有機栽培由来のフレッシュな酸と豊かな果実感 夏に楽しむキアンティ・クラッシコ テヌータ・ディ・ビッビアーノ キアンティ・クラッシコ2020
2023.08
CDやDVDにジャケ買い、という言葉があるように、ワインもラベルが奇麗なものや、興味深いデザインのものには、つい手がのびてしまいます。実際にワインのラベルは、ワインの歴史やエピソードを伝えるものが多く、そこにはさまざまな情報や物語が隠れています。ラベルのささやきを聞きながらワインを飲めば、いっそう美味しく楽しく感じられることでしょう。
イタリアワインの代名詞ともいえ皆さんもよく知るキアンティ・クラッシコ。このワインは生誕300年もの長い歴史を持ち、近年ではオーガニック栽培やSDGsへの取り組み 、3階級の格付け、3億ドルをかけての畑の改革など、産地はますます発展し新しい改革がなされています。今月は美しい果実味と酸によって夏でも楽しめるキアンティ・クラッシコの赤ワインをご紹介。売り場で販売するのは、すべてオーガニック栽培のキアンティ・クラッシコですので、葡萄の伸びやかで清冽な美味しさをお楽しみいただけます。
もくじ
01. オーガニック栽培の認証マーク。厳しい規定をクリアした黒い雄鶏のマーク 02. 面積の65%が森。近年オーガニック栽培が55%と増加 03. 自然への敬意を払いワイン造りを行う。1865年創業のビッビアーノ 04. 厳格な審査を経て認定される黒い雄鶏のマーク。その由来は? 05. 2014年から最高格付けグランセレツィオーネが誕生。魚にも合うキアンティ・クラッシコオーガニック栽培の認証マーク。厳しい規定をクリアした黒い雄鶏のマーク
ラベルに描かれているワイン名は、ビッビアーノ・キアンティ・クラッシコ2020。黒いラベルに金の文字、中央には創業者のマルツィ家の紋章がシンプルに描かれ、とても上品なラベルです。そしてネックの部分や裏ラベルも見てみましょう。そこにはキアンティ・クラッシコに必ずつけられる黒い雄鶏のマークが。そしてオーガニック栽培であることを知らせる緑のユーロリーフの認証マークが記されています。
面積の65%が森。近年オーガニック栽培が55%と増加
写真 右:来日したキアンティ・クラッシコ協会のシルビアさん
キアンティ・クラッシコの銘醸地はイタリアのトスカーナ州にあり、フィレンツェからシエナにかけての7万haの丘陵地帯に広がっています。生産地は細長く、北から南までは47㎞、西から東までは21㎞。フィレンツェからシエナまでドライブすると約1時間の距離にあります。
今年6月に来日したキアンティ・クラッシコ協会のシルビア・フィオレンティーニさんは「キアンティ・クラッシコ地域は面積の65%が森。葡萄畑は森に囲まれて点在しています。森には野鳥や益虫や多彩な動植物が生育し、生物多様性が存在し、それによって畑は守られ、質の高い葡萄栽培が可能です。豊かな自然環境に溶け込んで葡萄栽培が行われることから、現在栽培面積の55%でオーガニック栽培を実践しています」と話しておりました。
自然への敬意を払いワイン造りを行う。1865年創業のビッビアーノ
このビッビアーノのワインも農薬や化学肥料を一切使っていない、オーガニック栽培の葡萄を使用。ワインはユーロリーフとICEAの有機認証をもらっています。ワイナリーは1865年創業。150年以上の歴史をもち5代続く家族経営のワイナリー。伝説の醸造家故ジュリオ・ガンベッリ氏が醸造を担当していた時代から、傑出したワインを生み出してきました。5代目当主トンマーゾ・マルツィ氏は「畑への愛情、自然への敬意を払いながら、エレガントで繊細なワインを造ることが、私たちのシンプルな哲学です」と話しています。
厳格な審査を経て認定される黒い雄鶏のマーク。その由来は?
さてこのビッビアーノのワインにも記されている「黒い雄鶏(ガッロ・ネーロ)」のマークは、キアンティ・クラッシコの厳しい規定をクリアしたワインにのみ与えられます。この雄鶏のマークが使われるようになったのはある言い伝えに由来しています。
それはシエナとフィレンツェが互いに領土争いを繰り返していた時代のこと。戦争に疲れ切った互いの軍は、ある提案をします。それは、日の出を告げる「雄鶏の鳴き声」とともに互いの国を出発し、出会ったった所を国境にしようとするもの。その際シエナは白い雄鶏を選んだのに対して、フィレンツァは黒い雄鶏を選びます。その際、黒い雄鶏にはわざと餌を与えず、お腹を空かせたまま夜を過ごさせたのです。
そして結果はどうなったのか?黒い雄鶏は空腹のために陽が昇るずっと前に、時を告げ出してしまいます。それによって、かなり早く出発したフィレンツェ軍がシエナ軍と出会ったのは、シエナ側にほど近いキアンティのフォントルートリ。こうしてフィレンツェ軍は自分たちの領土を広げることができ、同時にキアンティ・クラッシコの葡萄畑も手に入れることができたのです。
2014年から最高格付けグランセレツィオーネが誕生。魚にも合うキアンティ・クラッシコ
さて、キアンティ・クラッシコのワインは現在、下から、アンナータ、リゼルヴァ、グランセレツィオーネの三階級に格付けしています。キアンティ・クラッシコ協会では、この20~30年で70%の葡萄畑が改植され、約3億ユーロを投資して畑の改革を行ってきました。このビッビアーノのワインは一番下の階級のアンナータですが、改植した葡萄の木が樹齢20年を迎え、アンナータにおいてもちょうどいま、素晴らしいワインが出てくる時期になっているといいます。
フレッシュな酸と流れるように美しい果実味があり、夏はちょっと冷やしていただきとより爽やかな味わいが楽しめます。また、キアンティ・クラッシコは、酸とミネラル感が豊かなため、赤ワインであっても魚介料理によく合います。エビとトマトのクリームソース、魚介のトマトパスタ、魚介のピザ、ラタトゥーユ、などと楽しんでみてくださいね。
(写真提供:キアンティ・クラッシコ協会)
渋谷 東急フードショーのおすすめ
テヌータ・ディ・ビッビアーノ・キアンティ・クラッシコ2020
(750ml) 2,750円
生産地:イタリア・トスカーナ州・キアンティ・クラッシコDOCG
葡萄品種:サンジョヴェーゼ100%
タイプ:赤・辛口・ミディアム~フルボディ
2000年代から有機栽培を始め、2013年にはオーガニック 認証(ICEA)を取得。日当たりのよい温暖な気候、粘土質の恵まれた土壌のもと、妥協を許さず、流行に流されることなく、確固たるスタイルを築きキアンティ・クラッシコの原点を守り続ける生産者です。12か月セメントタンクで熟成。ワインは輝きのある深紅色、桑の実やプルーンの芳香と奥深さのある飲み心地。程よい酸味がフレッシュで生き生きとした印象を感じさせます。
フォンテルートリ キアンティ・クラッシコ2019
(750ml) 3,630円
生産地:イタリア・トスカーナ州 キアンティ・クラッコDOCG
葡萄品種:サンジョヴェーゼ100%
タイプ:赤・辛口・ミディアムボディ~フルボディ
フォンテルートリはトリビッキエーリの通算獲得数はトスカーナ州№1。1900年代前半から同じラベルで代々造られている、歴史を感じさせる一本です。最上級のサンジョヴェーゼの葡萄由来のエレガントな酸とシルキーなタンニンが絶妙に融合。なめらかなテクスチャーで気品がありながら凝縮感も感じられる秀逸なキアンティ・クラッシコです。
カステッロ・ディ・ヴェラッツァーノ キアンティ・クラッシコBOI 2018
(750ml) 4,400円
生産地:イタリア・トスカーナ州 キアンティ・クラッコDOCG
葡萄品種:サンジョヴェーゼ100%
タイプ:赤・辛口・フルボディ
キアンティ地方の有名なパッシニャーノ大修道院所蔵の古文書に、現在の土地に1170年から葡萄園として存在していたと記述されているほど、重要な歴史を有する生産者。正統的かつ上質なワイン造りにより、確固たる地位と名声を築いているトップワイナリーのひとつ。このワインは完全有機栽培の葡萄から生まれています。深いガーネットの色調、なめらかな口当たり、果実味は豊かに口内に広がり、心地よいタンニンが余韻に残ります。
教えてくれた人
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伴 良美(ばん・よしみ) ライター&ワインエキスパート。映画、食、旅を中心に執筆。ワインと食の情報誌「ヴィノテーク」、北海道新聞、岐阜新聞などの取材記者としても活躍。世界の銘醸地や映画の舞台を訪ねた連載コラムに、フジサンケイビジネスアイ「世界銘酒紀行」「名画の舞台」のほか「男と女 名画とお酒」「シネマの名言」などがある。
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