フードストーリー
FARM to BARでショコラの原点を突き詰める〈ル ショコラ ドゥ アッシュ〉
ペルーにカカオの自社農園を取得し、「FARM to BAR」のコンセプトを体現する〈ル ショコラ ドゥ アッシュ〉。同ブランドを手掛ける、日本を代表するパティシエでありショコラティエの 辻󠄀口博啓さんに、バレンタインのおすすめ商品について伺いました。
2023.02.01
―まず〈ル ショコラ ドゥ アッシュ〉について、ブランドの特徴などを改めて教えてください。
辻口さん:世界中のカカオの香りや味わいを日本の素材や文化と融合させてショコラに込め、日本から世界に発信しているショコラトリーです。2022年にはペルーにカカオの自社農園を取得し、農園の管理からカカオ豆の栽培や発酵、乾燥、焙煎、そしてショコラ作りに至るまでを一貫する、日本発の「farm="" to="" bar」のブランドとしてショコラの原点の部分を突き詰めています。
辻口さん:実は以前は、世界的なショコラコンクールの「BEAN to BAR」部門でアワードを受賞しているフランス人にオリジナルショコラを作ってもらっていたんです。でも、だんだん私も自分で作りたくなってきて、頼み込んで彼の工場を見せてもらい、どこにポイントを置けばおいしいカカオができるのかを学びました。そして行き着いたのが「FARM to BAR」というコンセプトです。
―豆からではなく、農園から。「BEAN to BAR」のさらに先を行くコンセプトですね。では今年のバレンタインのおすすめ商品を教えてください!
辻口さん:こちらの「Single origin “Inti”(シングルオリジン“インティ”)」と「Single origin “Killa”(シングルオリジン“キリャ”)」です。
辻口さん:ケチュア語(ペルーの公用語のひとつ)で「Inti」は「太陽」、「Killa」は「月」を表す言葉で、それをパッケージでも表現しました。どちらも中には産地の異なるカカオを使った6種類のボンボンショコラが入っています。 このボンボンショコラのベースになっているのは、先ほどお話しした「FARM to BAR」を体現すべく開発し、2022年6月に発売されたタブレットショコラです。オリジナルのロースターなどを用いて完成させたそのタブレットを使ってガナッシュを作り、ボンボンショコラにしました。
―なるほど。それぞれのBOXの内容も教えてください。
辻口さん:まず「Single origin “Inti”(シングルオリジン“インティ”)」から。No.1はペルー産の「アマゾン ナティーボ」で、直訳すると「我が村の」といった意味を持つ昔からあるカカオです。No.2も同じくペルー産で、実が小さくて味が濃厚な「チュンチョ」という希少品種を使ったもの。No.3は「フィリピン」で、ちょっとスパイシーで土の香りがするような味わい。No.4の「タンザニア」はスパイスの中にフルーツがミックスされたような、No.5の「トリニダード・トバゴ」はピートのようなスモーキーな味わいです。そしてNo.6は「アマゾン ナティーボ」を使ったショコラ オ レという構成です。
―ショコラの中身はどうなっているんですか?
辻口さん:中身はガナッシュのみです。タブレットの味をシンプルに味わってほしいので、間にフルーツや木の実などは入れず、層にしたりもしていません。
―表面に少し模様が入っているだけで、見た目もすごくシンプルですね。
辻口さん:この模様がないと我々も見分けがつきません(笑)。でもなるべくシンプルにしたいから、派手な色とかは入れたくなくて。とにかく味にフォーカスしていますので。
―なるほど。では続いて「Single origin “Killa”(シングルオリジン“キリャ”)」をご紹介ください。
辻口さん:No.1はペルー産の「ブランコ」というホワイトカカオで、フレッシュミックスジュースのような味わいです。No.2の「ベネズエラ」は、柑橘を思わせるジューシーな味わい。No.3の「エクアドル」は花のような香りが特徴で、No.4の「マダガスカル」はドライフルーツのような香りで若干スパイシー。 No.5の「ベトナム」は柑橘を思わせる味わいの中にスパイスを感じます。そしてNo.6は個性的な「ベネズエラ」をあえて使ったショコラ オ レです。
―煙もあって、花もある。そんなに違うものなんですね。
辻口さん:全然違いますよ。個性が全く異なるので、ひと口にカカオ豆と言ってもこんなに味わいが違うんだということが、食べればよくわかると思います。
―おすすめの食べ方はありますか?
辻口さん:4分の1くらいをかじって、香りや個性を感じながら少しずつ味わってください。そしてできればひとつのフレーバーを食べ終えてから、次のフレーバーにいってほしいです。ひとつで完結して感じるものがあるので、そのカカオの持つ個性をしっかり堪能してから次へ。食べる順番もこのナンバーの順番通りに。最後は甘いもので終わるように計算されていますので。
―あとはもう、何も考えずにシンプルにカカオの魅力を味わうことですね。
辻口さん:はい。とにかく、めちゃくちゃおいしいですよ、自分で言うのも何ですが(笑)。でもそれくらい自信があります。この味わいに行き着いて、自分自身が取り組んできたことが間違いじゃなかったんだと確信しました。
―ところで、なぜ名前を「太陽」と「月」にされたんですか?。
辻口さん:太陽の恵み、夜の寒暖。太陽と月の導きによって、このカカオも、この地球も、そして我々も生かされています。原点に立ち返るということを表現する意味でも、そういう名前を付けました。
―では最後に、お客様へのメッセージをお願いします!
辻口さん:自ら農園を作って、カカオにここまでこだわっているブランドは他に無いと思います。私が考える、最高においしいショコラというものをやっと見つけたので、それをぜひ味わっていただきたいですね。「カカオが違うと味もここまで違う」「カカオはフルーツだ」ということを、このボンボンショコラを通して実感していただければと思います。