2023.04.03

「春を感じたら植物絵本を読もう」

Column

 5冊だけの本屋という女性向け選書サービスを行っておりますミホコです。

 「寝る前に読んでもらう絵本のストーリーの終わりがあたたかいものだったら、子どもたちは一日をとっても幸福に感じるでしょう。そして心地よい眠りにつけるはずです」

 これはミッフィーの生みの親でもあるディック・ブルーナさんの言葉です。毎日、大人も子どももいろいろあります。どんな一日でも、夜眠る前に心温まる絵本をゆっくりゆっくりと読んでいると、一日の緊張の糸がほどけて自然とリラックスしてきます。彼の言葉にあるように、それが幸福や心地よい眠りに繋がるのだと思います。この連載では、眠りにつく前にぴったりな心温まる絵本とそれにつながる5冊をご紹介します。

草花溢れる春に植物絵本をお供にでかけよう

 春になると植物の本を手に取りたくなります。小さい頃は、季節ごとにたくさんの草花が溢れる家の庭で、春がやってくるのが待ち遠しかったです。大人になった今でもあの頃と変わらず、寒さが和らぎ、散歩道で草花の芽が吹き始めると、春の植物や庭をテーマにした本を読みたくなります。
 長く続いた寒い冬から、生命力みなぎる明るい春へと一気に気分が変わる絵本を読めば、春の豊かさをより一層感じることができます。


 春の植物の絵本はなんといってもカラフルで気分が明るくなります。赤ちゃんから楽しめる絵本『どのはな いちばん すきな はな?』(いしげまりこ ぶん わきさかかつじ え/福音館書店)は、人気ブランドマリメッコにて日本人初のデザイナーとして活躍した脇坂克二氏によるカラフルなお花のイラストが魅力。誰もが知るタンポポやチューリップ、スズランなどがダイナミックに描かれていて、公園などで花を見ながら絵本を楽しむのもいいかもしれません。お子さんが、好きな花はどんな花なのか知るきっかけにもなります。

『どのはな いちばん すきな はな?』いしげまりこ ぶん わきさかかつじ え/福音館書店


 ベストセラー絵本『はらぺこあおむし』でおなじみのエリック=カール作品『ちいさいタネ』(エリック=カール さく ゆあさふみえ やく/偕成社)。自然界で種から花が咲くまでを楽しめる植物絵本。小さなタネが仲間たちと旅をしながら、花を咲かせ、その先へとつながっていく自然の摂理、厳しさを描いています。『はらぺこあおむし』が大好きなお子さんが、一人で絵本を読めるくらいに成長したら手に取ってほしい自然や植物についての一冊です。

『ちいさいタネ』エリック=カール さく ゆあさふみえ やく/偕成社


 春散歩のお供にぜひ持ち歩きたい絵本『野の花えほん 春と夏の花』(前田まゆみ 作/あすなろ書房)は、柔らかいタッチのイラストで描かれた図鑑のような絵本。公園や道端に咲いていてよく見かけるけれど、名前が分からない花ってあります。きっと誰もがそう思う花について、名前の由来や特徴だけでなく、ちょっとしたブーケにする方法やレシピなども掲載されています。この絵本を見ながら、お子さまが摘んできた花について学んだり、一緒にブーケにして遊んだりして楽しめます。

『野の花えほん 春と夏の花』前田まゆみ 作/あすなろ書房

絵本とつながるおとなのための2冊

 毎年、春になると、「今年こそは花や緑あふれる庭にするぞ!」と意気込むものの、いまだに理想の庭とは程遠い我が家。小さい庭ながらも芝生の手入れだけで精一杯です。ちょうど今頃の時期から芝生の手入れをはじめ、雑草を抜く日々。夏にはたっぷりの水をまかなければいけません。雑草と天候と虫と闘いながら芝生の手入れをしていると、『園芸家12カ月』を思い出します。そして、部屋の中に彩りを加えるために『花の辞典』を読み、花を買いに花屋に行きます。
 今月は、私のように植物についてあまり詳しくない方にも楽しんでいただけるような本を2冊ご紹介します。


 『園芸家12カ月』(カレル・チャペック 著 小松太郎 訳/中公文庫)は、園芸家の一年をユーモラスに綴っている園芸エッセイ。庭を造るには「ホースというやつは、人間が手なずけるまでは非常に陰険な動物で、うっかりできない」らしい。草の刈り時の6月は「神さま、どうぞ毎日、夜中から午前三時まで、土の中によくしみこみますようにゆっくり、あたたかい雨をお降らせくださいますよう」と神に願う。8月は庭が気になりつつも避暑へ行くも、庭に対する不安がいっぱいで、庭の世話を頼んだ人に毎日手紙で指示を送る始末。思わず笑ってしまいます。
 悩みや苦労は絶えないが、四季の移ろいを感じ、自然に挑戦しながら、美しい庭を追求することのすばらしさに気づかされます。園芸の並々ならぬ知識と経験だけでなく、何事にも通じる名言も。園芸家たちが、あの美しい庭を造るためにどのような1年間を過ごしているか面白おかしく、且つ実用としての園芸を知ることができます。

『園芸家12カ月』カレル・チャペック 著 小松太郎 訳/中公文庫


 大人気の辞典シリーズの『花の辞典』(新井光史/雷鳥社)は、コンパクトなサイズ感とインテリアとして飾りたくなる可愛いデザインがお気に入りです。シーズンごとに分かれ、1ページに1花が写真付きで紹介されています。花は好きだけどあまり詳しくない私は、花を買いに行くときの参考にしています。巻末のコラムには、花を飾る時のポイントや長持ちさせるための豆知識など、生活に役立つ情報があり実用的なのも嬉しいです。

『花の辞典』新井光史/雷鳥社


 それでは、今夜もすてきな絵本時間をお過ごしください。

5冊だけの本屋 ミホコ

2015年に女性のための選書サービス「5冊だけの本屋」をスタート。お客様のSNSを拝見して、今のお客様にぴったりな5冊を選書している。本好きな女性にも、普段本を読まない女性にも、読書を楽しんでもらうために活動中。

「5冊だけの本屋」ミホコの今日もハッピーエンド。