伴 良美のラベルが語るワイン物語
フランス ジュラ地方ヴァン・ジョーヌ 黄金色に輝く色調と濃潤さ グラン シャトー・シャロン アンボーモン2015
CDやDVDにジャケ買い、という言葉があるように、ワインもラベルが奇麗なものや、興味深いデザインのものには、つい手がのびてしまいます。実際にワインのラベルは、ワインの歴史やエピソードを伝えるものが多く、そこにはさまざまな情報や物語が隠れています。ラベルのささやきを聞きながらワインを飲めば、いっそう美味しく楽しく感じられることでしょう。
今月はフランスの隠れた銘醸地、ジュラ地方の希少なヴァン・ジョーヌのワインをご紹介しましょう。ヴァン・ジョーヌとは日本語で黄色いワインと訳すように、まさに黄金色に近い濃い黄色の色調で、独特な力強い味わいと伝統の製法で造られたワイン。季節のチーズ、いま旬のモンドールとも好相性。さらにワイン愛好家へのバレンタインやホワイトデーの贈り物にもおすすめのワインです。
もくじ
01. 特級畑のシャトー・シャロンから生まれ葡萄品種はサヴァニャン 02. スイスアルプス国境のジュラ山脈麓 原生林や湖が残る緑豊かな地方 03. ワインの表面に産膜酵母を張り木樽で5年間熟成 04. 独特の芳香と力強く深みある味わい 季節限定のモンドールや熟成コンテチーズと 05. 渋谷 東急フードショーのおすすめ特級畑のシャトー・シャロンから生まれ葡萄品種はサヴァニャン
ワインの名前は「グラン シャトー・シャロン」。ヴァン・ジョーヌのワインの中でも特に優れたグランクリュ(=特級畑)のシャトー・シャロンから造られたワインで、その畑名がボトルの中心にはっきりと記されています。さらにグランとはジュラ地方の中でも歴史ある優れたヴァン・ジョーヌの造り手名です。
ラベルにはさりげなく、このワインに使われているサヴァニャンの葡萄のイラストが。さらに目を惹くのが、ボトルの形状。よく見るブルゴーニュやボルドーとは異なる、四角い肩の張った620mlのボトルがこのヴァン・ジョーヌのワインの特徴です。グラスに注ぐと黄金色に輝く美しい色調です。
スイスアルプス国境のジュラ山脈麓 原生林や湖が残る緑豊かな地方
さて先ほどから伝えているジュラ地方とは具体的にはフランスのどの地域にあるのかでしょうか。さらに独特の芳香をもつヴァン・ジョーヌのワインはどのように伝統製法で造られるのでしょうか。
ジュラ地方はフランスのブルゴーニュから、約100㎞西に行ったスイス国境のアルプス山脈の西側のジュラ山脈麓にあります。原生林を表す「ジュラ」という言葉の通り、森や山や、湖や渓谷などの手つかずの自然が残された緑豊かな美しい地方です。
フランス最小のワイン産地ですが、約2000年前からこの地方に隠遁した修道士によってワインは造られてきました。
他の生産地とは葡萄品種も異なり、白のサヴァニャン、赤のプールサールなどが固有品種です。スティルの赤や白ワインも造られていますが、最も歴史があって有名なのがこの黄色いワイン、ヴァン・ジョーヌ。サヴァニャンから造られた白ワインを木樽に詰めて、特殊な製法で造られます。
ワインの表面に産膜酵母を張り木樽で5年間熟成
ふつうのワインは、酸化させないためにできるだけ、樽いっぱいにワインを満たして熟成させます。しかし、ヴァン・ジョーヌを造るときの樽詰めは7割にして上部をあえて空気にふれるようにして酸化させます。そうするとワインの表面にフロールという膜が造られ(=産膜ともいわれます)ます。
その膜の下でただただ5年間そのまま寝かせておいて酸化熟成させ、果実感とうまみ成分を融合させるのです。熟成を終えたワインは黄金色に輝き、アーモンドやヘーゼルナッツ、キャラメル、シナモンや蜂蜜、スパイスのような香りが複雑に絡み合い独特なフレーバーが生まれます。ちょうどスペインのシェリーにも似た香りがあります。
独特の芳香と力強く深みある味わい 季節限定のモンドールや熟成コンテチーズと
写真 右:コンテの24カ月熟成のチーズとも好相性
このヴァン・ジョーヌの中でも特級畑の葡萄から造られる最高級のワインが、今月おすすめのこのシャトー・シャロンです。洗練されたシェリーや高級紹興酒にも似た味わいがあるので、ワイン初心者にはすこし難しいワインかもしれません。しかし、よく熟成させたコンテチーズ、また11月から3月まで限定の濃厚な「モンドールチーズ」とは好相性。フランスでもこのふたつの組み合わせは有名です。
またワイン愛好家の中にはシャトー・シャロンのヴァン・ジョーンだけはまだ飲んだことがないとおっしゃる方もおられます。このワインの造り手グランはジュラでは最高級の造り手ですので、そうした愛好方へのバレンタインやホワイントデーへの贈り物にもぴったりな希少なワインです。
渋谷 東急フードショーのおすすめ
グラン・シャトーシャロン アンボーモン 2015
(620ml) 11,000円
生産者:グラン
生産地:フランス・ジュラ地方
葡萄品種:サヴァニャン
味わい:辛口・色調は黄色・濃厚で深みあり
フランスとスイスの国境のジュラ山脈のみで造られる黄色のワインヴァン・ジョーン。恐竜映画「ジュラシックパーク」の舞台ともなった地域で、恐竜が生きていたジュラ紀の地層が広がり葡萄栽培にも好影響を与えています。グランはこの地域では名門の造り手。さらにシャトー・シャロンというグランクリュ畑から生まれた最高峰のヴァン・ジョーンです。アーモンドやクルミのような香ばしい香り、キャラメルや蜂蜜のような甘い香りも現れます。熟成コンテや季節のモンドールと一緒に。一日で飲み切ってしまわず、抜栓後1週間ぐらい楽しめます。
教えてくれた人

伴 良美(ばん・よしみ) ライター&ワインエキスパート。映画、食、旅を中心に執筆。ワインと食の情報誌「ヴィノテーク」、北海道新聞、岐阜新聞などの取材記者としても活躍。世界の銘醸地や映画の舞台を訪ねた連載コラムに、フジサンケイビジネスアイ「世界銘酒紀行」「名画の舞台」のほか「男と女 名画とお酒」「シネマの名言」などがある。