2022.08.05

知っておきたい中学受験のこと vol.7 中学受験うまくいかないとき、どうした?

Column

これまで、共働き家庭の親のサポートや費用など、中学受験をする上で気になる問題を取り上げてきましたが、今回は成績の伸び悩みやお子さんのやる気をはじめとした、中学受験がうまくいっていないときの乗り越え方です。中学受験アドバイザーの西 和美さんにお聞きするとともに、先輩ママたちの声もご紹介します。

中学受験の勉強のやる気が出ない、勉強をしたがらない。どのような理由が考えられる?

中学受験を控えている保護者の悩みで最も多いのが、「子どもが勉強したがらない」ということではないでしょうか。西さんはその原因について、さまざまな理由が考えられると言います。
「受験勉強をスタートした頃は、小学校での学習とは異なる新しい学びが始まり、楽しさと希望があふれていたのに、徐々に学習が難しくなって成績が伸び悩むと、自己肯定感が低くなり、やる気が出なくなってしまうということが多々あります。
また、受験勉強する意味がわからなくなってきているパターンも少なくありません。特に『この学校に絶対行きたい!』という強い思いがないなど、受験の目標、目的を見失っているときも、勉強をしたくない気持ちにつながりがちです。小6になっていよいよ受験まで1年を切った頃から多くなってくるのが、受験に対する不安が大きくなっているパターンです。学年が上がるにつれ、解けない問題が多くなり、自信をなくしている場合にも考えられますね」

保護者の関わり方が原因の場合も
「保護者や周囲の期待が大きすぎるときもプレッシャーになって、やる気を下げる原因になる場合も。また、保護者が『勉強しなさい』と言い過ぎてしまっていることが原因になっている場合も多いのが現状です」

「勉強のやる気が出ない、勉強をしたがらない」を乗り越えるために保護者ができること

1日、2日やる気のムラがあるくらいならまだしも、それが数日続いてしまったら心配です。保護者として、できることは何でしょう。

1.勉強の習慣づけをサポート
「勉強はやる気が出ない時でも、毎日勉強する習慣づけができていれば、進みが少々遅くなっても机に向かいます。『勉強は生活の一部』にする習慣づけをしましょう。やることリスト作りは効果的です」

2.目的の再確認
「中学受験をする目標や目的は何かを家族で話し合いましょう。できれば深刻な雰囲気ではなく、明るくやさしい雰囲気で行うのがポイントです。保護者が考える目的ではなく、お子さんの考える目的を引き出すお手伝いをしてあげてください」

3.不安を取り除く
「お子さんが受験に対して大きな不安を抱えている場合、『第一志望に合格しなくてはいけないわけではない』こと、『もし全部不合格になったとしても、大丈夫』ということをそれとなく伝えていきましょう。また、親御さん自身も、そういうことも有り得ることを心に留めておいて欲しいと思います」

4.子どもへの関わり方を考える
「保護者はお子さんに過干渉にならないことが大事です。勉強する時間を細かくチェックしたり、模試の成績に一喜一憂したりしないなど、ご自身でお子さんへの関わり方を考えてみてくださいね」

成績が伸び悩んでいるときはどうすべき?

勉強が難しくなり、解けない問題が多くなったり、周囲の大きな期待に潰されそうになっていたりすると、焦りや不安が成績に反映されることは多々あります。そんなとき、保護者はどうしたらいいのでしょうか。
「お子さん自身で問題集の答え合わせをするようになると、難しい問題を自分で深くじっくり考えて解くことより、わからないとすぐに解答を見てしまう場合があります。これが、成績の伸び悩みにつながる場合も。そこで、問題集の答え合わせを一緒にしましょう。もし解けない問題が多くても、口出ししないことが大切です。解けるような問題を解き、もう一度問題を解く楽しさを取り戻すことも効果があるかもしれません。
また、周囲の過度な期待は、大人が考えるより、子どもは敏感に感じます。『そのままでいいんだよ。頑張ってるよ』と、お子さんの現状を認めてあげましょう」

先輩ママ発! わが家はこうして乗り越えました

力をくれた塾講師の言葉
「小6の夏休み明けの模試の結果がボロボロで、夏休み返上であんなに勉強したのに……と親子で大ショック。子どもも勉強のやる気をなくし、一時は受験撤退も脳裏をよぎりました。でも、塾の先生から『夏休みの頑張りがテストの結果に反映されるのは国語と算数なら3ヵ月かかるよと言われ、気持ちを切り替えました。スランプの時こそ、受験のプロである塾の先生の言葉掛けが力になってくれました」(R.Yさん / 中2の男の子のママ)

1泊2日のキャンプでスイッチが入った
「小6の1学期までは順調に学習を進めていたのですが、夏休みに入った途端、やる気がガタ落ちした息子。一足先に受験を乗り越えたママ友から気分転換を勧められ、1泊でキャンプに行きました。勉強のことは一切忘れて、川で泳いだり、バーベキューをしたり、焚火を囲んだり……。これが心の栄養になったようで、帰りの車では『オレ、勉強頑張るよ』と宣言。その後、これまで以上に努力を重ね、志望校のランクを上げることを勧められるまでになりました。自然の力って本当にすごいですね」(K.Tさん / 中3の男の子のママ)

「やめてもいいんだよ」の一言
「成績が伸び悩み、勉強に身が入らなくなった娘。焦りから机に向かうものの、塾の宿題にも時間がかかり、夜遅くに泣きながら机に向かうこともありました。そこで、夫と話し合い、『ママもパパも、あなたの幸せが一番。受験で苦しくなっているのなら、やめたっていいんだよ』と声を掛けました。すると娘は堰を切ったように泣き出しました。そして思い切り泣いたらスッキリしたのか、『受験はやめない』と。もしかしたら、不安でいっぱいの心を解放したかったのかもしれません」(S.Tさん / 中2の女の子のママ)

お子さんがスランプに陥っているママやパパへ
「中学受験は親子で臨む大きな挑戦です。そして一番心にとめて欲しいことは、お子さんはまだ幼い遊びたい盛りの小学生ということです。大人のように、長時間勉強したり、自分で気分転換をしてバランスを調節することはできません。お子さんが苦しい思いをしているときは、ママやパパが言葉で責めるのではなく、お子さんが求めているサポートをやさしく丁寧にしてあげてほしいと思います。実力以上のことを求めず、お子さんの現状を認めてあげられるかどうかが、受験成功の鍵になります」



お子さんのやる気が起きなかったり、成績が伸び悩んでいたりすると、つい喝を入れたくなってしまうママやパパもいるでしょう。しかし、西さんは「うまくいってないことに一番傷ついているのはお子さんです。勉強不足や、遊び時間の長さを指摘して、傷を深くするようなことはやめましょう」と言います。
この記事で紹介した方法や先輩ママたちの声を参考にしながら、お子さんに寄り添い、サポートを続けていきましょう。

教えてくれた人

西和美さん

中学受験アドバイザー

双子の母。長男次男とも中学受験をし、別々の私立中高一貫校へ進学。その後、大学受験で国立大学へ(東京大学 / 東京医科歯科大学)。受験は親子関係が大切であり、ママの負担も大きい。自身の経験から中学受験のサポートに悩むママたちの心に寄り添ったサービスを提供している。
サポート詳細や受験期ママへのヒントはブログにて

知っておきたい中学受験のこと