2024.03.04

「出会いと別れの春、ともだち絵本を」

Column

5冊だけの本屋という女性向け選書サービスを行っておりますミホコです。

「寝る前に読んでもらう絵本のストーリーの終わりがあたたかいものだったら、子どもたちは一日をとっても幸福に感じるでしょう。そして心地よい眠りにつけるはずです」

これはミッフィーの生みの親でもあるディック・ブルーナさんの言葉です。
毎日、大人も子どももいろいろあります。どんな一日でも、夜眠る前に心温まる絵本をゆっくりゆっくりと読んでいると、一日の緊張の糸がほどけて自然とリラックスしてきます。彼の言葉にあるように、それが幸福や心地よい眠りに繋がるのだと思います。
この連載では、眠りにつく前にぴったりな心温まる絵本とそれにつながる5冊をご紹介します。

「ともだちってなんだろう?」絵本を読んで親子で一緒に考える

春、卒園・入学などで、友だちとの別れや新しい出会いを初めて体験する子どもも多いと思います。「仲良しの友だちと離れて寂しいな」、「小学校で新しい友だちできるかな?」など、友だち関係の不安と期待で複雑な感情になる子どももいるかもしれません。
そこで、今回はそんなときに持っておきたい「ともだち」絵本をご紹介します。


「ともだちってなんだろう?」子どもだけでなく、大人にとっても「ともだち」の定義は難しいものです。
そんなときにまず手に取りたい絵本が『ともだち』です。「ともだちって」、「ともだちなら」、「ひとりでは」、「どんなきもちかな」、「けんか」など、テーマに沿って進みます。友だちの大切さ、すばらしさをシンプルな言葉で伝えてくれるので、大人にも心に響きます。
子どもが、友だち関係の悩みをうまく言葉にできなかったり、家族や他の友だちにも相談できなかったりしたときに、その解決やヒントを与え、寄り添ってくれる一冊。この春、小学校に入学するお子さんへのプレゼントとしてもぴったりです。

『ともだち』谷川俊太郎・文 和田誠・絵/玉川大学出版部


『ね、ぼくのともだちになって!』は、『はらぺこあおむし』の作者でもあるエリック=カールさんによる友情の物語。
エリック=カールさんは、一番好きな絵本としてこの本を挙げています。小さなねずみは友だちを求めて、ゾウやライオンなど出会う動物に屈託なく「ね、ぼくのともだちになって!」と声をかけます。
繰り返されるその言葉と独創的で色彩豊かなたくさんの動物の絵は、見ているだけでも十分に楽しめます。そして、友だちづくりのヒントと勇気がもらえる絵本です。

『ね、ぼくのともだちになって!』エリック=カール 作/偕成社 対象:4歳から

感性を刺激するアートブックとしてもぴったりのともだち絵本

『ともだちがほしかったこいぬ』は世界的なアーティスト奈良美智さんによる絵本。
ひとりぼっちでさみしくて友だちがほしかったこいぬ。それは、大きすぎて誰にも見つけてもらえないから。こいぬなのに大きすぎるという点がとてもユニークです。
そんなこいぬに気づいた一人の女の子と友だちになるまでを描いた心温まる物語。「だいじなのは さがすきもち!」という言葉に、もしもひとりぼっちでも、ありのままの自分でいれば、きっとかけがえのない友だちとの出会いがあると明るい気持ちになります。

『ともだちがほしかったこいぬ』絵と文 奈良美智/マガジンハウス

やっぱり友だちっていいなと思える物語

大人になると、環境の変化によって友だちと疎遠になるときもあれば、出会いの幅が狭まり友だち関係が広がらないときもあります。でも、気心の知れた友だちと会って話すと、心が軽やかになり、やっぱり友だちっていいなぁと思います。
そこで今回は女性同士の友情を明るく描いた物語をご紹介します。空気が和らぐ春、読み終えたら無性に友だちに会いたくなるかもしれません。


『シェニール織とか黄肉のメロンとか』は、性格も環境もまるで違うけれど、学生時代からの仲良し五十路・三人組の物語。
母と二人暮らしの作家・民子。イギリスから帰国したばかりの自由人・理枝。義母の介護をしながら、夫と二人の息子と暮らす主婦・早希。それぞれ悩みがありつつも、その日常を軽やかに楽しそうに描いています。いくつになってもやっぱり学生時代の友だちは特別だと実感します。

『シェニール織とか黄肉のメロンとか』江國香織/角川春樹事務所


女性同士の友情を描いた作品も多い山内マリコさん。『一心同体だった』は、1990年10歳から2020年40歳までの、それぞれの年代の女子特有の悩みと友情を描いた連作短編集。
友だちになる瞬間、親友との運命的出会いの瞬間が見事に描かれています。学校を卒業すると疎遠になったりもするけれど、その年代ごとに共に過ごしたかけがえのない友だちを思い出し、懐かしい気持ちでいっぱいになります。サンリオ、『りぼん』と『なかよし』、プリクラ、『笑っていいとも!』、『天使なんかじゃない』、カラオケで小室哲哉プロデュースの曲を熱唱など、アラフォー世代には昔懐かしい思い出が蘇る描写も魅力です。

『一心同体だった』山内マリコ/光文社

家族以外に信頼できる友だちが一人でもいることの幸せ

ジェンダーレスや多様性など、ママ世代と大きく変化している子どもたちの友だち関係。家族でもない他人が、ありのままの自分を理解し、受け入れ、どんなときも味方になってくれることはとても嬉しいことです。
信頼できる友だちが一人でもいると、それだけで毎日が楽しくなります。なんでもできそうな気がしてきます。自信につながります。いろいろあるけど、やっぱり友だちっていいよねと気づく絵本との出会いになれば嬉しいです。

それでは、今夜もすてきな絵本時間をお過ごしください。

5冊だけの本屋 ミホコ

2015年に女性のための選書サービス「5冊だけの本屋」をスタート。お客様のSNSを拝見して、今のお客様にぴったりな5冊を選書している。本好きな女性にも、普段本を読まない女性にも、読書を楽しんでもらうために活動中。

「5冊だけの本屋」ミホコの今日もハッピーエンド。