伴 良美のラベルが語るワイン物語
冬の鍋料理や和食に ピュアで瑞々しくエレガント オーストリア新進気鋭の生産者 フーグル ヴィンマー グリューナー・フェルトリーナー クラシック 2019
CDやDVDにジャケ買い、という言葉があるように、ワインもラベルが奇麗なものや、興味深いデザインのものには、つい手がのびてしまいます。実際にワインのラベルは、ワインの歴史やエピソードを伝えるものが多く、そこにはさまざまな情報や物語が隠れています。ラベルのささやきを聞きながらワインを飲めば、いっそう美味しく楽しく感じられることでしょう。
ソムリエやワインアドバイザーなど、東急百貨店のワイン専門スタッフが約100種のワインから厳選する「東急おすすめワインランキング」。年3回選出会が行われ今秋から、新たなワインが続々とベスト10入りし、ネット販売も行っています。
今回はその中でベスト5に選ばれ、近年注目のオーストリアの白ワインをご紹介いたしましょう。それはウィーン郊外の大自然の中で、若き夫婦が造るエレガントで瑞々しいワイン。年末年始の家族団らんの食卓にもふさわしく、鱈やカニや牡蠣などの鍋物にも合う心癒されるワインです。
代々続く葡萄農家の若夫婦が造る 政府公認のクヴァリテーツ・ワイン
写真 右:ボトルキャップにはオーストリア政府が認めた、上質ワイン認定マークとナンバーが記されている。
ラベルに描かれたワイン名は「フーグル ヴィンマー グリューナー・フェルトリーナー クラシック2019」。このワインは、フーグル ヴィンマーという若夫婦の生産者が、グリューナー・フェルトリーナーという白葡萄100%で造る伝統的スタイルのワインです。
葡萄のつると葉を浮き上がらせた若草色のラベルは、ワインの味わいを伝えるかのように清々しく爽やか。そしてワインキャップの上部には、オーストリア政府検査機関が上質ワインと認定した、「クヴァリテーツ・ヴァイン」の国旗マークと品質管理番号が記されています。
2000年の歴史ある白ワインの銘醸地。近年高いパーカーポイント87点を獲得
オーストリアはヨーロッパの中でも知る人ぞ知る白ワインの銘醸地。首都ウィーンを中心に東部から南東部のドナウ川沿いの渓谷や丘陵地帯に、51150haもの葡萄畑が広がっています。
ワインは2000年以上も前から造られてきた歴史をもち、国民の文化の一部。どの街にも“ホイリゲ”という郷土料理とワインを楽しむ居酒屋風レストランがあり、週末や仕事帰りには友人や家族と陽気にワインを愛飲する人々の姿が見かけられます。
ワイナリーの多くは小規模で家族経営ですが、その数は9000件にも上ります。近年では優秀な若手生産者が活躍。それにより世界的評価が急速に高まり、このフーゲル・ヴィンマー ワイナリーも2013年、ワインアドヴォケイト誌のパーカーポイントで87点の高得点を獲得しています。
夫婦の名前と力を合わせ 家族で減農薬栽培とワイン醸造に励む
写真 下:娘さん二人は葡萄畑が遊び場でお手伝いもするそう。
このワインの生産者、フーゲル ヴィンマーワイナリーがあるのは、ウィーンから北60kmのチェコとの国境近く。葡萄農家の4代目同士が結婚し、自分たちの葡萄で自分たちのワインを造りたいと熱望し、30代の若さでワイナリーを設立しました。
ワイナリー名のフーゲルはご主人の名前、ヴィンマーは夫人の名前で、両家の葡萄畑を合わせた20㏊の畑を所有。オーストリアが誇る国民的葡萄品種グリューナー・フェルトリーナーを誇りに、夫婦が力を合わせて秀逸なワインを造り上げています。
母国の固有品種グリューナー・フェルトリーナーを誇りに
白葡萄のグリューナー・フェルトリーナーは、舌を噛みそうなくらい長く珍しい名前ですが、これはオーストリアを代表する固有品種。ハプスブルグ家の皇族も日常的に愛飲したといわれる母国が誇る貴品種です。
香りはソーヴィニヨン・ブランにも似ていて、ハーブやライムのような爽やかな芳香。ミネラルも豊かで、キレのあるフレッシュな果実味の辛口ワインに仕上げられます。そして、余韻にわずかに感じられるのが品種由来のホワイトペッパーのような気品ある香り。その芳香がアクセントとなり、魚介はもちろん、オーストリアの郷土料理であるウィンナーシュニッツェルのような仔牛のカツレツなど、しっかりとしたお料理にもよくマッチします。
最も日照の良い畑が生む旨みと豊かな果実感。冬の和食や鍋料理にも

写真 右:柚子やかぼす、柚子胡椒や山椒で食すお鍋や和食料理にもマッチ。
このワインの生産者である夫婦はこの品種を非常に大切にしており、自分たちの畑の中でも最も日当たりの良い南西向きの石灰質の畑に植樹しています。そのため瑞々しくもふくよかで豊かな果実感を備え、通常のテーブルワインとは一線を画するエレガントなワインに仕上げてられています。
フレッシュな酸とふくよかな果実感は、昆布や鰹などの出汁の旨みが効いた日本の和食にもピッタリ。これからの季節には、ポン酢でいただくタラちり、カニ鍋、水炊きなどの鍋料理やおでんにも。またお正月のおせち料理にもよく合います。
さらに、すだちや柚子やかぼすなどの冬の柑橘類、粉山椒、柚子胡椒、わさび、七味など、日本の薬味を使った料理にもとてもよく合います。カジュアルな価格ながら、懐が深く様々な料理と寄り添う柔軟性のあるオーストリアのグリューナー・フェルトリーナー。ぜひ冬の食卓でもお楽しみくださいね。
渋谷 東急フードショーのおすすめ
フーグル・ヴィンマー グリューナー・フェルトリーナー クラシック2019
(750ml) 1,650円
生産者:フーグル ヴィンマー
生産地:オーストリア ヴァインフィアテルDAC
葡萄品種:グリューナー・フェルトリーナー100%
タイプ:白・辛口・フレッシュでエレガント
首都ウィーンから北に60km、チェコとの国境近く、オーストリア最大の葡萄栽培地域ヴァインフィアテルに位置するワイナリー。母国の葡萄品種を誇りにする若い夫婦が造り上げるこのワインは、果実味とミネラル感に溢れ、エレガントで瑞々しい味わい。白い花を想わせるフローラルなアロマと、グレープフルーツやライムのような爽やかな風味をもつ。魚貝のカルパッチョやマリネ、カキフライ、生ガキ、ホタテのグリル、カツレツなど幅広く活躍。刺身や鍋物などの和食との相性も良く、カジュアルな価格帯ながら日本人の琴線にも触れるピュアでナチュラルな味わいが魅力です。
教えてくれた人

伴 良美(ばん・よしみ) ライター&ワインエキスパート。映画、食、旅を中心に執筆。ワインと食の情報誌「ヴィノテーク」、北海道新聞、岐阜新聞などの取材記者としても活躍。世界の銘醸地や映画の舞台を訪ねた連載コラムに、フジサンケイビジネスアイ「世界銘酒紀行」「名画の舞台」のほか「男と女 名画とお酒」「シネマの名言」などがある。