濃醇でポリフェノール豊か 日本が世界に誇る黒葡萄の女王ミュゼ ドゥ ヴァン松本平ブラッククィーン 2019

濃醇でポリフェノール豊か 日本が世界に誇る黒葡萄の女王ミュゼ ドゥ ヴァン松本平ブラッククィーン 2019

CDやDVDにジャケ買い、という言葉があるように、ワインもラベルが奇麗なものや、興味深いデザインのものには、つい手がのびてしまいます。実際にワインのラベルは、ワインの歴史やエピソードを伝えるものが多く、そこにはさまざまな情報や物語が隠れています。ラベルのささやきを聞きながらワインを飲めば、いっそう美味しく楽しく感じられることでしょう。

近年日本ワインの人気が高まるなか、今回は自然豊かなアルプスの麓、松本平で生まれたブラッククィーンの赤ワインをご紹介しましょう。日本固有の葡萄品種といえば、甲州、マスカットベーリーAがよく知られていますが、ブラッククィーンも醸造技術の高まりによって洗練され、驚くほど質の高いワインが生まれています。濃厚ながらまろやかな口当たりで、キノコや煮込み料理、すき焼きやジビエにも合い、秋にピッタリのワインです。

まろやかで深い味わい アルプスの麓 松本平で生まれるブラッククィーン

写真:松本城の向こうにそびえるアルプス。その麓の台地に広がる松本平。

ワインの名前は『ミュゼドゥヴァン松本平ブラッククィーン』。ミュゼ ド ヴァンMUSEE DU VINとはフランス語で、“ワインの博物館”の意味。生産者のアルプスファームが「葡萄・土壌・美しい空気、水、豊かな日照量など、長野の魅力がいっぱいに詰まったワインを造りたい」との思いのから名づけました。

生産地は松本城が美しい松本市。お城からも見渡せる松本平のブラッククィーンの黒葡萄から造られています。ブラッククィーンは日本固有の黒葡萄品種。名前のとおり色が黒に近いほど濃く、果実味と酸が豊富。“黒葡萄の女王”は大粒で立派な房をつけます。
特に松本平は昔から、甘く濃厚なブラックウィーンが栽培される名産地。ラベルに描かれた黒く太い幹のように、樹齢の高い貴重な古木が今も残っています。

古くは生食用の葡萄 巨峰の人気に押され伐採の危機に

写真:黒葡萄の女王はポリフェノールが豊富。大粒で長く立派な房をつける。

色が濃くポリフェノールも豊かで、まろやかで滋味深い味のワインとなるブラッククィーン。しかしこの葡萄は1990年代には、消滅の危機に陥った時期がありました。そもそもブラッククィーンは昔から生食用として栽培されていた葡萄。しかし2000年になると巨峰やナガノパープルといった、他の生食用黒葡萄が人気を集めるようになり、多くの栽培農家がブラッククィーンの伐採を検討し始めたのです。

しかしアルプスファームのスタッフは、「豊富な色素やバランスのいい酸味をもち、松本平の環境によく適したブラッククィーンを、何とかワインに使用できないか?松本平ならではの気候・風土を表現する素晴らしいワインができるに違いない」そう考えるようになりました。

渋みを抑えるために丁寧な樽熟成 残糖と酸のバランスを熟慮した醸造

写真:自社畑は自然保護のための循環型農業と有機農法を実践。高い免疫力をもつ葡萄となる。
アルプスからの涼風が昼夜の寒暖の差をもたらし豊かな果実味と酸を生む。

そこでアルプスファームでは、葡萄農家に伐採の慰留と栽培の継続をお願いし、ワイン用に葡萄を購入することとなりました。そして、生食用の葡萄を立派なワインにしていくために、様々な研究と試作を重ねました。

その結果、葡萄の残糖と酸とのバランスを巧みに取り、濃い色素を活かして濃厚でありながら、渋みを抑え樽熟成によってまろやかな口当たりにしていくことに成功しました。今では日本を代表する赤ワインとなり、豊かな個性が世界からも注目されコンクールで入賞するまでになったのです。

栽培農家と協力して循環型の農業に 厳しい長野県産地呼称管理委員会認定を取得

写真 上:ワイナリーは厳しい品質管理のための最新設備が整う。
写真 下:ワインのラベルには厳しい審査によって取得した「長野県産地呼称管理委員会認定マーク」が

現在このワインを生産するアルプスファームは、長野の豊かな自然環境を保護していくために、循環型農業を実践しています。搾汁後の葡萄の絞りカスは有機肥料として畑に還元。それによって化学肥料の低減と免疫力の高い葡萄栽培を実現しています。また2012年、ワイナリーではより高度な食品安全管理システムに与えられる FSSC22000 を取得。厳正な品質管理と高品質なワイン造りを実現するシステムを構築しています。

さらにもう一度ラベルをご欄ください。ラベルの右上の黒く丸いマークの中に「長野県産地呼称管理委員会認定」の文字が描かれていますね。これは、栽培法、生産法、味覚の観点から厳しい検査を通過したワインにだけに与えられる認証です。ヨーロッパで言うところの AOC や DOC などにあたります。官能審査委員にはソムリエをはじめとするワイン業界の一線で活躍する専門家を迎え、香り、色調、味、バランスの4項目で厳しい審査を行います。

和食にもぴったり 甘辛いお醤油系のお料理にも

写真:優れたコスパで伝統の和食や洋風の家庭料理にもよく合う柔軟さをもつ。

一度は消えかかった長野のブラッククィーンが、アルプスファームの熱意と挑戦によって優れたワインとなり、日本が誇るワインのひとつとなったことを心から嬉しく思います。樽で丁寧に熟成しているので深みがあり、ジビエ、牛肉の赤ワイン煮、ハンバーグ、デミグラスやトマトソースを使った煮込みやパスタ、ハンバーグなど洋食にもピッタリ。さらに鰻、馬刺し、肉じゃが、すき焼き、鶏の照り焼き、筑前煮など甘辛いお醤油味やタレを使った和食料理ともよく合い柔軟性のあるワインです。滋味深くまろやかでどこか懐かしいブラッククィーンをこの秋ぜひお楽しみください。

なおミュゼドゥヴァンでは松本平のシャルドネで白ワインも造っております。こちらもフレンチオークで熟成した気品ある味わいです。赤・白ワイン、ともにどうぞよろしくお願いいたします。

渋谷 東急フードショーのおすすめ

ミュゼドゥヴァン 松本平ブラッククイーン 2019
(750ml) 1,553円

生産者:株式会社アルプス
産地:長野県塩尻市・松本市・松本平
葡萄品種:ブラッククィーン100%
味わい:赤・ミディアムボディ・熟したベリーと赤い果実の香り

1970年代から、長野ワイン発展のために県内400の葡萄農家と協力して「アルプス出荷組合」を結成。2008年には農業法人「アルプスファーム」を設立。塩尻桔梗が原の耕作放棄地を葡萄畑に再生しメルロ、カベルネ・ソーヴィニヨン、シャルドネ、そしてこのブラッククィーンを自社栽培しています。地元の固有品種として手塩にかけるブラッククィーンのワインは優れたコストパフォーマンスを備え、滋味深い一方で、フレンチオーク熟成由来の気品も備えています。 深い色調、凝縮された果実味、心地よい適度の渋みが特徴。グリルした肉料理、豚肉のトマト煮込み、ジビエ、ハンバーグステーキ、肉じゃが、鶏の照り焼き、ウォッシュタイプのチーズ、キノコ料理、ビターチョコなど幅広くお楽しみいただけます。

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教えてくれた人

伴 良美(ばん・よしみ) ライター&ワインエキスパート。映画、食、旅を中心に執筆。ワインと食の情報誌「ヴィノテーク」、北海道新聞、岐阜新聞などの取材記者としても活躍。世界の銘醸地や映画の舞台を訪ねた連載コラムに、フジサンケイビジネスアイ「世界銘酒紀行」「名画の舞台」のほか「男と女 名画とお酒」「シネマの名言」などがある。

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