樹齢130年以上の古木が残る アメリカの至宝ジンファンデル

まずは、アメリカを代表するジンファンデル葡萄のお話からはじめましょう。ジンファンデルは現在ほぼ全てがカリフォルニアで栽培されている国民的品種。イタリアのプーリアからオーストリアのウィーンを経て、1800年にカリフォルニアに苗が渡り植樹されました。1886年に植えられた古木は今も元気に残っていますが、ジンファンデルは様々な苦難を乗り越え現在に至った歴史があります。

1920年から1933年の禁酒法時代には700以上あったジンファンデルの生産者はわずか40に激減。残った生産者はいつかまたワインを造る日が来る時のためにと、礼拝の聖杯用のワイン酵母とは別に、ワイン専用の酵母を特別に残しながらジンファンデルの木と酵母を守り抜きます。さらにフォロキセラの病害が蔓延して、他の葡萄品種が病気にやられる中、ジンファンデルだけは砂質の土壌に植えられていたことで、病害を逃れることができ、今も150年以上の自根の古木が生き残っています。

アメリカ文化を守りたい。古樹で単一畑に特化したターリー

初来日したターリー・ワイン・セラーズの生産者、クリスティーナ・ターリーさんはこう語ります。「歴史が浅いといわれるアメリカですが、アメリカ文化のひとつがこのジンファンデルなのです。この文化を守るために、私たちは特に樹齢50年～100年以上の古木のジンファンデルに焦点をあてて栽培・醸造しています。古木のジンファンデルは、地中に根を深く張り実が引き締まるため、ワインになるとよりミネラル感が豊かで深みが増し濃潤な味わいになります。さらにその土地のテロワールをも豊かに表現するようになります。一時期は古木のジンファンデルを引き抜いて、ワインにすると高価になるカベルネ・ソーヴィニヨンに植えかえる生産者もありました。しかし私たちは絶対にそうせずに、古木の葡萄を守り、ジンファンデルの歴史を次世代に繋いでいくことを使命と感じています。現在は逆に、20年後、30年後の未来のために、新たにジンファンデルを植えて畑を増やしています」

1984年にカリフォルニアで初のオーガニック認証を取得。パーカーポイントは98点

ターリー・ワイン・セラーズは1993年にナパヴァレーのセントヘレナにラリー・ターリー氏によって設立。彼はフロッグス・リープの設立者で、アメリカで最も尊敬されておりワインの女神とも称されるヘレン・ターリーの弟。現在は2015年に「ワインメーカー・オブ・イヤー」に選出されたティーガン・パサラックと娘たち4姉妹と力を合わせて、葡萄栽培・醸造・マーケティングを行っています。ターリーはジンファンデルにおけるトップ生産者であり、これまでのパーカーポイントは、ジンファンデルでは最高の98点を獲得しています。

さらにターリーでは、「健康なジンファンデルの葡萄を守り続けるために、長年オーガニック栽培に努め、ナパヴァレーでは最も早く、1984年にオーガニック推進団体“California Certified Organic Farmers(CCOF)”認証を取得しました。現在も全ての自社畑で農薬、化学肥料、除草剤を一切使用しないオーガニック栽培を実践。酵母も畑に自生した天然酵母を使っています」といいます。

ラベルはシンプルだが4つ星が輝き、瓶底にも星を刻印

現在カリフォルニアの35か所にジンファンデルの畑を持ち、その多くは古木でアマドール・カウンティ、パソロブレス、ローダイ、ハウエルマウンテンなどに単一畑のシングルヴィンヤードを所有。株仕立ての黒々とした太い幹が大地に並ぶ様子は雄大で幻想的で、それを守り抜いてきた人々の情念をも感じる風景です。

さて最後にコラムのテーマである、ラベルやボトルについてもクリスティーナさんに伺ってみました。ラベルにはTURLEYのYの文字から葡萄の蔓が伸びて頭文字のTを描いています。そしてボトルは、首がすっと長く伸び下部はどっしりとした独特の形状。「このボトルはブルゴーニュ型でもボルドー型でもなく、唯一ジンファンデル型のボトルとしてこのような形状にしました。どこの国にもないジンファンデルならではのボトルです」。

さらにキャップシールには4つの星が描かれています。「これは私たち4姉妹が力を合わせてブドウ栽培・醸造を行っている印。実はボトルの底の中央にもう一つ星を刻印しています。これは若くして亡くなった弟を忘れないために記しています。ボトルの中でも心の中でも、5人で力を合わせてジンファンデルのワインを造っていこうと思っています」

ジンファンデルに合わせるお料理は？

ターリーのジンファンデルは、大変濃厚で果実味豊か、プラムやプルーン、バニラの香りを備え、ボリュームのある味わいですが、タンニンはとてもなめらかで口当たりが柔らかなワインです。ジンファンデルの魅力であるほのかな甘みやスパイス感も感じらえるため、バーベキューソースを添えた牛肉のステーキ、肉の赤ワイン煮、トマトのパスタ、また、意外にも甘辛いたれを使った鳥の照り焼き、山椒をかけた焼き鳥、とんかつ、ラムステーキにもよく合います。最近はワインの持ち込みができる高級焼き鳥店やステーキハウスもあるので、そうしたお店でいただくのもいいですね。

渋谷 東急フードショーのおすすめ

ターリー・ジュヴナイル・ジンファンデル2020
(750ml) 5,500円

生産地：アメリカ・カリフォリニア
葡萄品種：ジンファンデル100％
味わい：赤・辛口・ミディアムボディ・果実味豊かでややスパイシー
輸入元：リエゾン

ターリーのワインの多くは単一畑からの古木の葡萄ですが、このワインはカリフォルニアの樹齢６年から26年の若木で複数の畑の葡萄をブレンド。若木の畑は未来にジンファンデルを伝えるために開墾しました。酸がフレッシュでありながら複雑性もあり、赤い果実の香りにハーヴやリコリスなどの芳香も加わり、美しい果実感を備えます。2012年はワインスペクター誌で90点を獲得、トップ100ワインの第46位に選ばれました。

ターリー・エステート・ジンファンデル・ナパヴァレー2020
(750ml) 10,000円

生産地：アメリカ・カリフォルニア・ナパヴァレー
葡萄品種：ジンファンデル100％
味わい：赤・辛口・フルボディ　濃淳でしっかり、かつ丸みあり

エステート・ジンファンデルは、ナパヴァレーの古木のジンファンデルに敬意を表して、古木と2006に植樹した６エーカーの葡萄をブレンドしたもの。濃潤でパワフルながら洗練されたエレガントな風味も備え、ブラックチェリーやリコリスの芳香、熟したラズベリーの果実感も魅力的。すべての葡萄畑はオーガニック認証を得ています。