2023.08.07

「親子で一緒に読んで、作って、食べるおやつ絵本」

Column

 5冊だけの本屋という女性向け選書サービスを行っておりますミホコです。

 「寝る前に読んでもらう絵本のストーリーの終わりがあたたかいものだったら、子どもたちは一日をとっても幸福に感じるでしょう。そして心地よい眠りにつけるはずです」

 これはミッフィーの生みの親でもあるディック・ブルーナさんの言葉です。毎日、大人も子どももいろいろあります。どんな一日でも、夜眠る前に心温まる絵本をゆっくりゆっくりと読んでいると、一日の緊張の糸がほどけて自然とリラックスしてきます。彼の言葉にあるように、それが幸福や心地よい眠りに繋がるのだと思います。この連載では、眠りにつく前にぴったりな心温まる絵本とそれにつながる5冊をご紹介します。

読んだら食べたくなるおやつ絵本

 おやつといえばホットケーキ。子どもの頃、日曜日に大きなホットプレートでたくさんのホットケーキを作り、家族みんなで食べました。嬉しくて、楽しくて、幸せな気持ちでいっぱいになったのを覚えています。私が初めてひとりで作ったおやつもホットケーキでした。ホットケーキにはたくさんの思い出があるため、大人になった今でも、ホットケーキを食べると温かく満たされた気持ちになります。ホットケーキは、おやつの定番としてたくさんの絵本にも登場します。
そこで今回は、読んだら食べたくなるおやつ絵本をご紹介します。


 『きょうのおやつは』は、ホットケーキを作る工程を描いた絵本です。片面が鏡のように反射する紙でできているため、90度に開いて読むことでもう片面の絵を鏡に映して立体的に楽しむことができます。ホットケーキをひっくり返すところやシロップをかけるところは、そのリアルさに驚きます。
物語を読むだけでなく、おもちゃで遊んでいるようなしかけの面白さを、ぜひ体感してみてください。

『きょうのおやつは』わたなべちなつ さく/福音館書店 対象:5・6才から


 ドーナツ、ビスケット、のりまき、すいか。赤ちゃんにとって身近なまるい食べ物が登場する『まるくて おいしいよ』。ページいっぱいに広がるいろいろな色と大小さまざまなまる。「これ なあに。」の質問が子どもの想像力を掻き立てます。ページをめくるとおいしそうなまるい食べ物の正体が。
赤ちゃんの食事への関心を促し、おやつがたのしくなる一冊です。

『まるくて おいしいよ』こにしえいこ さく/福音館書店 対象:0才

憧れの器とおいしいお菓子で特別なおやつ時間を


 『なにのせる?』は、陶芸家・鹿児島睦氏の器とおやつの絵本。動物たちが「なにのせる?」と問いかけます。ページをめくると、料理家たちによるプリン、クッキー、パンケーキなどのおやつが器にのった写真が登場。レシピがついているので、実際に作ることができます。
今日のおやつはなににしようか。どのお皿にのせようか。そんなことを親子で相談しながら、丁寧に用意したおやつは格別。ずっと大切にしたい一冊です。

『なにのせる?』鹿児島睦:絵とおさら ギャラリーフェブ:お話と企画/文化出版局

ママのためのおやつの本

 子どものためのおやつを一緒に楽しむのもいいけれど、時にはママのためのおやつも大切。自分が本当に好きで自分のために選んだお菓子は、疲れやストレスを和らげ気分転換になります。仕事モードから家事・育児モードへの切り替えの手助けにもなります。
そこで、ママのためのお菓子選びのヒントに、『和菓子のアン』シリーズなどでおなじみの坂木司氏のおやつのエッセイと短編小説を選びました。


 資生堂パーラーのストロベリーパフェ、ウエストのドライケーキ、銀座千疋屋のフルーツサンド、銀座あけぼののおかき、ピエールマルコリーニに銀座文明堂。『おやつが好き お土産つき』を読んでいると、食べたいものが次から次へと出てきてお腹が空いてきます。甘いものだけでなく、しょっぱいものも登場するので、口の中が甘いとしょっぱいの無限ループに。
そして、どれも安心・安全でおいしく食べることができるお菓子ばかりです。「あなたのおやつが、いつも自由で楽しくありますように」というあとがきの一文が、おやつを純粋な楽しみにしてくれます。

『おやつが好き お土産つき』坂木司/文春文庫


 ショートケーキをテーマにした短編小説『ショートケーキ。』は、初めての出産・育児中のママたち共感必至。ケーキセットと共に過ごすお茶の時間が好きだったあつこは、子どもが生まれてからそれすらもままならない。初めての育児に戸惑い、温かい紅茶すら飲めず、サンドイッチを口に押し込み、朦朧としながらも必死に目の前の小さな赤ちゃんを育てる日々。
そんなあつこが、ママ友と3人で協力し合って自分たちの欲求を満たすことに。ママたち3人の会話もリアルで、育児中のママだけでなくパパやたくさんの人にママたちの気持ちを理解してもらえる一冊です。

『ショートケーキ。』坂木司/文藝春秋

おやつがあるからこそ頑張れることもある

 おやつは、子どもにとって大切な補食でもあります。でもそれだけではなく、子どもにとっても大人にとってもいつでもおやつは楽しいものです。疲れた心と体を癒してくれて、高揚した気分を落ち着かせてくれて、心身のバランスを保つための大切なものです。おやつがあるからこそ、頑張れることもあります。おやつ絵本をきっかけに、記憶に残る素敵なおやつ時間になれば嬉しいです。

 それでは、今夜もすてきな絵本時間をお過ごしください。

5冊だけの本屋 ミホコ

2015年に女性のための選書サービス「5冊だけの本屋」をスタート。お客様のSNSを拝見して、今のお客様にぴったりな5冊を選書している。本好きな女性にも、普段本を読まない女性にも、読書を楽しんでもらうために活動中。

「5冊だけの本屋」ミホコの今日もハッピーエンド。