2021.02.26|2022.08.19 更新

「5歳の中間反抗期」親も子も乗り切るためのヒント

Column

「5歳の中間反抗期」という言葉をご存じでしょうか。年長さんになる5歳から小学校低学年の頃にあらわれる反抗期のことです。
2歳前後にあらわれる「イヤイヤ期」「魔の3歳児」「4歳の壁」を乗り越えてきたのに、“まだあるの〜?”と、ため息まじりの声が聞こえてきそうです。しかも、5歳になると言葉が達者になって力が強くなる分、反抗もパワフル。その分、これまでのイヤイヤとは比べものにならないくらいツライ……という声も。
そこで、「5歳の中間反抗期」の特徴的な行動や5歳児との向き合い方を探ります。

5歳児の発育発達の特徴

園では年長さんと呼ばれ、お兄さん・お姉さん扱いされるようになる5歳児。言語能力や記憶力が発達してくるので、自分の気持ちを相手にしっかりと伝えられるようになり、家族やお友だちとの会話も楽しくなってくる時期です。
また、基本的な生活習慣に加え、箸を正しく使ってこぼさず食べたり、簡単なお手伝いをしたり、自分や周りの人たちの状況に応じて、臨機応変な対応ができるようになってきます。できることが格段に増え、なんでも自分で考え、自分でやりたいという気持ちが芽生える時期です。
一方で、この「自分自身で考えて行動したい」という気持ちが満たされないとき、「5歳の中間反抗期」と呼ばれる反抗的な態度になって現れることがあります。

先輩ママ・パパに聞く!「5歳の中間反抗期」の特徴

「5歳の中間反抗期」の特徴的な行動について、経験した先輩ママ・パパに聞きました。

「それまでとてもかわいがっていた2歳下の弟に、突然いじわるなことを言うようになりました。1日1回は弟を泣かせる毎日。叱ってもきかず、しっかりと向き合って言葉掛けをしても響いている様子もなく、本当に困りました」
(C.Yさん/4歳と6歳の男の子のママ)

「“早くごはんを食べて”“寝る支度をして”と、ちょっとした指示をしただけで、倍返しで口答えしてくる娘。“私には私のペースがあるからママに言われたくない!”“これからやろうと思っていたのに、そうやって言われるとやる気がなくなるんだけど!”などと生意気なことを言ってくるので、毎日イライラしていました」
(Y.Yさん/7歳の女の子のママ)

「朝起きたときから不機嫌MAX、毎食の立ち歩き、ごはんをなかなか食べない(ひどいと1時間くらいかかる)など、イヤイヤ期の2歳児さんですか?というくらいの行動が毎日続き、本当に疲れました」
(A.Mさん/3歳の女の子と7歳の男の子のママ)

「食卓に好みの食べ物が並んでいないと、“もう食べない!”とふてくされ、お片付けを促すと面倒くさがってやらない。お風呂の時間だと伝えると、“もっとYouTubeを見ていたい”と暴れるなど。年長さんになったのに年齢が逆戻りしたかのような態度が目立ち、本当に大変でした。
園にも相談しましたが、園では模範園児級にいい子と聞き、驚愕でした。息子の対応疲れで金曜日にはヘトヘトに。できるのにやらないことがわかっている分、私自身のいらだちもひどかったです」
(Y.Rさん/2歳の女の子と6歳の男の子のママ)

「お風呂や片付けなど基本的な生活習慣だけでなく、園の行事まで面倒くさがっていました。いつも気だるそうで、しまいには“早く大学生になってバイトしたい”と言い出す始末(笑)。自分が男兄弟で育ったこともあり、女の子ってすごいな……とびっくり。でも、妻からは“うちの子はだいぶ特殊”と言われました」
(R.Iさん/8歳の女の子のパパ) 学研に聞く

先輩ママ&パパ発!こうやって「5歳の中間反抗期」を乗り越えました!

5歳児のお困り行動に先輩ママやパパは、どう乗り越えたのでしょうか。5歳児の「自分ひとりでやってみたい」という気持ちに向き合うことがカギのようです。

ふたりだけの時間を意識的につくるようにした
「弟へのいじわるが止まらない息子のことを保育園の先生に相談したところ、自立したい気持ちと、甘えたい気持ちの間で心が大きく揺れているのかもしれないというお話が。そこで、弟にいじわるしたときだけ“お兄ちゃんでしょ”と叱るのをやめました。
また、息子とふたりだけでおでかけする時間を持つようにしました。すると少しずつ落ち着き、弟にもやさしく接することができるようになりました」
(C.Yさん/4歳と6歳の男の子のママ)

お手紙交換が効果テキメンだった!
「同じ女の子を持つ先輩ママから、言葉のコミュニケーションが難しいときは文章にするといいというアドバイスをもらい、家庭内文通をすることに。娘はすっかりハマり、1日に2通も3通も手紙をくれる日もありました。娘を褒める出来事があれば手紙にも書き、娘からもらう手紙がいかにうれしいかも毎回書きました。
娘も“ままだいすき”など、言葉では言わない思いを書いてくれて、心が通じ合う感覚が戻りました。手紙を書くことで、娘自身が“自分ひとりでやっている”という感覚を味わい、満たされたのがよかったのかもしれません」
(Y.Yさん/7歳の女の子のママ)

お手伝いをしてもらうようにした
「息子の機嫌が悪くなりがちな食事の時間に箸や小皿を並べるというお手伝いをつくりました。最初は面倒くさがっていた息子も、自分がしたことでみんなが喜んだり褒めてくれたりすることがうれしかったようで、率先して手伝うように。
その後も少しずつお手伝いを増やしていくと、自分から“次は何する?”と聞いてくるようになりました。できることがいっぱい増えたことを認めてもらいたかったんだなと感じました」
(A .Mさん/3歳の女の子と7歳の男の子のママ)

息子に「何がしたい?」を聞くようにした
「日常的に反抗的な態度が続いていましたが、そのたびに、“あなたは何がしたいの?”“何か思い通りにならないことがあるから、ギャーッて言うんだよね?”と、息子の本当にしたいことや本心を聞くようにしていました。最初は“何もしたくなーい!”と言っていましたが、そのうちにポツリポツリと、“ぼくは○○が食べたかったんだ”“本当は○○に行きたかったんだ”などと、不満の原因を話すように。
そこで、休みの日のおでかけは息子に意見を聞くことにしました。自分の意見が尊重され、思いがかなう。これが息子にはうれしかったようで、反抗的な態度は少しずつなくなっていきました。いつまでも子ども扱いするのではなく、ひとりの人間として言葉を交わす。この重要性を強く感じる出来事でした。それと同時にYouTubeを見せる時間を大幅に減らしました。これも効果的だったと思っています」
(Y.Rさん/2歳の女の子と6歳の男の子のママ)

お姉さん扱いするようにした
「保育園の行事を面倒くさがる娘。まだ保育園児なのだから、もう少し子どもらしくあってほしいと思う気持ちもありましたが、おませさんなのだと捉え、小学校低学年の子に接するようなイメージで、娘と会話するようにしました。
すると、面倒くさい理由を話してくれるように。娘も、しっかり自分の話を聞いてくれる存在がいることが心強かったのかもしれません。卒園式の演奏会では、それまでの、行事になると気だるそうな娘の姿はどこにもなく、一生懸命にカスタネットをたたく真剣なまなざしに、涙が止まりませんでした」
(R.Iさん/8歳の女の子のパパ)

命令ではなく依頼を心がけて

今回お話を伺った先輩ママ・パパが中間反抗期の子どもへの接し方で気をつけたこととして、5人中3人が「命令するのではなく、“○○してくれたらうれしいな”と、依頼する形で指示を伝える」ということを心がけていたとお話されていました。

「命令してもちっとも心に響かないので、あるときから“お母さんはごはん食べて欲しいな。だって○○に元気で大きくなってもらいたいから”というように伝えるようにしたところ、集中して食事に向かう時間が増えました。5歳児は相手に共感する力を持っているので、“お母さんはこう思っている。だからこうしてほしい”と、お願いごととして伝えるとより効果的だと多います」
(A .Mさん/3歳の女の子と7歳の男の子のママ)

子どもの行動を心配するママやパパへ

「家でこんなに反抗的な態度をとるなんて、園での生活や習い事でのお友だち関係は大丈夫?」と心配されるママやパパも多いのでは。保育士の中川美織先生は、こんなお話を聞かせてくれました。

「この頃のお子さんはある程度の社会性を身につけているので、外と家での姿が違うことは多々あります。おうちでは手が付けられないほど泣いたり、わがままを言ったり、時に家族に対して暴力的であったりと心配な姿があっても、集団生活では、年下のお友だちのお世話をしてくれたり、先生の仕事をすすんで手伝ってくれたりと、好ましい行動が多くみられることも。心配であれば、先生やほかの大人に普段の様子を聞いてみるとよいかもしれません。素敵な行動があることを耳にしたときは、ぜひ、言葉にしてお子さんを褒めてあげてほしいなと思います。中間反抗期の中にあっても、お子さんはやっぱりママやパパのことが本当に大好きです。その時は褒め言葉を素直に受け取ることができなかったとしても、自分のことをしっかり見てくれているんだ、と知ることで信頼関係も深まっていくと思いますし、自己肯定感の高まりにも繋がっていくと思います」

中川先生が園で見てきた5歳児さんたちは、どんなお子さんなのでしょうか。「5歳児クラスの年長さんは、園では本当に頼もしくて楽しい存在です。年少さんと手をつないでお散歩に行ってくれたり、給食後の掃除を手伝ってくれたり、小さいお友だちが困っていると自分で気付いて、手助けしてくれます。そして、想像力豊かで遊びの天才!もちろん、不安定な時期のある子もいますが、「家での姿がすべてではない」ことをママやパパに知ってもらえたら、もっといいなと感じています。

実は、思春期真っただ中の子どものいる我が家もいまだにそうなんです。家では人に言えないような態度をとっている時期でも、周囲から子どもたちの話を聞くと驚きます。『子育て大成功ですね!』とおっしゃっていただくこともありますが、心の中では『そんなわけない!』という気持ちでいっぱい。毎日本気のバトルです(笑)。でも、よく考えたら、私たち大人も『外』と『家』を無意識に使い分けていますよね。私の夫への態度なんて、本当に誰にも見せられません(笑)」



「口が達者になり、にくたらしさが倍増するゆえに、イライラが止まらない!」と話すママやパパも多い5歳の中間反抗期。先輩ママやパパの体験談からもわかるように、本人の意思を尊重したり、しっかりと会話したりするなど、ひとりの人間として接することが重要なポイントのようです。もちろん、甘えたいときにはしっかり甘えさせてあげながら、愛情を持って向き合うことが一番!根気強く続けていけば、必ず伝わります。
つらくなったら中川先生のメッセージをはじめ、この記事を思い出して、一緒に乗り越えていきましょう。

教えてくれた人

中川美織さん
一般社団法人関東多胎ネット理事・SwingRing~ふたご応援プロジェクト~理事・保育士
長男出産後、年子でふたごの女の子を出産。自身の壮絶なふたご育児をきっかけに「多胎児育児がしやすい社会にしたい」と地域で支援団体を立ち上げる。 関東多胎ネットでは行政・医療など、様々な機関と連携をし「多胎ファミリーが安心して楽しく育児できる社会の実現」をビジョンに掲げ活動中。 一般社団法人関東多胎ネットリンク
SwingRing~ふたご応援プロジェクト