CDやDVDにジャケ買い、という言葉があるように、ワインもラベルが奇麗なものや、興味深いデザインのものには、つい手がのびてしまいます。実際にワインのラベルは、ワインの歴史やエピソードを伝えるものが多く、そこにはさまざまな情報や物語が隠れています。ラベルのささやきを聞きながらワインを飲めば、いっそう美味しく楽しく感じられることでしょう。
香しく繊細で気品高く、高貴品種ともいわれるピノ・ノワール。この葡萄の一番の銘醸地が皆さんも知るブルゴーニュです。その人気ゆえに近年価格が非常に高騰しているブルゴーニュワインですが、今、ブルゴーニュに負けないピノ・ノワールのワインが生まれている産地がドイツです。今回はドイツで造る秀逸なピノ・ノワールのワインをご紹介。地球温暖化の影響によって将来的にはドイツのピノ・ノワールがブルゴーニュのようになるだろうといわれるほど高質でコストパフォーマンスに優れたワインです。
もくじ
01. ピノ・ノワールはドイツ語ではシュペートブルグンダー そのNo1がシュテファン・マイヤー 02. 自然豊かな中央ドイツのロートで有機栽培 繊細で気品あるピノ・ノワールに情熱をかたむけて 03. ミネラル豊かな粘土石灰質土壌、夏でも過熟にならない冷涼な気候 フランスのクローンを採用することが重要 04. ネクストブルゴーニュはドイツに注目 05. 渋谷 東急フードショーおすすめピノ・ノワールはドイツ語ではシュペートブルグンダー そのNo1がシュテファン・マイヤー
空間を支配するような真っ白いラベル。そこには赤い点のような紋章が一つ小さく描かれています。左下には赤文字でシュテファン・マイヤーの生産者名。その上には黒字で「シュペートブルグンダー」の文字が記されています。
シュペートブルグンダーとはフランスのピノ・ノワールのこと。ピノ・ノワールはドイツ名ではシュペートブルグンダーといわれ同一品種です。シュテファン・マイヤーはこの・ピノ・ノワールを造る、ドイツでは一番の生産者。2018年にはワイン評価誌セレクションでは世界一のピノ・ノワール生産者「2018Pinot of the year」を獲得しているのです。ほかにもヴィノム誌、ゴーミヨー誌、アイヘルマン誌でも高く評価され、現在ピノ・ノワールにおいて大注目の生産者です。
自然豊かな中央ドイツのロートで有機栽培 繊細で気品あるピノ・ノワールに情熱をかたむけて
シュテファン・マイヤーはマイヤー家が1700年代から、ドイツ中央部のロートで葡萄栽培を行ってきました。ロートは皇帝や国王が訪れる風光明媚な避暑地。湖が美しいフランケン湖水地方にも位置しています。1954年にはシュテファンさんの祖父がワイナリーを設立。2011年にシュテファンさんが後を継いで、醸造者や畑の改革を重ねて世界的に有名なワイナリーとなりました。
2019年からは無農薬、化学肥料を一切使わないオーガニック栽培を実践。2021年には認証も取得しています。シュテファンさんは「私はピノ・ノワールという葡萄品種に多大なる情熱を注いでいます。ピノ・ノワールはとてもエキサイティングな品種。なぜならこの葡萄から造られるワインはエレガントさと繊細さ、気品を備え、赤いフルーツのアロマが絶妙なバランスで融合しています。このような特性は他の赤ワイン用葡萄には見られません」と語ります。
ミネラル豊かな粘土石灰質土壌、夏でも過熟にならない冷涼な気候 フランスのクローンを採用することが重要
シュファンさんは、ピノ・ノワールの栽培にはブルゴーニュと同じ粘土石灰質土壌であること、また、夏は冷涼で葡萄が過熟にならない気候であること、そして、ブルゴーニュと同じフランスのクローンを使用することが、が重要と考え、その条件の土地を自社畑の中でも選りすぐりました。
苗木も果粒が小さく果皮が厚く果肉が水っぽくないディジョンクローンを選抜。繊細なピノ・ノワールに合うように、農薬や化学肥料を一切使わず、天然酵母で発酵することも行いました。「そうすることで、より濃厚で複雑で繊細なワインができあがりました」とシュテファンサンは伝えます。
ネクストブルゴーニュはドイツに注目
現在、地球温暖化や土地の高騰で非常に価格が高くなっているブルゴーニュワイン。しかし、それでもピノ・ノワールの葡萄が持つ繊細さが好まれ、世界の愛好家はネクストブルゴーニュのワインを探しています。
ピノ・ノワールのワインは、アメリカのオレゴン、ソノマ、ニュージーランド、なども注目を集めていますが、実は最もブルゴーニュの気品と繊細さに近くそれをしのぐ美味しさを秘めたワインがあるのが、ドイツともいわれています。
年明けのお祝いに、新年会に、記念日にもふさわしいドイツのピノ・ノワールを1月は販売しておりますので、ぜひお試しくださいね。
渋谷 東急フードショーおすすめ
[写真 左]
シュテファン・マイヤー AUS RHODT ピノ・ノワール トロッケン 2020
(750ml) 3,600円
生産地:ドイツ・ロート
葡萄品種:ピノ・ノワール100%
タイプ:赤・辛口・ミディアムボディ エレガントな果実感とフレッシュな酸
ロート村で造る村名ワイン。ローゼンカルテン、シュロスベルク、クロスタープファドの粘土石灰質土壌の優れた畑の葡萄をブレンド。フランスのクローンを使用しているため、果実味がエレガントで気品あり酸も美しい。フレンチオークで12~14カ月熟成。ラズベリーやカシスの果実の香り、凝縮感もあり余韻が非常に美しい。
[写真 右]
シュテファン・マイヤー シングルヴィンヤード ピノ・ノワール エーデンコーベナー シュヴァルツァー レッテン トロッケン 2019
(750ml) 5,500円
生産地:ドイツ・ロート
葡萄品種:ピノ・ノワール100%
タイプ:赤・辛口・フルボディ 凝縮感があって濃厚
シュヴァイツァーレッテンの特級畑の葡萄のみから造る単一畑ワイン。粘土質のマールが混じる土壌のため、夏は土に水を貯えることができるため葡萄の生育に好適で凝縮感のある葡萄が生まれる。フランスのクローンを使用。バリックで12~14カ月熟成。チェリー、カシス、スパイスの香りがあり、力強いワインであるがタンニンはなめらかで余韻もきれい。地中海料理やブフ・ブルギニヨンなどの煮込み料理ともよく合う。
教えてくれた人
伴 良美(ばん・よしみ) ライター&ワインエキスパート。映画、食、旅を中心に執筆。ワインと食の情報誌「ヴィノテーク」、北海道新聞、岐阜新聞などの取材記者としても活躍。世界の銘醸地や映画の舞台を訪ねた連載コラムに、フジサンケイビジネスアイ「世界銘酒紀行」「名画の舞台」のほか「男と女 名画とお酒」「シネマの名言」などがある。