2024.04.01

「桜とたんぽぽ、春を告げる絵本」

Column

5冊だけの本屋という女性向け選書サービスを行っておりますミホコです。

「寝る前に読んでもらう絵本のストーリーの終わりがあたたかいものだったら、子どもたちは一日をとっても幸福に感じるでしょう。そして心地よい眠りにつけるはずです」

これはミッフィーの生みの親でもあるディック・ブルーナさんの言葉です。
毎日、大人も子どももいろいろあります。どんな一日でも、夜眠る前に心温まる絵本をゆっくりゆっくりと読んでいると、一日の緊張の糸がほどけて自然とリラックスしてきます。彼の言葉にあるように、それが幸福や心地よい眠りに繋がるのだと思います。
この連載では、眠りにつく前にぴったりな心温まる絵本とそれにつながる5冊をご紹介します。

桜とたんぽぽが咲く頃に読みたい絵本

春らしい陽気が続くと、桜も咲きはじめ、散歩道ではあちらこちらでたんぽぽを見かけるようになります。子どもはたんぽぽを見つけては、指をさして「たんぽぽ!」と知らせてくれたり、手に取ったりします。足元を見れば、明るく元気に咲く黄色いたんぽぽ。顔を上げればピンクの桜。やっと春がきたと感じます。
そこで今回は、春を告げる桜とたんぽぽの絵本をご紹介します。子どもも大人もうっとりするほどの美しい絵本です。


桜色が目を引く絵本『さくらのふね』。
山の上から「はるきたよ はるきたよ」とテントウムシがさくらのふねにのって、花や鳥や虫、動物たちに春を知らせます。春の柔らかくて自然あふれる色彩とリズム感のある文章で構成された絵本。ふもとの満開の桜の風景は圧巻。ずっと眺めていたくなるような美しい景色です。毎年、春がくるたびに読み返したくなる絵本です。

『さくらのふね』きくちちき/小峰書店 対象:3・4歳から


『さくら』は、一本の桜の木の一年間を描いた絵本です。
花が咲き、ひよどりやすずめがみつを吸う春。花が散ったあとの様子、みどりの葉っぱが満載の夏、紅葉の秋、冬の寒さの中での過ごし方。美しく精巧な絵とわかりやすい文章で、春だけじゃない桜の木の様子を楽しむことができます。

『さくら』長谷川摂子 文 矢間芳子 絵・構成/福音館書店 対象:4歳から

縦にしたり横にしたり、図鑑のように楽しむたんぽぽ絵本

子どもがたんぽぽを摘んできたら、一緒に読みたいまるで図鑑のようにリアルで美しい絵本『たんぽぽ』。
見開き2ページに広がるたんぽぽの深く伸びる根は、絵本を縦にして読みます。たんぽぽのつぼみの拡大図はまた絵本を横に戻し、ぱぁっと開いた花はまた縦にして、絵本を縦にしたり横にしたり、細部に広がる工夫で読む者を飽きさせません。
他にも花びらをひとつひとつはずして円形に並べた精巧さには驚かされ、見開き2ページに規則正しく描かれたひとつひとつの綿毛などは圧巻で見入ってしまいます。子どもと一緒にたんぽぽについて学べる楽しい一冊です。

『たんぽぽ』荒井真紀 文・絵/金の星社 対象:幼児から

忙しかったり、疲れたりしたときでも、気軽に楽しめる本。

春、環境の変化もあり忙しく、心身ともに落ち着かないという方もいらっしゃると思います。そんなときは、落ち着いて本を読む気になんてなれなかったりします。
そこで、今回は、ぱらぱらっと気軽に読んで気分が上がるさくらももこさんのエッセイと、短歌や写真を眺めて癒される俵万智さんの歌集をご紹介します。忙しかったり、疲れたりしたときでも、気軽に手に取って楽しめる二冊です。


さくらももこさんの大人気エッセイ『さくら日和』は、とにかく面白くて元気になる一冊。
いつでもどんなときでも真剣で、誰よりも面白がり、驚くほどの行動力に、前向きな気分になります。「ママは、さくらももこなんでしょ」と疑う息子をあの手この手でごまかしたり、息子が保育園をズル休みしたがったり、息子と町内の春祭りに行ったりと、育児エピソードも満載です。
「これからますます面白くなりそうな予感でいっぱいだ。生きていると大変なことも起きたりするけれど、大事な家族や友人やスタッフに囲まれてこうして元気に仕事できることを幸せに思う」という結びに、今の自分の環境に感謝し、満たされた気持ちになります。

『さくら日和』さくらももこ/集英社文庫 ©MOMOKO SAKURA


『俵万智の子育て歌集 たんぽぽの日々』は、歌人・俵万智さんによる子育てをテーマにした短歌とエッセイ集。
母親がご機嫌でいることの大切さ、息子との信頼関係、子どもを通して繋がるママ友など、共感と新しい発見に気づく一冊。忙しすぎて自分の時間も取れずにイライラモヤモヤしたときに、「私は仕事をしていて、それはやりがいのあることだけれど、仕事には、いくらでも代わりをしてくれる人がいる。でも子どもにとっての母親は、世界中で自分だけ」という一文にはっとします。
美しい写真と短歌とエッセイをぱらぱらっと眺めるだけでも気持ちが落ち着いてきます。子どもとの今この瞬間がよりいっそう愛おしくなります。

『俵万智の子育て歌集 たんぽぽの日々』俵万智・著 市橋織江・写真/小学館

絵本を読んで、散歩して、全力で春を感じてみる。

桜とたんぽぽの美しさに絵本で触れ、そのあとで実物を見に行ってみると、今までよりも細部まで見えるようになります。新しい発見があると、子どもだけでなく大人だって嬉しくて楽しくなります。普段の散歩道が、いつもと全く違う景色に変わります。
春の散歩日和、家族でゆったりとたんぽぽや桜を見て触れて、これまでとは全く違う色彩豊かな春を全力で楽しんでみてはいかがでしょう。

それでは、今夜もすてきな絵本時間をお過ごしください。


5冊だけの本屋 ミホコ

2015年に女性のための選書サービス「5冊だけの本屋」をスタート。お客様のSNSを拝見して、今のお客様にぴったりな5冊を選書している。本好きな女性にも、普段本を読まない女性にも、読書を楽しんでもらうために活動中。

「5冊だけの本屋」ミホコの今日もハッピーエンド。