2022.12.05

「クリスマス絵本、どれにする?」

Column

 5冊だけの本屋という女性向け選書サービスを行っておりますミホコです。

 「寝る前に読んでもらう絵本のストーリーの終わりがあたたかいものだったら、子どもたちは一日をとっても幸福に感じるでしょう。そして心地よい眠りにつけるはずです」

 これはミッフィーの生みの親でもあるディック・ブルーナさんの言葉です。毎日、大人も子どももいろいろあります。どんな一日でも、夜眠る前に心温まる絵本をゆっくりゆっくりと読んでいると、一日の緊張の糸がほどけて自然とリラックスしてきます。彼の言葉にあるように、それが幸福や心地よい眠りに繋がるのだと思います。この連載では、眠りにつく前にぴったりな心温まる絵本とそれにつながる5冊をご紹介します。

長く愛され続けているクリスマス絵本

 この時期、絵本売り場はクリスマス絵本で大賑わい。どれも華やかで、ワクワクする絵本ばかりで迷ってしまいますよね。そこで、今回は数あるクリスマス絵本の中から、長年愛され続けているクリスマス絵本を選びました。クリスマスまでの間、お子さまと一緒に楽しむ絵本。お子さまや友人へのクリスマスプレゼントとして贈りたくなるような絵本など、何度でも手に取りたくなるような絵本です。


 『クリスマスの まえのよる』は、最も有名なクリスマス絵本かもしれません。著者であるクレメント・C・ムーアが病気の娘のためにつくった詩で、現在のサンタクロースのイメージの原点とも言われています。この詩は、絵本やしかけ絵本など様々な絵本となって多くの出版社から出版されています。その中でも、このしかけ絵本は美しい切り絵と幻想的な仕掛けがとてもきれいです。圧巻のラストはそのまま広げてクリスマスインテリアとして飾っても、イルミネーションの光を浴びてとても美しい影絵を生み出してくれます。長く大切にしたいクリスマス絵本の一冊です。


『クリスマスの まえのよる』 詩 クレメント・C・ムーア 絵 二ルート・プタピパット 大日本絵画


 クリスマス絵本において、サンタクロースが主人公の物語は欠かせないですよね。『さむがりやのサンタ』は、さむがりやのサンタの12月24日の一日を描いています。寒い寒いと言いながら起きてベーコンエッグを食べおいしい紅茶を入れ、悪天に文句を言いながらもサンタクロースの仕事をこなし、仕事のあとはビールとクリスマスのごちそう。その、皮肉屋なのにどこか憎めないサンタクロースの姿に親近感がわいてきます。海外コミックのような構成とたっぷりのユーモアで、思わず笑ってしまうような愛らしいサンタクロースの物語です。


『さむがりやのサンタ』 レイモンド・ブリッグズ 作・絵 すがはら ひろくに 訳 福音館書店


 お子さまに一度は「クリスマスってなに?」と聞かれた方もいるのではないでしょうか。『愛蔵版 クリスマスって なあに』は、イエス・キリストの誕生の物語を通してクリスマスの本当の意味をシンプルにやさしく教えてくれます。親子で一緒にクリスマスの本当の意味を理解して、クリスマスを迎えるのもいいかもしれません。真っ白なカバーにゴールドの輝く文字がまさにクリスマス絵本。絵本が汚れることなど気にせず、思い切って真っ白な絵本を楽しむのも、クリスマスだけの贅沢かもしれません。


『愛蔵版 クリスマスって なあに』 ディック・ブルーナ 作 舟崎 靖子 訳 講談社
Illustrations Dick Bruna © copyright Mercis bv,1953-2022 www.miffy.com


絵本とつながるおとなのための2冊

 ただでさえ仕事に家事に忙しいのに、クリスマスや年末年始などイベントも盛りだくさん。師走、読書なんてする暇がないという方も多いと思います。そんな忙しいママのために、ちょっとした時間などに楽しめるクリスマスの短編集と詩集を選びました。忙しい毎日に、ささやかなご褒美読書で自分だけのクリスマスをしみじみと味わってみませんか。


 『X’mas Stories 一年でいちばん奇跡が起こる日』は、名だたる有名作家たちによるクリスマスアンソロジー。自分の誕生を意識しすぎる女性、プレゼントをもらうことができない子供たちのためにシステム化されたサンタクロースの仕事、江戸時代から現代の東京のクリスマスイブにタイムスリップしてきた武士。恋愛物語からミステリー、そしてコメディまで個性豊かなクリスマスイブの物語です。好きな作家の物語から読んだり、パラパラとめくり気分に合ったところから自由に読んだり、忙しい合間のちょっとした息抜きや気分転換にぴったりです。


『X’mas Stories 一年でいちばん奇跡が起きる日』 朝井リョウ、あさのあつこ、伊坂幸太郎、恩田陸、白川三兎、三浦しをん 新潮文庫


 最果タヒさんの詩集、『天国と、とてつもない暇』には、「クリスマスの詩」、「冬の濃霧」、「星」、「グッドナイト」など、クリスマスの詩が含まれています。なかでも、「グッドナイト」では、「サンタクロースを信じますか。」という一文を通し、クリスマスシーズンの寒さと静けさの中で、愛することが表現されています。忙しい日の夜に、ぜひゆったりと最果タヒさんの紡ぐ言葉に触れ、その幻想的な世界観にどっぷりと浸ってみませんか。きっと静かで落ち着いた気持ちを取り戻します。


『天国と、とてつもない暇』 最果タヒ 小学館


毎年クリスマスに読みたくなるような絵本との出合い

 クリスマス絵本はたくさんあります。種類豊富に買い揃えるのもよいですが、宝物のように長く大切にしたくなるような、毎年クリスマスが来たらあの絵本読もうと思えるような、そんな特別なクリスマス絵本を手に取ってみませんか。贅沢で愛を込めた絵本を大切な人にプレゼントとして贈るのも、クリスマスだからこそのたのしみかもしれません。

 それでは、今夜もすてきな絵本時間をお過ごしください。

5冊だけの本屋 ミホコ

2015年に女性のための選書サービス「5冊だけの本屋」をスタート。お客様のSNSを拝見して、今のお客様にぴったりな5冊を選書している。本好きな女性にも、普段本を読まない女性にも、読書を楽しんでもらうために活動中。

「5冊だけの本屋」ミホコの今日もハッピーエンド。