に行くというのが次のステップです」

志望校選びで重要なポイント

1日、2日やる気のムラがあるくらいならまだしも、それが数日続いてしまったら心配です。保護者として、できることは何でしょう。

志望校は1つに絞らない

「小4、5年生の時点で実力より偏差値が高いA群(第一志望校群)、実力相応校のB群(第二志望校群)、実力より少し下のC群(滑り止め校群)に分けて選びましょう。その中でも、『偏差値〇〇以上の学校を目指す』『通学が1時間以内の学校を選ぶ』『好きな部活がない学校は受けない』など、ご家庭で話し合い、選定基準を決めておきましょう。
また、受験を決めた時は、とにかく御三家へと考える方は少なくないでしょう。確かに超難関校は難関大学合格実績も抜きん出ていて偏差値だけではない素晴らしい教育やカリキュラムがあると思います。しかし、御三家のみを目指すことは受験ではリスクが高く、お子さんにかかるプレッシャーが大き過ぎることがあります。最近の私立中学は、親世代の頃とは大きく様変わりしています。偏差値があまり高くなくても、手厚い指導で難関大学の合格実績を伸ばしている学校も多々あります。もし小6の時点で、学力が足りなくても慌てたり、肩を落としたりしないように、幅広く、お子さんが楽しく学生生活を送れそうな学校をピックアップしておきましょう。志望校の長所と短所を書き出してリスト化しておくと、受験時に役立ちます」

ほかに大事なポイントは?

「お子さんが中学入学後、何か興味を持っていること、打ち込みたいことがある場合は、学校にその部活動があるかどうかや、活動状況を調べておきましょう。我が家の息子たちは幼い頃からサッカーを続けていたので、サッカー部の有無と活動状況は必ず調べていました。また、自宅から学校までの距離。毎日通うことを考えると通学時間は1時間以内がベストです。もし災害が起きた時に交通手段が停止しても、歩いて帰れる距離が理想です。希望する大学の指定校推薦枠の有無を確認することも大切です」

志望校選びQ&A

続いて、志望校選びのよくある質問について、西さんにお聞きしました。

Q. 志望校選びでは、子どもの意見はどれくらい反映すべきでしょうか。

「実際に学校見学に行ってお子さんが行きたいと感じた学校についてはお子さんの意見を尊重し、志望校の中に入れましょう。また、お子さんがあまり好きではないという学校でも、保護者がとても気に入っている場合は、前述のA群ではなく、B群、C群に入れておきましょう。小学生のお子さんは、第一志望合格に向かって一心不乱に努力しているので、第二志望、滑り止め校は頭に入っていないことが多いです。一方で、受験は何が起こるかわからないもの。この部分をフォローするつもりで、保護者が別の視点で志望校をチェックしておくことが大切です」

Q. 偏差値で受験校を選んでもよいものでしょうか。

「偏差値だけで選んでは、本当にお子さんに合っている学校なのかわからないまま受験することになります。多くの保護者が志望校選びのポイントとしている「校風」も重要視しながら、保護者が学校選びすることが大切です。ホームページや学校案内に掲載されている教育方針や校訓をチェックし、お子さんの個性に合った学校かどうか、しっかり確認していただきたいと思います」

Q. 志望校選びのNG例を教えてください。

「偏差値だけで選ぶことがNGなのは前述の通りですが、同じ理由で、知名度だけで選ぶのもよくありません。また、インターネットの情報や評判だけ見て実際に学校見学や説明会に行かないのもNG。最も避けたいのが、親の先入観で決めてしまうこと。昔は偏差値が低かった、素行の悪い生徒が多かった学校という記憶でよくない学校だと決めつけるのはやめましょう。今は随分様変わりをし、進学率を上げたり、グローバル化に特化したりして、人気校になっている場合もあります」

Q. 近年の人気校の傾向を教えてください。

「国内の大学合格実績だけではなく海外の大学も合格者を輩出している学校に注目が集まっています。また、入学時の偏差値は平均的でも、手厚い指導で多くの大学合格者数を出していたり、放課後、東大生をアルバイトで自習室などに置き、わからない問題や学習の進め方など気軽に相談できるようにしている学校もあるようです。また、図書館と自主学習、PC、グループ学習などに活用するアメリカが起源のラーニングコモンズの設置をしている学校も人気です」

先輩ママ発! わが家の志望校の決め方

小5から学校説明会に参加

「時間にゆとりのある小5の夏休みから秋にかけて、気になる中学校の学校説明会に親子で参加。帰り際に親子で学校の印象や感想を話し合いながら、心から行きたいと思える学校を絞っていきました。第一志望以外の学校にも思い入れが強まり、受験時には、親子ともに『どの受験校へも行ってみたい』と思うまでに。滑り止めという概念がなくなり、気持ちよく受験に臨めました」(K.Tさん/中3の男の子のママ)

学校説明会以外に在校生の雰囲気をチェック

「『楽しい学校生活を送れるところがいい』というのが、親子共通のポイントでした。このため、偏差値以外に学校説明会以外にも部活動見学や文化祭などの行事も見て、在校生の様子をチェック。生徒さんが生き生きと楽しそうに学校生活を送っている学校に決めました。その結果、娘は中高と青春を謳歌しています」(R.Nさん/高1の女の子のママ)

部活で決めた

「小6の夏まで頑張っていた剣道を中学でも続けたいと思っていたため、剣道部があり、指導に力を入れている学校を選びました。受験で一時は中断した大好きな剣道を中学で再開できるという思いが、勉強のモチベーションにもなりました」(R.Yさん/中2の男の子のママ)




中学受験を志すご家庭の多くが、お子さんの中学受験の理由として、質の高い教育や子どもの個性に合った教育を受けさせたいからという思いをお持ちです。そのために大切なのが、偏差値にとらわれない志望校選びです。もちろん、偏差値は指標にはなりますが、決定的な理由にはならないということを念頭に置きながら、お子さんにとって最も適した学校を選べるといいですね。

教えてくれた人

西和美さん

中学受験アドバイザー

双子の母。長男次男とも中学受験をし、別々の私立中高一貫校へ進学。その後、大学受験で国立大学へ(東京大学 / 東京医科歯科大学)。受験は親子関係が大切であり、ママの負担も大きい。自身の経験から中学受験のサポートに悩むママたちの心に寄り添ったサービスを提供している。
サポート詳細や受験期ママへのヒントはブログにて

知っておきたい中学受験のこと