かわいいから子どもがすすんで使ってくれる! 子どもの暑さ対…
● ファッション
夫、6歳の息子、4歳・2歳の娘たちと暮らす、渋谷に住む30代ママ。メガバンク→経済メディア→フリーの文筆家。たまに翻訳も。癒やしと家事育児が楽になるツールやサービスを全力で探し続ける日々。趣味はサウナ。
「危険な状態です。お腹の赤ちゃんも、お母さんも」
医師のことばが、分娩室に響いた。陣痛と胃腸炎に苦しむ私がうめき声を出すと、看護師が腕に点滴の針を入れた。2020年12月。感染症対策で、分娩室では誰もがマスクを着けなくてはならなかった。まさに三人目を出産中の私も例外ではなかった。
無機質な機械音が響く中、私は医師の肩越しに助産師さんを見て、言った。
「水、買ってきてくれませんか?財布はあそこのバッグの中です。」助産師さんは驚いて顔を上げた。彼女が小走りに分娩室を横切るのを確認して、私は目を閉じ、笑みをうかべた。「言えるようになったな、私も」と。
飲み物を頼むことくらい、人によっては何てことはないのかもしれない。しかし私は昔から、人に頼ることが大の苦手だった。長女だからか、金融機関での営業が長いからか、とにかく独力で成し遂げることを美学と捉えていた。しかし、六年半の間に経験した三度の出産と育児が、この愚かな思い込みをぶち壊してくれた。
第一子である長男が一歳半の頃、まだ赤ちゃんらしさが抜けないうちは、我が子に何でもしてあげたいと思っていた。その母性は悪くない。ただ私はすべて自分でやろうとしてしまった。食事もおやつも手作り。毎日お出かけ。生活リズムを守るため、お昼寝や就寝は時間厳守。うまくいくはずがない。解決策を得ようと、育児系のSNSや育児書を読みあさっていた。
試行錯誤しているうちに、第二子である長女が産まれた。キャリアへの焦りもあり、長女を早々に保育園に預け、職場復帰をした。間をおかず転職もした。夫が激務の職場に異動になったタイミングも重なり、心身ともに限界が来ていた。そんなある日、長女を抱っこ紐に、長男はベビーカーに乗せて横断歩道を渡っていた。ふと腰に激痛が走り、その場に崩れ落ちた。歩くことも、立ち上がることもできない。気づけば信号は赤に変わっていた。不運にも交通量の多い、大通りだった。車がクラクションを鳴らし、子どもたちは泣きわめき、阿鼻叫喚という言葉がぴったりだった。最悪の事態が頭をよぎった。
「大丈夫ですか?」
作業服を着たおじさんが声をかけてきた。気づくと、私の周りに工事現場で見かけるコーンがいくつも置かれていた。近くの現場からやって来た作業員さんたちが交通整理をして、タクシーをつかまえてくれた。
整形外科では「ぎっくり腰ですね」と言われた。
半年が過ぎて三人目を妊娠し、私はある決意をした。ぎっくり腰の時に人に助けてもらうありがたさを実感し、妊娠中こそ自分の体を労わるためにも、「徹底的に人に頼ろう。ひとりで頑張るのは、もうやめよう」と。
ベビーシッターを週七で頼み、長男と長女の世話を手伝ってもらった。そして家事代行を週二で頼み、掃除をお願いした。バスや電車では「ベビーカーを運ぶのを手伝ってくれませんか?」と他人に声をかけるようになった。
そして三人目のお産で、看護師さんに水を要求するに至る。冒頭で医師から宣告された通り、かなりの難産となったが、幸い無事に産むことができた。人に頼ることの重要さを、妊娠と出産と育児を通じて教えてもらった。
私のように一人で無理をしてしまうママたちに伝えたい。「自分を大切にしてね。つらい時はひとりで頑張らず、誰かを頼ってね」と。出世しなくても、貯金がなくても、フォロワー数が少なくても、「私なんて」と思う必要はない。誰もが尊重され幸福になる権利を持っている。
ママだって、子どもと同じように生きているだけで尊いし、幸せになる権利がある。私をはじめとして、あなたを助けたいと思っている人はたくさんいる。それは、あなたが生まれる前から、今も、ずっと変わらない。
“はたらく” でつながるコミュニティ tannely
ママを “はたらく” でつなぐtannely(タネリー)は、地域のつながりを “はたらく” で育むコミュニティ。”はたらく”を通じて、ママと社会がつながるタネをまく。子育て世代が、地域に貢献する機会をつくる。ママのため、街のため、社会のために必要なコミュニティとなる。それが私たちの使命です。
NPO法人tannely(タネリー)