2022.09.05

「読書の秋に読みたい絵本」

Column

 5冊だけの本屋という女性向け選書サービスを行っておりますミホコです。

 「寝る前に読んでもらう絵本のストーリーの終わりがあたたかいものだったら、子どもたちは一日をとっても幸福に感じるでしょう。そして心地よい眠りにつけるはずです」

 これはミッフィーの生みの親でもあるディック・ブルーナさんの言葉です。毎日、大人も子どももいろいろあります。どんな一日でも、夜眠る前に心温まる絵本をゆっくりゆっくりと読んでいると、一日の緊張の糸がほどけて自然とリラックスしてきます。彼の言葉にあるように、それが幸福や心地よい眠りに繋がるのだと思います。この連載では、眠りにつく前にぴったりな心温まる絵本とそれにつながる5冊をご紹介します。

読書の秋こそ、本をテーマにした絵本。

 食欲の秋、この時期おいしいものがたくさんあって食欲が止まりません。でも、やっぱり私にとっては読書の秋です。この時期本屋でたくさん並ぶ芋や栗などおいしい絵本を横目に、本をテーマにした絵本を手に取ります。本屋や図書館を舞台にした絵本や本が好きな主人公の絵本、本が登場する絵本を読むと、純粋に楽しい気持ちになります。シンプルに、「ああ、やっぱり私は本が好きだなぁ」と再確認します。


 世界中で大人気の『としょかんライオン』は、図書館を舞台にした絵本。よく図書館に行く私にとっては、大好きで身近な図書館が舞台になっているというだけで嬉しくなります。図書館という静かな場所にライオンがやってくるというはじまりに驚かされつつも、読み進めるとライオンと図書館にいる人々の、温かくて感動的なラストに何度読んでも涙が出てしまいます。こんなライオンのいる図書館があったら素敵だなあと思わずにはいられません。

『としょかんライオン』ミシェル・ヌードセン さく ケビン・ホークス え 福本友美子 やく 岩崎書店


 『フランクリンの空とぶ本やさん』は、まるで秋の夜のような色の表紙デザインも好きです。本が大好きなドラゴンのフランクリンと同じく本が大好きな女の子ルナの物語。自分が好きなことを共に分かち合える喜びを描いています。それにしても、フランクリンの読む本が面白く、ローラースケートでたたかうアーサー王の物語や、でんどうあわだてきでつくるおかしの本、バレエのおどりかたにゅうもんなど、なかなか興味深いラインナップです。

『フランクリンの空とぶ本やさん』ぶん ジェン・キャンベル え ケイティ・ハーネット やく 横山和江 ビーエル出版


 大人気絵本作家ヨシタケシンスケ氏による絵本『あるかしら書店』。今は欲しい本をネットですぐに買うことができます。でも、やっぱり本は本屋で丁寧に選んで買いたいという思いがあります。そんな私にとって、「あるかしら書店」は夢のような書店です。そんな本あるはずないよね…って思ってしまうような本も、必ず「ありますよ」ってお客さんの期待に応えてくれる。さらには、「こんなのどうかしら?」と言って、自分では手に取らないような本をすすめてくれる。こんな書店が近くにあったらなあ、と思わずにはいられません。

『あるかしら書店』ヨシタケシンスケ ポプラ社

絵本とつながるおとなのための2冊

 せっかくの読書の秋。読書したい気持ちはあるけれど、どうしてもそんな時間が取れない。育児や仕事の忙しさから、読書をしばらくしていなかったという方もいらっしゃると思います。そこで、読書欲を刺激してくれる、まるで大人のための絵本のような本と人気作家による本にまつわるエッセイの2冊を選びました。どちらも一話一話の分量がちょうどよく、ご自分のペースで読み進めやすい本です。


 『その本は』は、又吉直樹氏とヨシタケシンスケ氏の夢のようなコラボによる話題の一冊。著者お二人の本への愛情が溢れている感動の本になっています。きっと、多くのママがヨシタケシンスケ氏の絵本をお子さまに読み聞かせてきたと思います。この本は、そんなママたち自身が楽しめる本になっています。笑ってしまう物語から、ホラーテイストの物語、ホロリと泣ける物語まで、読み応えも十分。寝る前に一話ずつ読むのが楽しみになる本です。

『その本は』又吉直樹 ヨシタケシンスケ ポプラ社


 ミナペルホネンの美しい装幀に包まれた『図書室で暮らしたい』は、直木賞作家・辻村深月氏による本にまつわるエッセイです。著者自身が好きな本、自作の解説、直木賞受賞時のエピソード、2歳になるお子さんのことなど、読書好きなママなら共感するところも多いかもしれません。育児や家事の合間や通勤時間、夜寝る前のちょっとした時間などにも読み進めやすい一冊です。

『図書室で暮らしたい』辻村深月 講談社文庫

純粋に絵本を読むことを楽しむ

 絵本の中で、何かを学んだり、気づいたりすることも大切かもしれません。でも、純粋に「絵本って面白いなぁ」「読書って楽しいなぁ」という、絵本を読む行為自体を楽しむ気持ちも大切にしたいと思っています。そういう気持ちに気づかせてくれる本で、読書の秋をはじめてみるのはいかがでしょうか。

 それでは、今夜もすてきな絵本時間をお過ごしください。

5冊だけの本屋 ミホコ

2015年に女性のための選書サービス「5冊だけの本屋」をスタート。お客様のSNSを拝見して、今のお客様にぴったりな5冊を選書している。本好きな女性にも、普段本を読まない女性にも、読書を楽しんでもらうために活動中。

「5冊だけの本屋」ミホコの今日もハッピーエンド。