伴 良美のラベルが語るワイン物語
バーベキューや夏のイベントに カリフォルニアの芳醇 果実味あふれる キャノンボール メルロ 2019
ラベルが語るワイン物語
CDやDVDにジャケ買い、という言葉があるように、ワインもラベルが奇麗なものや、興味深いデザインのものには、つい手がのびてしまいます。実際にワインのラベルは、ワインの歴史やエピソードを伝えるものが多く、そこにはさまざまな情報や物語が隠れています。ラベルのささやきを聞きながらワインを飲めば、いっそう美味しく楽しく感じられることでしょう。
赤ワインが大好きなので、夏でも白ではなく赤ワインが飲みたいという人も多いですね。そんな方々に、お勧めのカリフォルニアのメルロの葡萄を使ったワインをご紹介しましょう。芳醇で果実味豊か、バーベキューソースにもよく合い軽く冷やせばアウトドアのシーンにもピッタリです。
膝を抱えてダイブする少年 抑制されない自由なワイン造りの象徴
ワインの名前はキャノンボール メルロ。ラベルには少年が膝を抱えてプールの水面にダイブする様子が描かれています。ワインとは一見関係のなさそうなユニークなラベルですが、生産者はなぜこのようなデザインをラベルに記したのでしょうか。
このワイナリーのオーナーで醸造家のデニス・ヒルさんは「キャノンボールは元々は丸い球を意味する言葉ですが、同時にアメリカでは夏の子供の遊びでもあります。球のように膝を抱えて丸くなって天に向かってジャンプし、できるだけ大きなしぶきを上げて水に飛び込む、夏遊びの通称でもあります。私はこのラベルの少年のように、子供の頃の抑制されていない自由なスピリッツこそがワイン造りの魂であると信じ、このようなラベルにしてみました」と語ります。
伸びやかで芳醇な果実感 20ドル以下で最高のワインを造る信念
デニスさんのお言葉のように、この赤ワインは自由で伸びやかで果実味あふれる味わい。と同時に気品もあり非常にコストパフォーマンスに優れています。
「私が目指すのはグレートなワインをグレートなコスパで提供すること。カリフォルニアのワインは高価なものが多い中、私は20ドル以下で優れた味わいのワインを造ることを目指しました。さらに、人種や宗教や社会的地位が違っても、お金持ちでもそうでない人も、今までワインを飲まなかった若い年代も、皆がただ純粋に楽しむことができるワインを真剣に造っています」
デニスさんは、カリフォルニアの葡萄農家に生まれました。カリフォルニア大学で醸造・栽培を学び、世界的にも有名なセゲシオ、ブラックストーンワイナリーでその敏腕を振るい、チーフワインメーカーにまで昇り詰めました。やがて自分自身のワイナリーを創設したいと切望。2014年に念願のワイナリー「キャノンボール」を設立したのです。
自らの足で探した カリフォルニア全域から厳選した葡萄
写真 右:夏のバーベキューにもよく合うキャノンボールのワイン。
葡萄は自社畑のほか、自分の足でカリフォルニア全土の葡萄畑をめぐり、舌でその味わいを確かめながら調達。小規模でも優れた葡萄を栽培する農家と契約し、それによってコストパフォーマンスに優れたワインを生み出しています。葡萄の多くは有機栽培を実践。このワインも健全な葡萄から生まれた、果実味豊かな芳醇な味わいです。
メルロというボルドーでも栽培されている黒葡萄品種を使用。これからの季節はバーベキューなどのお肉料理にもよく合います。グランピングに持ち込んで、ちょっとハイソなアウトドアのシーンで楽しんでみても。また、女性に人気のラム肉とも好相性。夏は軽く冷やせば、メルロの葡萄由来の瑞々しい果実味が引き立ち、トマトや魚介料理ともお楽しみいただけます。
渋谷 東急フードショーのおすすめ
キャノンボール メルロ 2019
(750ml) 2,860円
生産者:キャノンボール・ワイナリー
生産地:アメリカ・カリフォルニア州
葡萄品種:メルロ主体
味わい:赤・ミディアム~フルボディ
早熟で果実味豊かなカリフォルニア全土のメルロを巧みにブレンド。非常にリッチで芳醇な味わいのコストパフォーマンスに優れたワインです。スパイスやブラックチェリーのフレーバーをもち、酸はフレッシュで柔らか。気難しさのない伸びやかなワインは軽く冷やせは、夏の赤ワインとしてもお楽しみいただけます。余韻も美しく、トマトを使ったラタトゥーユなどの夏の煮込み料理、バーベキューソースにもよく合います。ラベルのごとくリフレッシングで活気あふれる味わいをお楽しみください。
教えてくれた人

伴 良美(ばん・よしみ) ライター&ワインエキスパート。映画、食、旅を中心に執筆。ワインと食の情報誌「ヴィノテーク」、北海道新聞、岐阜新聞などの取材記者としても活躍。世界の銘醸地や映画の舞台を訪ねた連載コラムに、フジサンケイビジネスアイ「世界銘酒紀行」「名画の舞台」のほか「男と女 名画とお酒」「シネマの名言」などがある。