2021.06.18

今の子どもは「壁」だらけ!? 「10歳の壁」を乗り越えるために今からしておきたいこと

Column

「魔の2歳児」「悪魔の3歳児」「4歳の壁」「5歳の中間反抗期」「小1の壁」と続き、落ち着いたと思いきや、突如現れる大きな障壁。それが、「10歳の壁」です。
一般的には子どもたちがぶつかる学習面での壁を指しますが、これまでは素直で、どんなことにも前向きに取り組んでいたのに、ネガティブな感情が生まれたり、自己評価や自尊心が著しく低下したり、友だちに対する攻撃性が現れたり……。
学習面の行き詰まり以外にもこうした心の変化が見られ、多くの親御さんが、最初は戸惑われることでしょう。
そこで、わが子の「10歳の壁」にどう向き合っていくか。その方法を探ります。

心も体も大きく成長する小学校4年生前後

10歳を迎える小学4年生前後は、心も体も、子どもから大人へと移り変わる大切な時期。成長過程で避けて通れない、さまざまな変化が起こる時期です。なかでも大きな変化は、物事を客観視する力が育ってくること。
今までは、自分の興味や好奇心、「好き」という思いを原動力に向かえていた行動に、「達成度」や「他者との比較」という物差しが入ってきます。このため、得意なことと苦手なことがはっきりし、苦手なことに関しては劣等感を持ちやすくなります。

先輩ママに聞く!「10歳の壁」の特徴的な行動とは?

友達との比較から、劣等感を抱きやすくなる10歳ごろ。この劣等感が意欲の低下やいらだち、不安につながるようです。実際にどのような特徴的な行動があるのでしょうか。「10歳の壁」を経験したママたちに聞きました。

●「あの子は勉強はできるけれど人の気持ちがわからない」「あの子は足は速いけれど球技は下手」など、友だちをジャッジすることが増えました。そのうちに友だちの短所ばかり話すので、「いいところを見た方がいいんじゃない?」と諭しましたが、一向に直らず。今思うと、「10歳の壁」だったのだと思います。
(K.Tさん/小2と小6の男の子のママ)

●もともと得意な方ではなかった算数ですが、さらに小4になると本人の苦手意識が強くなり、机に向かうのも嫌がるように……。学校の授業だけではついていけないので自宅学習を始めたのですが、やる気も集中力も続かず、教えるこちらも大きなストレスでした。後でわかったのは、友だちから「算数できなさすぎ!」「頭が悪い」などと言われたことが、自信と意欲を失わせていたようでした。本人だけでなく、周りの友だちからの比較やジャッジも入ってくる、なかなか大変な時期でした。
(T.Mさん/4歳と小1と小5の男の子のママ)

●「早く宿題をやっちゃいなさい」と言えば、「は?なんで?どうしてママに指図されなきゃいけないの?」。「お風呂入れば?」と言えば、「自分の時間は自分で決めるから。いちいち言ってこないで」と、口答えが増えました。同じ学年の子を持つママ友に相談すると、「おそらく嫉妬の感情から、気に入らない友だちを無視して学校から注意を受けた」「“どうせ○○だから”という発言が多くなった」など、わが子の言動に困っている姿が多く見受けられました。
(N.Iさん/小5の女の子のママ)

●自室にこもりがちになり、勝手に部屋に入ると怒ったり、描いているもの(おそらくマンガ)を隠したりするように……。会話の中で質問を投げかけても素っ気なく返すことが多くなり、コミュニケーションの取りづらさを感じるようになりました。何を考えているのか、何をしたらうれしいのか、楽しいのか。そういったこともわからなくなり、このまま息子は私から離れていってしまうのかとさみしさでいっぱいになりました。「10歳の壁」は、息子にとってというよりも、私にとって大きな壁でした。
(R.Tさん/小5の男の子とのママ)
学研に聞く

“こうやって「10歳の壁」を克服しました!“体験談

これまでは見受けられなかった子どもの言動に戸惑ったり、コミュニケーションに難しさを感じたり……。そんな「10歳の壁」に、先輩ママたちはどう向き合ったのでしょうか。

完璧な人などいないことを伝えた
友だちをジャッジしてばかりいる息子は、自分の正義を人に押し付けるようなところがありました。そこで、「あー、今日はごはん作りたくない!面倒くさいから、ピザとっちゃおうか!」とか、「今日は1日ゴロゴロするって決めたんだ〜」とソファでゴロゴロしてみたり、ぐうたらな自分を出すようにしました。
思えば私自身が完璧な母親になろうと肩肘張っていて、子どもたちにも正しい行いを強要したり、ルールで縛りつけたりしていた部分があったことを認識しました。
息子はしんどかったと思います。肩の力を抜き、よい意味で適当さを出すことで、私も息子もラクになり、自然体で過ごせるように。いつの間にか、息子の他者批判もなくなりました。
(K.Tさん/小2と小6の男の子のママ)

一番の応援者になった
自信を失ったり劣等感を持ったりすることは社会に出るための勉強だと前向きに捉え、この機会をうまく使おうと思いました。そして、「お母さんとお父さんは、君ががんばっていることを知っているよ」「やればちゃんとできるから大丈夫!」「必ずできるようになるよ!」と励まし続けた結果、少しずつ苦手な算数の勉強にも向き合えるようになりました。
(T.Mさん/4歳と小1と小5の男の子のママ)

指示出しを一切やめた
つい、「早く○○しなさい」と言ってしまっていましたが、それを一切やめました。最初は、指示出ししないことで宿題を忘れたり、遅刻しかけたりとヒヤヒヤしましたが、そのうちに自分できっちりやるように。あれこれ言われないことで娘の気持ちも落ち着いたようで、反抗的な態度もなくなりました。
いつまでも子ども扱いせず、ひとりの人間として認めること。子どもの力を信頼すること。「10歳の壁」には、これが最も重要なことだと感じました。
(N.Iさん/小5の女の子のママ)

息子の“世界”を理解した
息子の態度があまりに素っ気ないことを悲しむ私に、夫が「彼には彼の世界が広がっていて、今、彼はその中で学び、成長しているんだ」というようなことを言いました。その言葉に腹落ち。息子には、「何しているの?」ではなく、「好きなことがあるって最高だね!」「好きなことがあると、ほかのこともがんばれるよね」そんな言葉を掛けるようになりました。
以来、息子もうれしそうに、イラストを友だちに褒められたこと、今度描いたイラストをつなげてアニメーションにしたいことなどを話してくれるように。子どもの「好き」や「得意」を認めることの大切さを学びました。
(R.Tさん/小5の男の子とのママ)

「10歳の壁」に戸惑わないために子どもが小さいうちにしておきたいこと

先輩ママの体験談から、「苦手なことでもしっかりと励ます」「子ども扱いしない」「あれこれ指示出ししない」「好きなこと・得意なことを認める」ということが、「10歳の壁」克服にとって大切なポイントであることがわかりました。
それでは、お子さんが小さいうちから意識しておきたいことは?

1.子どものいいところ探しをする
勉強や運動は、客観的な評価をしやすいですが、その分、他者と比べて劣等感を持ちやすい事柄でもあります。
そこで、小さいうちから勉強や運動、「できる・できない」で測るような事柄だけではない、お子さんのいいところを認めてあげましょう。
たとえば、やさしさや思いやり、豊かな感性など。これを繰り返すことが、揺るぎない自己肯定感を育み、たとえ苦手なことに直面しても、あきらめずやり抜く力を持てるようになります。

2.個性を認める
幼い頃からきょうだいや友だちと比べられる環境下にいると、他者と比較して過剰に優越感や劣等感を持ちやすくなります。
みんな違う個性を持っていて、どの個性も尊いこと。そして、それぞれの個性を認めることの大切さを伝えていけるといいですね。

3.自分で考えさせる
子どものことを思い、ついお手本を示したり、レールを敷いてあげたりしがち。ところがそれを繰り返すと、10歳になっても親の指示通りでないと動けず、親は指示を出すけれど子は反発するという、悪循環に陥ってしまう場合も。
きちんと自分で決められる子に育てることが大切です。小さなうちからAとBを選ばせたり、なぜそれを選ぶのかきいたりと、自分で考える力を育みましょう。



「10歳の壁」とは、子どもが大人に近づくための大切な一歩であることがわかりました。子どもにとって重要な成長過程であり、あって当たり前のものととらえれば、また違う視点でお子さんの反抗や葛藤と向き合えるでしょう。
まずは、お子さんの気持ちになって、どのようなサポートが必要かを考えてみましょう。