2025.05.02 NEW

新しくなった「育休制度」 男性も育児にもっと参加しやすくなる時代へ

● 子育て

「育児・介護休業法」が改正され、2025年4月1日からこれまで以上に育児休業が取りやすく、経済的な支援も手厚くなりました。
とくに注目されているのが、男性の育休取得を後押しする新制度。育児と仕事の両立がしやすくなるだけでなく、家庭内の役割分担にも変化が訪れそうです。
この記事では、改正のポイントをわかりやすく解説するとともに、実際に育休を取得したパパたちのリアルな声もご紹介します。

そもそも育児・介護休業法って?

育児・介護休業法は、子育てや家族の介護と仕事を無理なく両立できるようにサポートするための法律です。正式名称は「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」。少し長いですが、目的はシンプル。
ライフステージに応じて、誰もが安心して働き続けられる社会をつくるためのしくみです。
たとえば、育児や介護を理由に会社を辞めざるを得なかった人が、安心して復職できるように。あるいは、今働いている人が退職せずにすむように。そんな「働き続けられる環境づくり」を企業に促し、誰もが安心してキャリアを築ける社会の実現を目指しています。

育児・介護休業法の改正ポイントは?

今回の改正では、育児と仕事を両立しやすくするための仕組みが大きく前進しました。なかでも、子どもの行事や病気への対応、残業免除の柔軟化、男性の育休取得促進など、日々の子育てに密接に関わる内容が強化されています。

✔︎子どもの看護休暇がとりやすく

→ 男性も子どものイベント参加や対応に関わりやすくなる支援。
これまで「子どもがけがや病気のとき」のときにしか取れなかった看護休暇が、

・入園式・卒園式・入学式への参加
・インフルエンザなど感染症による学級閉鎖

などにも使えるように。対象年齢も「小学校入学前」から「小学3年生修了まで」に拡大されました。

✔︎残業免除の対象が拡大

→ パパの働き方にも柔軟性が生まれるしくみ
育児中の従業員が「残業を免除してほしい」と申し出られる子どもの年齢が、これまでの「3歳未満」から「小学校入学前」までに引き上げられました。

✔︎男性の育休取得状況をもっと見える化へ

これまで取得状況の公表義務があったのは従業員1,000人以上の大企業のみでしたが、これからは300人超の中堅企業も対象に。制度として〝あるだけ〟ではなく、実際に取得されているかが見えるしくみに変わりつつあります。

育児・介護休業法の改正で、子育ての現場はどう変わる?

制度が変わることで、“働きながら子育てする”という日常にも、少しずつ新しい風が吹きはじめています。
これまで母親に偏りがちだった育児負担も、家族全体で自然に分け合えるように。パパが行事や急な呼び出しに対応することで、夫婦間の関係性や会話にも変化が生まれることでしょう。

また、男性の育休取得がより身近になれば、子どもにとっても「お父さんが家にいる時間」が特別ではなくなっていくかもしれません。
それは、子どもの安心感や家族の信頼関係にもつながる、大きな価値のある変化です。

◆施行から間もないけれど……ママたちが感じた〝ちょっとした変化〟

法改正が施行されたばかりの今、大きな変化が目に見えているわけではありません。それでも、日々子育てと向き合うママたちからは、少しずつ「空気が変わってきたかも」という声が聞こえてきます。

「子どもの担任の男性の先生が、ご自身のお子さんの入学式のために、新学期早々お休みを取っていました。少し前なら考えられなかったこと。でも今は、そういう姿がとても自然に感じられて…いい変化の兆しだと思います」
(T.Mさん/4歳の女の子と小学2年生の男の子のママ)

「会社の同僚の旦那さんが〝育休を取る予定〟って普通に話していて、あ、そんな時代になってきたんだなって感じました」
(R.Kさん/6歳と小学3年生の男の子のママ)

「保育園の送りをパパがしている家庭が、明らかに増えた気がします。今まで朝はほとんどママばかりだったので、ちょっとしたことだけどうれしいです」
(K.Uさん/5歳と小学2年生の女の子のママ)

男性の育児参加は「当たり前」になる?

改正の背景には、「育児=女性の仕事」という固定観念をなくし、男性の育児参加を「当たり前」にしようという社会の流れがあります。
厚生労働省によると、2023年度の男性の育休取得率は30%を超えたものの、女性(84%)との開きは大きく、取得期間も依然として短い傾向があります。
実際、男性の約4割(37.7%)が「2週間未満」で育休を終えており、「名ばかり育休」との声も少なくありません。
政府は、2025年までに男性の育休取得率を50%に引き上げる目標を掲げています。果たしてそれは実現するのでしょうか?

◆育休を「取った人」「取れなかった人」それぞれの声

「自分が育休を取得した2年半前と比べて、今は確実に世の中の空気が変わってきていると感じます。今回の法改正で、中堅企業にも育休が広がり、育休を取ることがめずらしいことではなくなるといいなと思います」
(3歳の男の子のパパ/IT企業勤務)

「5年前、思い切って育休を取りましたが、正直なところ〝男が育休?〟という反応も少なくありませんでした。社内で前例がなかったので、制度はあっても使い方がわからなくて。でも、あの時間があったからこそ、今も育児を〝自分ごと〟として関われていると思います。今回の改正で、あのときよりもずっと育休が取りやすくなるのは、本当にいい流れだと感じています」
(4歳の男の子と小学2年生の男の子のパパ/メーカー勤務)

「本当は取りたかったけれど、当時の部署の雰囲気では『取ります』と言い出せませんでした。ちょうど繁忙期だったこともあり、周囲に負担をかけるのが気が引けて、結局あきらめました。男性の育休取得には、職場の理解と、休んでもまわる体制があってこそ。法改正だけでは解決しない問題なのでは?」
(4歳の男の子のパパ/建設業勤務)

「〝長く休むこと=キャリアに響く〟というイメージが強くて、育休の取得には踏み出せませんでした。ちょうど昇進を控えていた時期でもあり、家庭より仕事を優先してしまった部分は正直あります。政府が掲げている『2025年までに男性の育休取得率を50%に引き上げる』という目標についても、当時の僕のように、キャリアへの不安でためらう人はまだ多いのではないでしょうか。育休を取りやすい空気や周囲の理解はもちろん大切ですが、それだけでなく、実際に〝キャリアに影響が出ない制度〟として根づいていくことが、これからの大きな課題だと感じています」
(6歳の女の子のパパ/金融業勤務)

育休を取った人も、取れなかった人も感じていたのは「制度はあっても、職場の空気やキャリアへの不安が壁になる」という現実。育休が“当たり前に取れる”社会へ。制度と職場、両方の変化がカギです。

育児・介護休業法の改正で、ママの働き方はこう変わる?

これまで育児の中心を担ってきたママたちにとっても、今回の法改正は大きな転機となりそうです。「一人で抱えなくていいと思えた」「子どもの体調不良への不安が減った」など、日々の中で小さな変化を感じはじめたママたちのリアルな声をご紹介します。

「『育休取ったパパがいてね』なんて話が、ママ友との間でも普通に出るようになってきて。夫婦で子育てをする流れが、ようやく現実になってきたんだなと感じます」
(K.Uさん/5歳と小学2年生の女の子のママ)

「夫が〝今度は、育休を取ってみようかな〟と言い出したときは驚きましたが、その一言で次の妊娠も前向きに考えられるようになりました。〝自分だけが背負わなくていいんだ〟と思えたことで、仕事への向き合い方にも、いい意味で力が抜けました」
(R.Tさん/1歳の男の子のママ)

「5月から育休を終えて職場復帰します。子どもが保育園に通いはじめると、感染症などで体調を崩しやすいと聞いていたので、どう対応すればいいか悩んでいました。でも今回の改正で、子どもの看護休暇が取りやすくなったと知り、対応の選択肢が増えたことに少しホッとしています」
(Y.Sさん/1歳の女の子のママ)

「保育園のお迎えを夫が担当する日が増えそうです。『今日は残業ナシで帰ります』って言える環境があるからこそできること。私自身も、仕事にもっと集中できる時間が増えそうです」
(T.Mさん/4歳の女の子と小学2年生の男の子のママ)



育児・介護休業法の改正によって、すぐに劇的な変化が現れるわけではありません。でも、ママやパパたちの声からは、「少しずつ空気が変わってきたかも」「これからに期待したい」という前向きな気配が感じられます。
制度があるだけでなく、実際に“使いやすく、続けやすい”環境が広がっていくことを、私たち一人ひとりが後押ししていけたら————。
育児も仕事も、どちらも大切にできる未来が、すぐそこまで来ています。

文/羽田朋美(Neem Tree