2021.01.08|2023.05.19 更新

[助産師監修]助産師さん直伝!おっぱいマッサージの効果とやり方

Column

妊娠期や授乳中の多くの女性が、「おっぱいマッサージ」や「母乳マッサージ」という言葉を耳にしているでしょう。
「おっぱいマッサージ」は、「乳房マッサージ」「母乳マッサージ」とも呼ばれ、母乳育児が軌道に乗るまでに起こりがちなトラブルを予防・改善する効果もあります。
ところが、「具体的なやり方がわからない!」「どんな効果があるのか知らない!」という方も。そこで、助産師の原尻風葵さんに、おっぱいマッサージの効果や必要性、やるときの注意事項などについて教えていただきました。先輩ママのおっぱいマッサージ体験談も参考にしてください。

「おっぱいマッサージには、妊娠中に行うものと、出産後に行うものの2種類があります。
妊娠中に行うおっぱいマッサージは、主に乳首のマッサージで、赤ちゃんが産まれてからすぐにおっぱいを吸いやすくするためや、吸われる刺激に慣れておくという意味で、すすめられることが多いです。
出産後のおっぱいマッサージは、赤ちゃんが吸いやすいようにほぐしたり、乳房内に溜まった母乳を出やすくしたり、乳房が張ってつらいときに、そのつらさを和らげるために行うことが多いです」(助産師 原尻さん、以下同)

おっぱいマッサージって?

「おっぱいマッサージには、妊娠中に行うものと、出産後に行うものの2種類があります。
妊娠中に行うおっぱいマッサージは、主に乳首のマッサージで、赤ちゃんが産まれてからすぐにおっぱいを吸いやすくするためや、吸われる刺激に慣れておくという意味で、すすめられることが多いです。
出産後のおっぱいマッサージは、赤ちゃんが吸いやすいようにほぐしたり、乳房内に溜まった母乳を出やすくしたり、乳房が張ってつらいときに、そのつらさを和らげるために行うことが多いです」(助産師 原尻さん、以下同)

妊娠中のおっぱいマッサージは必要?

「妊娠中のおっぱいマッサージをやったから母乳育児がうまくいく、やらなかったからうまくいかない、というものではありません。
また、全員に必ず必要というものでもありません。ただし、産前に自分の乳頭の形状(陥没乳頭や扁平乳頭)の特徴に気づかず、ケアをしないまま出産を迎えてしまい、産後に思いがけず苦労することもあります。
そのため、妊娠中のおっぱいマッサージは、出産前に自分の乳頭を観察する機会、と考えるとよいでしょう。
そして、乳頭の形状によって必要な場合は、妊娠中からケアをしていきます。このほか、マッサージではありませんが、妊娠中はすでに母乳が分泌していて、垢になるので、それを除去する目的で定期的に垢取り(オリーブ湿布)をすすめることがあります」

妊娠中のおっぱいマッサージはいつからスタートすればいい? 禁忌事項は?

「妊娠後期に入ったころ(8カ月~/28週~)から行います。垢取りも同様です。
おっぱいマッサージをしない方がいいケースは、おなかの張り(子宮収縮)を感じているときです。
また、安静の指示がある人や、子宮収縮を抑える薬を飲んでいる人は控えます。垢取り(オリーブ湿布)は、乳頭乳輪をつまんだり、刺激を与えるものではないので、行っても問題ありません」

妊娠中のおっぱいマッサージのやり方

「乳輪のマッサージは、乳輪の周りに両手の人差し指・中指の指の腹をおいて軽く押してみて、乳頭を突出させます。
また、乳頭乳輪を親指・人差し指・中指の三本の指の腹でやさしくはさんだり、こよりを作るように指を動かして乳首をほぐすようにします。
このとき、母乳が分泌することもありますが、心配いりません。最初から強く指ではさんだり、痛いのに無理にやる必要はありません。やっているうちに、だんだん慣れていきます」

産後のおっぱいマッサージは必要?

「乳腺炎や乳首が切れるなどのトラブルを悪化させないために、産後直後から母乳育児に慣れる2カ月くらいまでの間、セルフケアとして行うとよいでしょう。
乳腺炎や乳首が切れるなどのトラブルは、この時期におこりやすいからです。
また、この時期の乳房は、日に日に状態が変わっていきます。乳房の変化に合わせて、なるべくその都度、対応できるとよいでしょう(張っているときはマッサージをする、落ち着いている日は行わないなど)。なお、乳首が切れているときに直接触れてマッサージすることは避けましょう。患部の悪化や感染による乳腺炎の原因につながります」


学研に聞く

産後のおっぱいマッサージのやり方

〈乳房がパンパンに張ってつらいとき〉

※出産の数日後~1週間前後におこりやすい
・マッサージのタイミング:授乳前

「乳房全体を手のひらで包むようにして、乳房の根元から縦・横にゆっくり動かします。張りが強いときには動きが悪いので、乳房を根元から剥がすようなイメージで行うと良いでしょう」

〈乳房が張って痛みがあり少し動かすのもつらいとき〉

※出産の数日後~1週間前後におこりやすい
・マッサージのタイミング:乳房全体がヒリヒリしてつらいときや授乳中
「人差し指から小指の4本の指の腹で、乳房全体を極々軽く触れて外側から乳輪に向かってなでるように動かします。このとき、4本の指同士を離して乳房に置き、サラサラとやさしくなでるように指を動かします」

〈乳房や乳輪が硬いときや浮腫みがあるとき〉

※出産の数日後~1週間前後におこりやすい
・マッサージのタイミング:授乳直前、赤ちゃんが浅吸いになるとき

「両手の人差し指~薬指3本ずつをそろえ、乳輪の両脇におきます。指の腹で、背中側に向かってゆっくりと圧迫します。数秒間、圧迫したら、ゆっくりと戻します。乳輪の上部下部を圧迫するときには、両手人差し指か、両手人差し指・中指の指全体を使うとよいでしょう。指を上下左右に動かしながら圧迫するのもよいですが、皮膚をすべらせて摩擦するのではなく、あくまでも乳輪をほぐすような動かし方で。硬く張りのあった乳輪が、唇や腕の内側くらいの柔らかさになるくらいまでやってみます。容易につまめるくらいになればOK。
乳輪が硬く張りが強いと、赤ちゃんも乳輪をくわえられず、唇がすべって浅吸いになります」

〈乳房に母乳が滞って出が良くないと感じるとき・しこりを感じるとき〉

※出産1週間後~
・マッサージのタイミング:授乳前、授乳中

「指2~3本の腹を使って、小さな丸を描くように、違和感やしこりのある部分をやさしくマッサージします。脇側から中心に向かって行います。このとき、皮膚をこすり過ぎないように注意しましょう。また、背中側にぎゅうぎゅうときつく圧迫しないようにします」

産後のおっぱいマッサージを行っても症状が改善されない場合は?

「自分で対応していても、困りごとが改善されないのであれば、助産師など、母乳育児の専門家へ相談しましょう。
乳腺炎も含め、たいていの乳房トラブルは、赤ちゃんに吸ってもらうこと、もしくは母乳を外に出すことが、予防と対策の基本です。
また、赤ちゃんが浅吸いになっていたり、吸っているのに飲み残しが多くてトラブルになることもあるので、深く吸わせることも大事です。母乳の出を良くするためにも同じことがいえます」

〈おっぱいマッサージの他に、乳房トラブルを解消するポイント〉

・頻繁に吸わせる
・深く吸わせる
・授乳の前後で肩を大きく回して背中をほぐす
・シャワーで胸や背中を温める・シャワー後に授乳をする
・授乳の回数やタイミングや1回の授乳時間に制限を設けずに、赤ちゃんが吸いたいときに吸いたいだけあげる
・ブラジャーや抱っこ紐、かばんなどで胸を締め付けたり、長時間圧迫しない

先輩ママ発! おっぱいマッサージ体験談

●危うく乳腺炎になるところだった!

「三男が生後2カ月半のとき、仕事で6時間ほど搾乳できない状況が続き、おっぱいがカチコチに。痛みも出てきて、これはまずいなと思っていたところ、やっと仕事が終わり、トイレに駆け込みました。おっぱいマッサージをしながら搾乳して応急処置をし、一目散に自宅に帰り、すぐに母乳を飲んでもらいました。
次男のときも同じような状況になったのですが、おっぱいマッサージと搾乳の応急処置をしなかったために、乳腺炎になりました。おっぱいマッサージを覚えておいてよかったです」
(T.Mさん/小1と小3と小6の男の子のママ)

●産後すぐのおっぱいマッサージで母乳育児がラクに

「母乳の出がイマイチで、産後2日目からミルクを足していました。その後産院を退院し、別の施設に産褥入院したのですが、そこで出会った代表助産師さんが神だった!
母乳の出が悪いことを相談すると、すぐにおっぱいマッサージをしてくれました。結構痛かったけれど、効果テキメン。滝のように母乳が出て、そこからは母乳だけで育てることができました」
(R.Kさん/2歳の女の子ママ)



出産の数日後から起こりやすい、乳房トラブル。悪化すると乳腺炎になる場合もありますから、注意が必要です。おっぱいマッサージに加え、前述の「乳房トラブルを解消するポイント」を実践し、健やかで幸せな母乳ライフを送りましょう!

教えてくれた人
助産師・原尻 風葵(はらじり ふうき)さん
沖縄県内公立病院・神奈川県内総合産婦人科の勤務を経て、現在は(株)Mocosukuに勤務。


(2023.05.19更新)

文/羽田朋美(Neem Tree