2020.11.06

[医師監修]あわてない、大声を出さない、揺らさない! 子どもの熱性けいれん対処法

Column

生後6カ月から6歳くらいまでのお子さんの10〜15人に1人の割合で起きるといわれている熱性けいれん。主な症状は、38℃以上の高熱が出たときに、急に手足や体がガタガタと震えますが、大抵は2〜3分で収まります。突然わが子がけいれんをし始めたら、ママやパパはパニックになってしまうものです。
そこで、上高田ちば整形外科・小児科の千葉智子先生に、熱性けいれんが起きたときの正しい対処法を教えてもらいました。

なぜ、熱性けいれんは起きるの?

「熱性けいれんは、数日間の高熱後にポツポツと発疹が出る突発性発疹や、手足口病などの夏に流行するウイルス風邪(夏風邪)、インフルエンザなど、急に発熱が起きたときに併発します。これは、乳幼児の脳神経系が未熟なことが要因で、急な体温上昇に脳内のコントロール機能が追いつかなくなった状態です。パソコンやスマホにバグが生じた様子をイメージするとわかりやすいかもしれません。大半の場合は一過性のものであり、しばらくすれば元に戻ります。
また、遺伝的な要因があり、両親のどちらかが熱性けいれんを経験していると、そうではないお子さんよりも2〜3倍頻度が高くなるといわれています。脳に後遺症が残るような病気ではないので、落ち着いて行動できるように、知識を深めておきましょう」(上高田ちば整形外科・小児科の千葉智子先生、以下同)

発症時の正しい対応は?

「けいれんが始まった時間をすぐに確認し、衣類やオムツをゆるめてあげます。そして、嘔吐や誤飲を防ぐために、あおむけではなく、やや横向きに寝かせましょう。ひと昔前は、舌をかまないようにと、口の中にタオルを入れたり、棒や指をお子さんの口に入れたりする対応をしていましたが、嘔吐を誘発する可能性があるうえに、吐瀉物が気管に入ってしまう危険があるので、絶対にやめてください。
一口にけいれんといっても、ガクガク震えたり、ピーンと伸びきったりと、さまざまな症状があります。
左右対称か、体の半分だけが震えていないか、眼球が上転しているのか、眼球が一定の方向を向いたままの偏視があるのか、唇や顔は青ざめていないか、吐いていないかなど、お子さんの様子をよく観察しておきます。
2〜3分でけいれんが収まり意識が回復し、しばらく様子を見て、けいれんの再発がなく、意識も回復しているのであれば、夜間の緊急診療へ走る必要はありません。当日の診療が終わっている時間帯ならば、翌日の午前中に受診しましょう」

けいれんが収まらないときは?

「5分以上けいれんが止まらない場合は、けいれん重積(けいれんが続いている状態)の可能性や早期治療を必要とする髄膜炎にかかっている可能性が出てきますので、救急車を呼んでください。
ほかにも、一旦止まったと思ってもけいれんを繰り返すときや、意識がもうろうとしている場合、顔色や唇の紫色状態(チアノーゼ)が引かない場合も、熱性けいれん以外の要因が考えられますので、救急車を呼びましょう。
このときも、症状に関する詳細情報があると原因究明に役立ちますので、いつ熱に気づいたのか、けいれんがいつから始まったのか、何分間続いたのか、どんなけいれんなのかをメモしておきましょう。
まずは、『時間、症状をメモする!』と頭で覚えてください。とはいえ、お子さんが急にけいれんしたときは、動揺して頭が真っ白になってしまうものです。
そこで、母子手帳ケースの中に『熱性けいれん用メモ』として、日付、時間、症状などの項目がすぐに書けるようなメモ用紙を備えておいたり、けいれんの状態をスマホで動画を撮影したりすることをオススメします」

どんな治療をするの?

「けいれんが短時間でおさまり、意識状態に問題がなければ、熱性けいれんに対する治療は必要ありません。発熱の原因となった夏風邪などの病気に関する治療を行います。
けいれんが長時間続いた場合や、繰り返し起きる場合には、再発防止のために抗けいれん薬を処方されることがあります。
まれに、8〜9歳になってもけいれんが起きることもあります。その場合は、てんかんの可能性が考えられ、脳波検査や抗てんかん剤の内服治療が必要になることもあるので、けいれん発症時には詳細を記録することと、すぐにおさまっても翌日には必ず受診することが大切です」

熱性けいれんは再発しやすい?

「一度熱性けいれんを発症すると、再び起きる可能性は少なくありません。38℃以上の高熱が出たときは、発熱後24時間以内は、注意してお子さんの様子を観察するようにしましょう。
高熱が要因となる熱性けいれんですが、解熱剤で熱を下げれば防げるというわけではないので、熱性けいれんの再発を防ぐ目的で解熱剤を服用するのはやめましょう。
そして、保育園や幼稚園との連携も大切です。熱性けいれんを発症した時期や具体的な症状、かかりつけ医からの注意事項を園の先生に報告し、発熱時はすみやかに連絡をもらうようにお願いしておきましょう。
また、熱性けいれんを発症後、2〜3カ月は予防接種を控える必要があるので、かかりつけの小児科以外で予防接種を受ける際には注意してください」

「もしもお子さんが熱性けいれんになったときは、ママやパパが落ち着いて対応できることが大切」と千葉先生は言います。お子さんの急な発熱時には目を離さない、体や意識の異変がないかをよくチェックする、そして、けいれんが起きたときは、慌てずに行動することを頭の中に入れておきましょう。

教えてくれた人 千葉智子先生/小児科医
昭和大学医学部医学科卒業。東京、神奈川の病院、クリニック勤務を経て、整形外科医の夫とともに東京都中野区に「上高田ちば整形外科・小児科」を開業。各種メディアへの小児医療についてのコラム執筆や、保護者向けの小児科のかかり方、ホームケアについての講演にも力を注ぐ。3人のお子さんのママ。