ぶどう畑の守護神 マイアの花を描いたキンタ・ダス・マイアス マイアス・ティント 2015

ぶどう畑の守護神 マイアの花を描いたキンタ・ダス・マイアス マイアス・ティント 2015

ラベルが語るワイン物語

CDやDVDにジャケ買い、という言葉があるように、ワインもラベルが奇麗なものや、興味深いデザインのものには、つい手がのびてしまいます。実際にワインのラベルは、ワインの歴史やエピソードを伝えるものが多く、そこにはさまざまな情報や物語が隠れています。ラベルのささやきを聞きながらワインを飲めば、いっそう美味しく楽しく感じられることでしょう。

ソムリエやワインアドバイザーなど、東急百貨店のワイン専門スタッフが約100種のワインからベスト10を厳選し、ネット販売も行う「東急おすすめワインランキング」。 今回はランキングに新登場、ポルトガルの伝統品種の素晴らしさを世界に知らしめた、生産者キンタ・ドス・ロケスのワインをご紹介しましょう。ポルトガル中部のエストレラ山脈麓のオーガニック葡萄から生まれ、健康で美しい葡萄由来のピュアで豊かな果実感が魅力。新年の始まりにも飲みたい、生命力溢れる赤ワインです。

豊穣の女神マイアが由来 エニシダの花をラベルに

写真:レモンのような香りで、5月に一斉に咲くマイヤ(複数形でマイアス)の花々。
写真 左上:春の訪れを喜ぶ5月祭には、窓辺に飾る習慣が。

ワインの名前は「キンタ・ダス・マイアス マイアス・ティント」。ラベルには細い枝に咲き誇る「黄色いマイアの花」が描かれています。マイアは日本ではエニシダと呼ばれますが、ヨーロッパ、特にポルトガルでは非常に大切にされている花。

ローマ神話の豊穣の女神マイアにも由来し、5月に一斉に咲きほころび、夏の豊作を予祝する5月祭に街中で飾られます。日本で言うところの桜の花のような存在。ポルトガルではマイアの開花を喜び、幸せを祈って一斉に窓辺に飾ります。

害虫から畑を守り 保湿性を促すマイア

写真:有機畑の周辺に咲くマイアの花。その強い芳香から害虫が近寄らずコンパニオンプランツの役割も担う。

このワインの生産者はポルトガル中部の歴史あるワイン産地ダンで、有機栽培を実践する「キンタ・ドス・ロケス」。ワイナリーの現当主ローレンソさんは、葡萄が多様な生物とともに生きる生態系を保つために、畑の周辺にもこのマイアの花を植樹しています。

「この花は昔から厄除けとして飾る習慣もありますが、葡萄栽培においても害虫から畑を守るコンパニオンプランツの役割も担っています。マイアを畑の周りに植えることで、害虫駆除の農薬を使わずに、土壌を守る有機栽培を行うことができます」

さらに大地にしっかりと根を張るマイアは、畑の保水性を促し、夏の干ばつを防ぐ役目もある大切な花樹。「そのためこの花に敬意をはらい、畑にもキンタ・ダス・マイアス(マイアス農園)という名前をつけ、ラベルにも描いているのです」と笑顔で説明してくださいました。

高い標高で有機栽培 伝統品種ジャエン由来の芳しさ 世界コンクールで次々受賞

写真:山脈に近いダン地方では、夏は涼風に恵まれ葡萄が過熟にならず美しい酸を保つ。

マイアス農園の畑は、標高の高いエストレラ山脈の南斜面にあります。そのため、春から初夏は温かい日差しが一日中降り注ぐ一方で、真夏は山脈からの涼風によって風通しがよく葡萄は過熟にならず、湿気による病害も防ぐことができる好条件。故に、酸と果実味のバランスに優れた健康な葡萄が生まれ、ワインも芳醇かつ美しくピュアな果実感と美しい酸が魅力です。

また、キンタ・ドス・ロケス当主のローレンソさんは「私たちは母国ポルトガルの伝統品種を保護し次世代に繋ぐことを信念としています。そのため、マイアス農園では、ジャエン、エンクルサード、トウリガ・ナショナルなどの伝統的品種を、化学肥料や農薬を排してオーガニック農法で栽培。2011年にはEU認定の有機認証も取得しています」と誇らしく語ります。

ポルトガル伝統品種を保護し世界に知らしめたパイオニア

写真:研究熱心で温かい人柄でも知られる2代目当主、ローレンソさんと奥さま。

創業から10年を経て、キンタ・ドス・ロケスはその信念が実って、2000年代には世界の有名コンクールで数々の賞を受賞。ブリュッセル世界ワインコンクール2008では金賞を、インターナショナル・ワイン・チャレンジ2008では銀賞を受賞。ポルトガルの伝統品種の素晴らしさを世に知らしめ、その躍進は今も世界のワイン愛好家を魅了しています。

このマイアスのワインもジャエンという世界でも非常に珍しい、伝統品種を主体にしたワイン。酸がフレッシュで柔らかな果実感と心地よい芳香を備えています。手摘みで収穫され、有機葡萄のピュアな果実味を生かすため、丁寧に除梗をして、発酵・熟成は樽ではなくあえてステンレスタンクで行っています。心を癒しリフレッシュさせ、非常にコスパに優れたマイアスの赤ワイン。お正月の食卓にもぜひお楽しみいただきたいワインです。

渋谷 東急フードショーのおすすめ

キンタ・ダス・マイアス マイアス・レッド 2015
(750ml) 1,540円

生産者:キンタ・ドス・ロケス
生産国:ポルトガル
生産地:ダン地方 DOPダン
葡萄品種:ジャエン主体、トウリガ・ナショナル、アルフロシェイロ他
タイプ:赤・ミディアムボディ

5月祭を祝うポルトガルの国花ともいえる可憐なマイアの花をラベルにデザイン。葡萄畑周辺にも植樹され、生物多様性によるオーガニック栽培を実践しています。標高が高く真夏でも葡萄が過熟にならないダン地方では、涼風が畑を吹き抜け、伝統品種ジャエンの美しい酸とピュアな果実感を引き立たせます。赤ワインですが、酸がフレッシュでピュアな美味しさは、お肉だけでなく魚料理にもマッチ。また、田作り、お煮しめ、ごぼうの八幡巻、熨斗鳥、などのおせち料理、ブリの照り焼き、すき焼きなどの和食にも合います。お正月の食卓でもぜひお楽しみください。

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教えてくれた人

伴 良美(ばん・よしみ) ライター&ワインエキスパート。映画、食、旅を中心に執筆。ワインと食の情報誌「ヴィノテーク」、北海道新聞、岐阜新聞などの取材記者としても活躍。世界の銘醸地や映画の舞台を訪ねた連載コラムに、フジサンケイビジネスアイ「世界銘酒紀行」「名画の舞台」のほか「男と女 名画とお酒」「シネマの名言」などがある。

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