黄金色に輝くシャンパーニュはビィディナミ葡萄を使用  ルイ・ロデレール・クリスタル 2015

2023.12

CDやDVDにジャケ買い、という言葉があるように、ワインもラベルが奇麗なものや、興味深いデザインのものには、つい手がのびてしまいます。実際にワインのラベルは、ワインの歴史やエピソードを伝えるものが多く、そこにはさまざまな情報や物語が隠れています。ラベルのささやきを聞きながらワインを飲めば、いっそう美味しく楽しく感じられることでしょう。

今月の渋谷 東急フードショーワイン売り場では、大切な人と過ごすクリスマスやお正月に向けて、アンリオとルイ・ロデレールのシャンパーニュ特集を行っています。いずれも職人気質的な芸術の手仕事ともいえる、丁寧な造りのシャンパーニュ・メゾン。今回はこのふたつのメゾンの物語についてご紹介しましょう。

透明の輝くガラス瓶は毒を盛られないため。そして水平のビン底の秘密は?

写真:1776年の創業の老舗メゾン。クリスタルは最高クラスのプレステージ・キュヴェ。

黄金色の美しいラベルに記された名前は、LOUIS ROEDERER CRISTAL CHAMPAGNE(ルイ・ロデレール・クリスタル・シャンパーニュ)。これは、ワインの輝く色彩と、ゴールドの華やかなラベルが魅力のロデレール社のプレステージュ・シャンパーニュです。

ただ、このシャンパーニュは他とは大きく異なる特徴があります。それはボトルが透明のガラス瓶になっていて、遮光されていないこと。さらに、瓶の底にくぼみがなく、まっすぐの水平になっていることです。それは何故なのでしょう?

このクリスタルシャンパーニュは、1876年にロシア皇帝のアレクサンドロ2世の依頼により造られました。通常シャンパーニュは、日光の影響を受けやすいためボトルの色を濃くして日射から守ります。しかし、政情が不安定で常に暗殺を恐れていたアレクサンドロ2世は、シャンパーニュに毒を盛られないように透明のガラス瓶にしてほしいと伝え、さらに、瓶の底に爆発物が隠されないように平らな形状にすることを要求したのでした。

ルイ・ロデレール 本物を愛する真のシャンパーニュ好きに選ばれる老舗メゾン

写真 :丹念に葡萄畑を観察して有機栽培を行う、栽培・醸造家のジャン・パティスト・レカイヨン氏。

ルイ・ロデレールは1776年設立の老舗シャンパーニュ・メゾン。華々しい広告を掲げて市場を席巻する大規模シャンパーニュ・ブランドのなかで、ルイ・ロデレールは「手仕事の芸術」と称される丁寧な造りを守り続ける稀有なメゾンです。

創立から2世紀に渡り、家族経営を一貫。そして大きな特徴は、数あるシャンパーニュ・メゾンの中でも、240haにも及ぶ自社畑を所有していることです。必要とする葡萄の75~85%を丁寧な栽培で自社畑をまかなっています。これは、他の多くのメゾンが多くの買い付け葡萄を使っていることからみても非常に例外的です。自社畑であることは、葡萄の栽培段階から徹底した手入れができるということであり、高品質な葡萄を手に入れるには重要な条件となります。

最大級のオーガニック栽培率を誇る。クリスタルにはビオディナミの葡萄も使用

写真:土を固くしないためトラクターは使わず馬で耕作して、土を柔らかくする。

さらにルイ・ロデレールは、シャンパーニュにおける最大級のオーガニック生産者のひとつでもあります。シャンパーニュ地方は葡萄栽培においては最北の地であることから、もともと冷涼な気候で病害も多い地域。そのため農薬や化学肥料を使用しないオーガニック栽培を行うことは非常に大きなリスクといわれます。しかしルイ・ロデレールでは広大な自社畑の約半分をオーガニックで栽培。このプレステージ・キュヴェのクリスタルにおいては、2012年よりオーガニック栽培のなかでも特に厳しい条件で栽培されるビオディナミの葡萄を使用しています。

アンリオ グラン・クリュとプルミエ・クリュの格付け畑率の高さを誇る

写真:プルミエ・クリュとグラン・クリュの格付け葡萄を多用。老舗メゾンならではの上品なラベルも魅力。

ではもう一つのシャンパーニュ・メゾン、アンリオについてもご紹介しましょう。アンリオは1808年にアポリーヌ・アンリオ夫人がメゾン・アンリオを設立。以来今日に至るまで200年以上ワイン造りを行ってきた老舗のシャンパーニュ・メゾンです。特徴のひとつは、アンリオが使用する葡萄の大半はグラン・クリュとプルミエ・クリュの格付け畑で、格付け率の高さを誇ります。

シャルドネ率の高さから生まれるエレガンス

写真:シャルドネの畑が多く使用率も高いため、キレのあるエレガントなスタイルが特徴。

さらにもう一つの特徴は、シャルドネ比率の高さがあげられます。シャンパーニュ地方でのシャルドネ使用の平均が30%であるのに対し、アンリオでは50~60%シャルドネを使用。通常シャンパーニュに使用する葡萄品種は、シャルドネ、ピノ・ノワール、ピノ・ムニエですが、シャルドネの使用比率が多くなると透明感、フレッシュでキレのある酸、ミネラル感が豊かになりエレガントなスタイルとなります。このシャルドネはシュイイの畑などの最高品質のグラン・クリュ畑の葡萄を使用しています。

アンリオもルイ・ロデレールもともに最低瓶熟成期間15カ月を超える3~4年の長期熟瓶熟成を行っていることも美味しさの理由。グラン・クリュの原酒は非常に力強く酸味も豊かなため、オリと触れ合った状態で長い期間熟成することで、複雑で深みと気品あるシャンパーニュを生み出しています。

渋谷 東急フードショーでは12月、冒頭のクリスタルの他にも素晴らしいルイ・ロデレールとアンリオのシャンパーニュを多彩に取り揃えてお客様をお待ちしております。このふたつのメゾンでは8,000円~10,000円前後のスタンダードクラスでも傑出したシャンパーニュを生み出しています。プロも愛するふたつのメゾン・シャンパーニュを揃えて、クリスマス、お正月をお迎えくださいね。

渋谷 東急フードショーおすすめ

[写真 左から]
ルイ・ロデレール クリスタル 2015
(750ml) 55,000円
生産地:フランス・シャンパーニュ地方
葡萄品種:シャルドネ41%、ピノ・ノワール33%、ピノ・ムニエ26%
タイプ:白・泡・ドライで芳醇
クリスタルは1876年ロシア皇帝ニコライ2世の依頼により誕生したプレステージュ・シャンパーニュ。以来150年に渡って葡萄の出来が素晴らしかった年のみ生み出されてきました。ヴィンテージ2015年は最高の天候条件を生かして、かつてないほど土壌の素晴らしさを表現した年。ルイ・ロデレールでは「白亜質の土壌に導かれた、大胆なフレッシュさのあるワイン」とコメント。メゾンが実践するビオディナミ栽培の葡萄を使用。自然に優しく持続可能な栽培により、黄金色の輝きある色調、力強くもピュアな味わい、フレッシュでミネラル豊かな格調高さを醸し出しています。

ルイ・ロデレール コレクション244
(750ml) 9,900円
生産地:フランス・シャンパーニュ地方
葡萄品種:シャルドネ41%、ピノ・ノワール33%、ピノ・ムニエ26%
タイプ:白・泡・エレガントなボディで辛口
コレクション244は、2019年ヴィンテージの葡萄をベースに造られた一本。桃や洋ナシなどの完熟した果実の香りに、244の特徴である柑橘の風味とフレッシュなミネラル感が魅力で、スモーキーなニュアンスが豊かな余韻を伝えています。安定した定番の商品であり、ご自宅用にはもちろん、特別な贈り物にもピッタリです。


アンリオ ブリュット・スーヴェラン
(750ml) 8,360円
生産地:フランス・シャンパーニュ地方
葡萄品種:シャルドネ52%、ピノ・ノワール33%、ピノ・ムニエ15%
タイプ:白・泡・柑橘系のバランスの良い辛口
アンリオは高品質なシャルドネを生かしたフレッシュでエレガントな味わいの長熟タイプのシャンパーニュが特徴。”至高”を意味するスーヴェランはスタンダードクラスのシャンパーニュですが、非常に贅沢な造りです。コート・デ・ブランのシャルドネと、モンターニュ・ド・ランスのピノ・ノワールを中心に、所有する全てのクリュをブレンド。3年以上の瓶熟成を行っています。柑橘果実や白い花、ブリオッシュのようなアロマと長く調和のとれた余韻が美しい。

アンリオ ブラン・ド・ブラン
(750ml) 11,000円
生産地:フランス・シャンパーニュ地方
葡萄品種:シャルドネ100%
タイプ:白・泡・フレッシュでキレのある辛口
シャルドネを得意とするアンリオの真骨頂ともいえるシャルドネ100%のシャンパーニュ。 グラン・クリュとプルミエ・クリュの葡萄をブレンド。リザーヴ比率は約30~50%。瓶熟成約4年以上。非常にきめ細やかな泡立ち。白い花やレモン、ブリオッシュなどの複雑なアロマ。 滑らかな口当たりと気品溢れる風味。ミネラルの風味とまろやかなコクが備わったエレガントなブラン・ド・ブランです。

教えてくれた人

伴 良美(ばん・よしみ) ライター&ワインエキスパート。映画、食、旅を中心に執筆。ワインと食の情報誌「ヴィノテーク」、北海道新聞、岐阜新聞などの取材記者としても活躍。世界の銘醸地や映画の舞台を訪ねた連載コラムに、フジサンケイビジネスアイ「世界銘酒紀行」「名画の舞台」のほか「男と女 名画とお酒」「シネマの名言」などがある。

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