2020.07.24|2022.05.27 更新

親も子ども自身も戸惑う「4歳の壁」を乗り切るためのポイント

Column

2歳前後のイヤイヤ期、5歳〜10歳頃に訪れる中間反抗期は子どもに見られる成長過程の一つで、昔から、多くの親が通ってきた道です。それに加え、最近は「4歳の壁」という言葉を耳にするようになりました。大人への反抗だけでなく、泣いたり怒ったりと情緒が不安定になり、暴れたりふてくされたり……。その繰り返しに、強いストレスを感じているママやパパは少なくありません。
そこで、「4歳の壁」とは一体どんなものなのか、4歳児とどう向き合っていけばよいのかを探ります。先輩ママや保育士さんのコメントもぜひ参考にしてくださいね。

4歳児の発育発達の特徴

園では「年中さん」と呼ばれる4歳児。知能と言語が著しく発達し、語彙が増え、日常的な会話はほとんどできるようになります。
想像力が豊かになり、自分で考えた空想のお話を聞かせてくれることもあるでしょう。
また、基本的な生活習慣が身につくのもこの頃で、自分で衣服を着るほか、歯磨きや排泄も自分でできるようになります。友だちとの遊びのなかで社会性を身につけ、ルールを決めて遊ぶことも増え、心も大きく成長します。理解力や認知能力がグッと向上する時期でもあります。
しかしながらその急激な成長ゆえに、子ども自身が戸惑い、不安を感じたり、その苛立ちをうまく言葉で伝えられないことが、「4歳の壁」と呼ばれる行動となって現れるようです。

先輩ママに聞く!「4歳の壁」の特徴的な行動とは?

「4歳の壁」には、「好ましくない言葉を使う」など、語彙が増える4歳児ならではの行動をはじめ、大きな心の葛藤が窺える「自分の感情がうまくコントロールできない」といった特徴的な行動があります。
ほかにも、どんな行動があるのでしょうか。「4歳の壁」を経験した先輩ママたちに聞いてみました。

●「今まではできていたのに、長男が4歳の頃、突然食事中に立ち歩くようになり、なかなかテーブルに向かえない日々が続きました。朝の忙しいときでも食事に1時間かかり、途方に暮れました」(M.Yさん/3歳の女の子と6歳の男の子のママ)

●「思い通りにならないと泣きわめくのに加え、保育園でお友だちを傷つけるような言葉を発したり、家でも暴力的な言葉を使うようことが増えました。その都度注意しましたが、なおるのに半年くらいかかりました」(C.Hさん/5歳の男の子のママ)

●「次男が4歳の頃、とにかく情緒が不安定で困りました。泣きわめいて攻撃的になったかと思えば急に甘えてきたり……。先の展開がまったく読めず、どう接していいかわからなくなりました」(T.Mさん/3歳と6歳と小4の男の子のママ)

●「わがままがひどくなったり、叱ったときに無視したりすることが増えました」(S.Sさん/5歳の女の子のママ)

●「指示されることを嫌がり、注意するとふてくされるようになりました」(H.Yさん/小2の女の子のママ)

●「オセロやトランプなど、ゲームに負けると泣きながら暴れ出し、しばらく手がつけられなくなりました。もしかしたら『4歳の壁』とは関係ないかもしれませんが、4歳当時、あまりにひどかったので……」(K.Tさん/小1と小5の男の子のママ)

“こうやって「4歳の壁」を克服しました!”体験談

「4歳の壁」が子どもにとって大切な成長過程の一つであり、親だけでなく子ども自身も不安や迷いを感じているということは理解しても、度重なる反抗的な行動や困った行動に嫌気がさしたり、子育てへの自信を持てなくなったりすることはあるでしょう。
先輩ママたちは、どのように我が子と向き合ったのでしょうか。

甘えを受け止めた
「三兄弟の真ん中ということもあり、これまでガマンしてきた部分もあったんだろうなと思い、とにかく甘えを受け止めることにしました。抱っこをせがんできたら抱っこし、食べさせてと言ったら食べさせ、家事の途中に話しかけてきたら手を止め、目を見て話を聞きました。すると心が満たされたのか、3カ月くらいで問題行動は落ち着きました」 (T.Mさん/3歳と6歳と小4の男の子のママ)

ポジティブな言葉かけを徹底した
「保育士さんから、『4歳の壁』からの脱却には、子どもが抱える不安感を取り除くことが効果的だと聞き、悪いことを指摘するネガティブな言葉の代わりに、ポジティブな言葉を選ぶようにしました。たとえば、“早くしなさい”を“あと5分で食べ終わろうね”など。ポジティブな言葉かけをしていくと、できないことよりもできることに目が向くようになり、自然と子どもを褒めることが増え、親である私たちの心にも余裕が生まれました」(M.Yさん/3歳の女の子と6歳の男の子のママ)

絵本の読み聞かせを習慣に
「夜寝る前に、膝の上にのせて絵本の読み聞かせをしました。絵本の読み聞かせは、密着することで子どもに安心感を与え、情緒が安定するうえに、親子のコミュニケーションに最適だと聞いたからです。実際に読み聞かせのときはとても穏やかになり、私自身も、物語に感情移入する子どもを見て、自然と笑顔に。いろいろあっても1日の最後が円満に締めくくられるのもよかったのか、反抗的な態度は次第になくなっていきました」(H.Yさん/小2の女の子のママ)

困った行動の動機に寄り添った
かんしゃくがあまりにもひどいと、「もう今は関わりたくない!」と思い、放っておきたくもなりますが、そんなときこそギュッと抱きしめ、背中をさすりながら声をかけるようにしました(抱っこを嫌がるときも多々ありましたが……)。背中をさすると気持ちが落ち着くようです。そうして泣きわめくのが止まったところで、“お兄ちゃんのおもちゃを使いたくて取ったら、取り返されちゃったんだね”などと、泣きわめくにいたった理由を代弁しながら、子どもの気持ちに寄り添うようにしました」(K.Tさん/小1と小5の男の子のママ)

園との協力で「4歳の壁」を乗り越えよう

「4歳の壁」を乗り越えるためには、親としての心構えや対応の仕方が重要ですが、子どもが日中の長い時間を過ごす保育園や幼稚園との連携も鍵になってきます。保育園や幼稚園の先生は4歳児の発達や反抗期にある幼児との接し方を熟知していますし、子どもたちの様子を毎日よく見ています。その子の個性や特性を知ったうえでの対応がわかっているので、先生に相談するのもいいでしょう。親身になって話を聞き、よいアドバイスをくれるはずです。

また、家庭や園での様子について密に報告し合い、それぞれの様子を知っておくことも大切です。たとえば登園前にかんしゃくを起こしたとわかれば、先生も対応を考えてくれるでしょうし、園でお友だちに優しくできたとわかれば、家でそのことを話題にし、よい行動を認めてあげることができます。

保育士の中川美織先生は、お子さんが泣いて登園してきた時には、「何かきっかけはありましたか?」とおうちの方に聞くそうです。「『朝、虫かごをひっくり返して、飼っていた虫が逃げてしまって……』『さっきそこで転んで……』と理由はさまざまですが、『そっかー、じゃあお散歩の時にまた一緒に虫探ししよう!』『痛かったね~!どこが痛い?先生に見せてくれる?』など、お子さんの気持ちに寄り添うことで、お子さんは“受け止めてもらえた”“わかってくれている”と、安心しておうちの方と離れることができたりします」

ほかにも、同じ4歳児を持つママに聞いてみるなど、ひとりで抱え込まないことが、解決の糸口になるかもしれません。



少し前まではかわいいだけだった我が子の反抗的な態度に、戸惑ったり、イライラしたりするおうちの方は少なくないでしょう。でも、心に不安や葛藤を抱える繊細な時期ゆえのことと理解し、お子さんと接することができるといいですね。一方で、大きな心で受け止めたいと思っても、なかなかできないこともあるでしょう。そんなときは、パートナーや園の先生などに話を聞いてもらいましょう。今は大変なことが多くても、4歳の壁を過ぎれば、お子さんは、ひとまわり成長した姿を見せてくれるはずです。


教えてくれた人

中川美織さん
一般社団法人関東多胎ネット理事・SwingRing~ふたご応援プロジェクト~理事・保育士
長男出産後、年子でふたごの女の子を出産。自身の壮絶なふたご育児をきっかけに「多胎児育児がしやすい社会にしたい」と地域で支援団体を立ち上げる。 関東多胎ネットでは行政・医療など、様々な機関と連携をし「多胎ファミリーが安心して楽しく育児できる社会の実現」をビジョンに掲げ活動中。 一般社団法人関東多胎ネットリンク
SwingRing~ふたご応援プロジェクト