2024.09.02

「秋の夜長、眠れない夜に読みたい絵本」

● 子育て

5冊だけの本屋という女性向け選書サービスを行っておりますミホコです。

「寝る前に読んでもらう絵本のストーリーの終わりがあたたかいものだったら、子どもたちは一日をとっても幸福に感じるでしょう。そして心地よい眠りにつけるはずです」

これはミッフィーの生みの親でもあるディック・ブルーナさんの言葉です。
毎日、大人も子どももいろいろあります。どんな一日でも、夜眠る前に心温まる絵本をゆっくりゆっくりと読んでいると、一日の緊張の糸がほどけて自然とリラックスしてきます。彼の言葉にあるように、それが幸福や心地よい眠りに繋がるのだと思います。
この連載では、眠りにつく前にぴったりな心温まる絵本とそれにつながる5冊をご紹介します。

眠れぬ夜に読みたい絵本

秋の夜長。だんだんと夜が長くなり、子どもが眠ったあとに一人でゆったりと過ごす静かな夜時間を楽しみにする方も多いのではないでしょうか。でも、夏の疲れからなのか、気候や環境の変化からなのか、大人も子どももなかなか眠れないなんてこともあるかもしれません。
そんな眠れない夜に親子で一緒にたのしむ絵本をご紹介します。


眠れない夜には、おばけの愉快な絵本『おばけパーティ』がぴったり。
おばけといっても怖くないのでご安心を。古いお城の大広間。おばけのアンリは友だちを招待して晩餐会を開きます。アンリは食事の準備で大忙し。まずは、カラフルなカクテルをどうぞ。するとおばけたちの体が、ピンクや青などのカクテルの色に変わります。サーモンを食べればピンク。サラダを食べれば緑。食べたものの色に次々と変わっていくおばけたち。今夜の特別メニューを食べると、みんな消えちゃった!おばけたちのユーモアの効いた、何度も読み返したくなる面白さです。これからのハロウィンシーズンにもぴったりの絵本です。

『おばけパーティ』ジャック・デュケノワ 作 大澤晶 訳/ほるぷ出版 対象:4・5才から


『ねないこ だれだ』は、眠れない夜にぴったりのベストセラー絵本。
いるはずもないおばけ、時計の音が妙に不気味に聞こえたり、外で走っている黒猫に驚いたり、遭遇するはずもない泥棒など、子どもにとって夜が怖いと感じさせるものをカラフルで愛着が湧くイラストで描いています。リズムのいい文章も入眠にはぴったり。
おばけなんて怖くないよという子どもにも、漠然と夜は怖いと思っているこわがりの子どもにも読み聞かせたい一冊です。

『ねないこ だれだ』せなけいこ 作・絵/福音館書店 対象:1才から

自分で影を生み出して物語を創る美しい本

『モーションシルエット かげからうまれる物語』は、ライトを持ってページの真ん中に灯りを当てると、かみなりやれっしゃ、おばけの影が現れて物語を楽しむ本です。
自分の灯りの当て方でその影が伸びたり縮んだり、ゆらゆら動いたり、本の世界が広がります。一つのしかけが右のページと左のページで全く違う見え方になり、物語の姿も変容する表現の豊かさが五感を刺激します。ゆらゆら揺れる繊細で美しい影を見ていると、うとうとしてしまいそう。ぜひ、親子で一緒にお楽しみください。

『モーションシルエット かげからうまれる物語』シルエットブックス 著/グラフィック社

どんな自分もまるごと受け止めてくれる夜の本

日中、仕事と育児に追われ、帰宅して家のことをやっていたらあっという間に寝る時間になっている。私は、今日一日何をしていたのだろうと思うことはありませんか。
一日頑張った自分を思いきり褒める夜。不甲斐なかった自分を思う存分甘やかす夜。大切な家族と過ごすあたたかい夜。夜は、自分をまるごと受け止めてくれて、やさしく包み込んでくれます。穏やかで静かな気分になれる夜の本をご紹介します。


『眠れぬ夜のご褒美』は、一日を頑張った人を労わる夜食のアンソロジー。 仕事で理不尽な目に遭い本当は怒りたかった女性のための小鍋。高校時代の女友だちと夜のファミレスで余剰カロリーを摂取しつつ語らうアラフィフの女性たち。痩せるレシピを考案する料理研究家がどうしても食べたいインスタントラーメン。本当は、何をしたかった?どうしたかった?気づかないふりをした自分の気持ちに気づく夜もありませんか?そんな夜に、おいしい夜食とやさしい物語に心身が満たされていきます。恋愛って、夫婦って、友だちっていいなぁと思える一冊。

『眠れぬ夜のご褒美』標野凪 冬森灯 友井羊 八木沢里志 大沼紀子 近藤史恵/ポプラ文庫


装画のおばけがかわいい『うたうおばけ』は、子どもがおばけの絵本を読んでいる隣で読みたい本。
受験日を間違えた高校時代。ふられて悔しかった大学四年の冬。大学を卒業できず就職も上手くいかなかった二十二歳。その他、著者とともだちのかけがえのない日々を綴ったエッセイです。
ままならない人生をさらけ出し、強くてやさしい言葉の数々。昔懐かしい思い出がよみがえり、熱い思いがこみ上げてきます。そして、かけがえのないともだちに会いたくなります。

『うたうおばけ』くどうれいん/講談社文庫

大人も、子どもも、自分の本当の気持ちに気づく夜。

夜だからこそ、気づける自分の気持ちもあります。夜は自分と向き合う絶好のチャンス。それはきっと大人も子どもも同じかもしれません。本当は伝えたかったけれど伝えられなかったこと、自分でもよくわからない言葉にできなかった気持ち、そういう些細なことを素直に家族に話せるのは、夜の静まり返ったベッドの中なのかもしれません。そういうかけがえのない時間をリラックスして過ごすきっかけになれば嬉しいです。

それでは、今夜もすてきな絵本時間をお過ごしください。


5冊だけの本屋 ミホコ

2015年に女性のための選書サービス「5冊だけの本屋」をスタート。お客様のSNSを拝見して、今のお客様にぴったりな5冊を選書している。本好きな女性にも、普段本を読まない女性にも、読書を楽しんでもらうために活動中。

「5冊だけの本屋」ミホコの今日もハッピーエンド。