愛され続ける理由がある。改めて深く知りたい、鎌倉銘菓「鳩サブレー」の歴史と魅力、込められた思い

2024.5.15

どこか懐かしく、やさしい味わい。鳩をモチーフにした、可愛らしい形状。鎌倉銘菓として愛され続け、全国的な知名度を誇る、ギフトの定番としてもおなじみの〈豊島屋〉の「鳩サブレー」。知っていそうで意外と知らない、その歴史や魅力、そこに込められた思いについて、鎌倉にある豊島屋本店を訪ね、広報担当の宮井さんに詳しくお話を伺いました。 

株式会社豊島屋 広報担当 宮井通昌さん

「鳩サブレー」の歴史や魅力を教えてください。

ー今日は「鳩サブレー」の歴史や魅力などについて詳しくお話を伺えればと思います。よろしくお願いします!

宮井さん:こちらこそ、よろしくお願いします。〈豊島屋〉は明治27年(1894年)に和菓子屋として創業しました。当初は鎌倉で出土した古瓦をモチーフにした瓦煎餅が看板商品で、かなり大きなサイズだったそうですよ。

―瓦煎餅が原点なんですね。鳩サブレーはいつ誕生したんでしょうか。

宮井さん:「鳩サブレーの誕生は明治30年(1897年)頃です。きっかけは、初代店主が外国人のお客様から拳ほどの大きさの焼菓子をもらったこと。いままで食べたことがない味で非常に美味しかったそうで、この味を再現したいと思って試作を始めました。

―レシピなどはあったんですか?

宮井さん:無いですね。だから、初代の舌と勘が頼りです。なかなか同じような味にならないのでよく調べたら、その焼菓子にはバターが使われていることが分かったそうです。でも当時の鎌倉ではバターは手に入らず…横浜の異人館に足を運んでようやく手に入れて再び試作を始め、試行錯誤の末に納得のいく試作品にたどり着きました。


「鳩サブレー」の名前と形になるまでには、どんな経緯があったのでしょうか。

―この名前と形になるまでには、どんな経緯があったのでしょうか。

宮井さん:試作品を欧州航路から帰国したばかりの友人の船長さんに試食してもらったところ「これはフランスで食べたサブレーというお菓子に似ている」と。初代は「サブレー」という言葉の語呂が「三郎」に似ていることから、とても親しみを感じたそうです。

―三郎…たしかに似ていますね!そこからどうして鳩に?

宮井さん:地元の鶴岡八幡宮を崇敬していた初代は、八幡様にちなんだお菓子を作りたいと以前から思っていました。思案の末、八幡様の掲額の八の字が鳩の抱き合わせになっていること、八幡様の神の使いが鳩であること、境内に鳩がたくさんいて子供達に親しまれていることから、このお菓子のモチーフを鳩にしようと決めたそうです。そして名前には親しみを感じた「サブレー」を使い、「鳩サブレー」と名付けられました。

豊島屋

―誕生の裏にはそんなお話があったんですね。発売してすぐに人気商品になったんですか?

宮井さん:いえ、当時は一般的にバターになじみがなかったので、「バタ臭い」と言われて売れなかったみたいです。ようやく売れ始めたのは大正に入ってからですね。小児科医の先生が「鳩サブレーは離乳期の幼児食に最適」と推薦してくれたのが理由でした。

―なるほど。そこからようやく軌道に乗ったと。

宮井さん:そうなればよかったんですが…売れ始めたのも束の間、関東大震災で店が全壊してしまいました。ただ、初代はそれにもめげず早々に店を再建し、いまの本店がある場所に新店舗を構えました。

鎌倉本店の店構えや歴史について

こちらが現在の本店の店構え。歴史を感じさせながらも、モダンな外観です。

豊島屋

店頭のディスプレイにはおなじみの黄色い缶とボックスが並びます。

宮井さん:昭和に入ると世界大恐慌が起こり、日本は戦争へと突入。経済統制で砂糖をはじめとする原料が入手できなくなってしまい…。「良い菓子を作る」ことが信念だった初代は、良い菓子を作れないのなら店を閉めると言って休業してしまいました。

―なかなか上手く事は運びませんね…。お店はいつ頃から再開できたのでしょうか。

宮井さん:戦争が終わり、まだ経済統制下ではありましたが、菓子屋なので電気釜(オーブン)を持っていたため、要請もあって配給のパンを作ることから業務を再開しました。ただ、もちろん菓子屋ですからパンを作ったことなどなく、美味しいパンを作れなかったと聞いています。しばらくして経済統制も解除され、再び鳩サブレーを作れる日が戻ってきましたが、それを見届けることなく初代は亡くなってしまいました。

―初代の思いを受け継いで、その後、広く愛される人気商品になっていったんですね。

宮井さん:昭和30年代から40年代にかけて神奈川と東京のデパートに出店を開始しましたが、鎌倉が観光地として注目され始めたのもその頃で。比例するようにお客様もどんどん増え、おかげさまで“鎌倉といえば鳩サブレー”と言っていただけるほど広く認知されるようになりました。そしていまでも変わらぬ味で、この黄色い缶で販売しています。

豊島屋

本店の店内はゆとりのある広々とした空間。スタッフの明るい笑顔も印象的です!

―味は時代に合わせて変化しているんですか?

宮井さん:誕生時から味もレシピも変えていません。ただ、小麦粉も砂糖もバターも、原料の質が良くなっていますから、同じレシピではありますが当時よりも美味しくなっているはずですね。形も大きさも当時のままです。見た目で変わったところというと、昭和30年代にそれまで2本だった尻尾の部分の線を焼き上がりのことを考えて3本にしたと聞いています。

缶が黄色のには何か理由が?

―缶が黄色いのには何か理由があるのでしょうか。

宮井さん:バターの色を表現したそうです。昭和30年代後半くらいからこのデザインを採用しています。

ー昭和30年代から!いま見てもとてもおしゃれですよね。

豊島屋

現在の缶は、以前のものよりも少しマットな質感に。デザインは不変です。

豊島屋

缶の中で鳩サブレーはトレーに収められています。トレーは環境にやさしい紙製で、さりげなく鳩のモチーフが配されていたり、隠れた遊び心も随所に。

宮井さん:A4の書類が入る大きさでアフターユースしやすいのも人気の理由ですね。缶を大事に保存しているという声が多く聞かれたため、それならばということで、2002年からは鳩モチーフのグッズを鎌倉本店限定で販売するようになりました。

豊島屋

本店限定で販売されている鳩グッズの一部がこちら。その可愛らしさと豊富なバリエーションでファンを魅了しています!

―鳩グッズも大人気なんですよね!鳩サブレーが多くのお客様に愛され続けている理由は何だと思いますか?

宮井さん:シンプルなこと、そして「変わらない」ことじゃないでしょうか。あとはもちろん、美味しいこと。このサクサク感は、他のサブレーとは全く違うと自信を持って言えます。

ー大人でも子供でも、誰が食べても美味しいですもんね。どこかホッとする懐かしい味です。

宮井さん:素朴な味というんでしょうか。私はそのまま食べるのが一番好きですが、牛乳やコーヒーに浸して食べる方もいらっしゃいますね。バレンタインには、チョコレートでコーティングしたものがSNSで紹介されていたりもしました。あとはアイスクリームとの相性も抜群です。

ーギフトとしても人気ですが、その理由はどこにあるのでしょうか。

宮井さん:理由のひとつには、お店を全国展開していないことがあると思います。作るのも売るのも目の行き届いたところで行いたい、あくまでも鎌倉の銘菓でありたい、という考えをずっと貫いてきました。それが地方の皆様にとっては希少性につながり、鎌倉観光のお土産や手土産としても多くの方に選んでいただけている理由になっているのではないでしょうか。

展開しているお店について教えてください。

ー東急百貨店では5店舗(渋谷ヒカリエShinQs東横のれん街、たまプラーザ店、吉祥寺店、武蔵小杉東急スクエア、日吉東急アベニュー)で常設ショップを展開していますね。

宮井さん:そうですね、いずれのショップも鳩サブレーを主としながら、和菓子も取り扱っています。

ーそして地元の鎌倉には、豊島屋さんの展開するお店が5店舗あります。

宮井さん:はい、違った顔の豊島屋があります。まず本店では、おまんじゅうや落雁などの和菓子と鳩サブレー、そして鳩グッズを扱っています。昭和30年(1955年)にオープンした鎌倉駅前扉店は2014年にリニューアルし、鳩サブレーに加えて自家製のパンも展開しています。いまなら美味しいパンを作れるということで、美味しいパンが作れなくて悔しがっていたという初代の思いにようやく応えられました。

―時を経て、初代の思いがカタチになったんですね。

宮井さん:初代もきっと喜んでいると思います。そして、本店のすぐ裏にあるのが2006年オープンの甘味処「豊島屋菓寮 八十小路」。店名は「はとこうじ」と読み、数量限定の本わらび餅などが自慢です。2015年にオープンしたのが洋菓子店「豊島屋洋菓子舗 置石」。1階ではケーキや焼菓子、ソフトクリームを販売し、2階がカフェになっています。最後に、最も新しいのが2022年オープンの「豊島屋 瀬戸小路」。本店で昭和初期から作っている「わっふる」ですが、この店では焼きたての手焼きの「わっふる」を販売していて、定番の杏ジャムをはじめバリエーションも豊富です。5店舗それぞれに魅力がありますので、鎌倉観光の際はぜひお立ち寄りいただければと思います。願わくば、全店を回っていただいて(笑)

豊島屋

ー(笑)どのお店に行こうか迷いますね。では最後に、お客様にメッセージをお願いします!

宮井さん:鳩が各地へ飛び立つように、ギフトをきっかけに全国の方のもとに届き、この味を楽しんでいただけたらうれしいですね。そして、「鳩サブレー」は知っていても「豊島屋」は知らないという方もいらっしゃるので、これを機に豊島屋の名前も覚えていただければ幸いです!

〈豊島屋〉鳩サブレー 25枚入

〈豊島屋〉鳩サブレー 25枚入 3,651円(税込)

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