CDやDVDにジャケ買い、という言葉があるように、ワインもラベルが奇麗なものや、興味深いデザインのものには、つい手がのびてしまいます。実際にワインのラベルは、ワインの歴史やエピソードを伝えるものが多く、そこにはさまざまな情報や物語が隠れています。ラベルのささやきを聞きながらワインを飲めば、いっそう美味しく楽しく感じられることでしょう。
ブルゴーニュにて天才醸造家と謳われ、高い才能と実力を認められていたオリヴィエ・ルリッシュ。その彼が愛する故郷南フランスで造るドメーヌ・デ・ザコルのワインが話題を集めています。渋谷 東急フードショーのワイン売り場でも、カベルネ・ソーヴィニヨンに加え、6月よりグルナッシュの葡萄品種の傑出したワインもアイテムに加わりました。
もくじ
01. 粘土石灰質の優良な地層がラベルに 友人と和やかに飲んで欲しいという願いが 02. ブルゴーニュのトップワイナリーで13年勤務 愛する故郷で妻とワイン造りを 03. 南仏らしい開放的な息吹や果実感とエレガンスが融合した味わい 04. フランス国内や世界の星付きレストランで採用 赤身のお肉、夏はバーベキューにも 05. 渋谷 東急フードショーのおすすめ粘土石灰質の優良な地層がラベルに 友人と和やかに飲んで欲しいという願いが
ラベル下に小さく記されたワイナリー名はドメーヌ・ド・ザコル。ザコルとはオック語で”テラス”を意味し、その名のようにワインは南フランスのなだらかな丘で造られています。筆で曲線を描いたようなシンプルなラベルですが、パッと目を惹きますね。この曲線はこの地域の地層を意味し、赤い丸はその畑の位置を示しています。
またワイン名のル・カブ・デ・ザコリットのカブは、ギリシア語で”カベルネ・ソーヴィニヨン”の葡萄品種のこと。そしてザコリットは”友達”を意味しています。つまりこのワインは100%カベルネ・ソーヴィニヨンで造られ、友人や家族と和やかに飲んでほしいという願いが込められています。
ブルゴーニュのトップワイナリーで13年勤務 愛する故郷で妻とワイン造りを
このワインの生産者オリヴィエ・ルリッシュさんは、ブルゴーニュのニュイサンジョルジュのドメーヌ・ラルロで13年間勤務し、天才醸造家と謳われた人物。しかし彼は、2011年に「自分のワイナリーを愛する故郷で設立したい」と切望。リサーチを重ねて南仏ローヌのサンマルセル・アルデッシュに畑を購入。妻とともに念願のワイン造りを始めたのです。
彼が探しぬいた畑はラベルのように、地層が長く横に続く粘土石灰実土壌。18haの畑ですが、葡萄はほとんどが樹齢50年以上の古木。ゆえに小粒で凝縮感のある秀逸な実をつける環境に恵まれていました。オリヴィエさんは2012年春から完全にオーガニック農法を行い、エコセールの認証を取得。翌年からはビオディナミ農法を行い、2014年にはAB認証とデメテール認証を取得し、徹底的に土壌や自然に配慮した葡萄栽培を行っています。
南仏らしい開放的な息吹や果実感とエレガンスが融合した味わい
葡萄の畑比率はグルナッシュ12ha、カリニャン2ha、カベルネ・ソーブィニヨン3ha、近年はピノ・ノワールも育てています。葡萄は収穫時に房選り、粒選りをしっかり行って選果。その際葡萄がつぶれないように、小さな20kg入りの箱に入れて収穫します。また葡萄のフレッシュな酸を保つために、保冷トラックを使用して醸造所まで運搬するという徹底ぶり。ワインに最大限の奥深さを出すために、30~100%全房を使用し、樽はブルゴーニュのラルロの古樽を使っています。
そのため、このワインもフィネスが豊かでエレガントなスタイル。南仏らしい開放的な息吹や力強い果実味とともに、ブルゴーニュでワイン造りを行ってきたオリヴィエさんらしいエレガンスとシルキーなタッチが同居する繊細で優雅な味わいです。
フランス国内や世界の星付きレストランで採用 赤身のお肉、夏はバーベキューにも
今はフランス国内の星付きレストランは元より、世界中の高級レストランでオンリストされる有名なワインとなりました。コストパフォーマンスは抜群。夏に飲む赤ワインとしてもお勧めで、フレッシュな果実感も感じられます。夏野菜を使ったラタトゥーユやトマトソースのパスタのほか、子羊、赤身肉のステーキ、バーベキューなどのお肉料理にもピッタリです。
渋谷 東急フードショーのおすすめ
【写真 左】
ル・カブ・デ・ザコリット 2020
(750ml) 3,300円
生産者:ドメーヌ・デ・ザコル
生産地:フランス・ローヌ・アルディッシュ
葡萄品種:カベルネ・ソーヴィニヨン100%
タイプ:赤・ミディアムボディ・柔らかくて酸がフレッシュ
カブとは、ギリシア語でカベルネ・ソーヴィニヨンを意味する同品種100%のワイン。カベルネ・ソーヴィニヨンはボルドーの葡萄品種ですが、このワインの醸造家が活躍したブルゴーニュワインを感じさせる、エレガントで柔らかく、フルーティで心地よいワインです。南東向きの石灰質土壌由来の、しなやかさと温かみ、フレッシュンな酸とミネラル感も備えています。子羊、赤身肉、トマトを使った煮込み料理、またスパイシーな中華やエスニック料理、バーベキューなど、お料理との汎用性の高さも魅力のワインです。
【写真 右】
ル・デ・ランデヴー・デ・ザコリット 2021
(750ml) 3,300円
生産者:ドメーヌ・デ・ザコル
生産地:フランス・ローヌ・アルディッシュ
葡萄品種:グルナッシュ100%
タイプ:赤・ミディアムボディ・深みがあって繊細
有機栽培とビオディナミで栽培する、樹齢50年の古木のグルナッシュ100%ワイン。果実味の熟度もしっかりと感じられますが、非常にバランスよく酸も美しくフィネスのある造りです。柔らかくしなやかな果実味と輪郭のくっきりとした洗練されたスタイル。夏野菜をたっぷり使ったラタトゥーユ、ハッシュドビーフ、牛肉のステーキ、牛肉の赤ワイン煮などにもよく合います。夏は軽く冷やして飲んでもいいですね。
教えてくれた人
伴 良美(ばん・よしみ) ライター&ワインエキスパート。映画、食、旅を中心に執筆。ワインと食の情報誌「ヴィノテーク」、北海道新聞、岐阜新聞などの取材記者としても活躍。世界の銘醸地や映画の舞台を訪ねた連載コラムに、フジサンケイビジネスアイ「世界銘酒紀行」「名画の舞台」のほか「男と女 名画とお酒」「シネマの名言」などがある。