サカイ優佳子の食育のヒント
レバノン風ひっくり返しご飯
ずっと作り続けている定番ご飯料理
もう20年以上は、折にふれ作り続けている料理があります。レストランで食べたり、本を見たり、といったことがきっかけで真似して作り始めた料理も、長い時間の経過とともに、オリジナルとは微妙に、あるいはかなり違ってきているんですよね。「これを加えると美味しいかも」とか、「この方が簡単に作れる」とか、家族の好みによってだんだんと変容してくる面白さ。家庭を持って30年を過ぎ、そんな「我が家の味」というものを改めて意識するようになりました。
夫がアメリカの西部出身ということもあって、和食が続くと辛いため、洋風、メキシコ風(アメリカ西部では昔からメキシコ料理は食べられていました)、アジア風、アフリカ風、中近東風と、いろいろなものを作ってきました。旅が好きなので、訪れた土地で仕入れた味が我が家の味になることも。
今回ご紹介するレバノン風ひっくり返しご飯は、何がきっかけで作り始めたのか思い出せないのです(レバノンは訪れたことがないし)。レバノンに限らず、イラク、パレスティナ、ヨルダンなどアラブ一帯で作られているというMaqluba(マクルーバ)が原型。Maqlubaは、ひっくり返すという意味をもつアラビア語です。
羊か鶏肉を使うのが定番で、ナスとカリフラワーが入ることが多く、トマトやジャガイモが入ることも多いのだそうです。これらを炒め合わせてから鍋底に敷き、その上にスパイスと合わせたご飯をのせて炊き上げたら、鍋からお皿にひっくり返して、上に松の実とパセリを飾るとのこと(Wikipedia英語版より)。
私が作るのは、牛と豚の合挽き肉だし、野菜は玉ねぎしか入れないし、鍋から直接ではなく、炊いたご飯と具を合わせるというお気楽版ですが、スパイスのおかげで十分にエキゾチックな風味は味わえると思います。大概の方に好評な料理です。ケーキのように切り分けてケーキサーバーで取り分けます。
スパイスはあるものだけで構いませんが(シナモンとオールスパイスだけでも)、アラブの料理はスパイスの足し算で美味しくなるところもあるので、多種類を入れることで、より複雑な風味と美味しさを味わえると思います。またターメリックが入ることで、ご飯が黄色く色づいて、見た目も華やかに。
そして、ひっくり返すのは、ぜひ食べる方々の目の前で。大いに盛り上がるはず。これも含めてご馳走です。
今年はコロナでパーティーもあまりないかとは思いますが、家族での週末の食卓にでも作ってみていただけたら嬉しいです。
#207 レバノン風ひっくり返しご飯 材料
- 米 2合
- 鶏がらスープ 適量
- A{シナモンスティック 1/2本、カルダモン 2粒、クローブ 2粒、ベイリーフ 1枚}
- ターメリック 少々
- 油 少々
- 玉葱みじん切り 1/2個分
- 合挽き肉 200g
- オールスパイス 小さじ1
- 塩・胡椒 各少々
- 好みのナッツ 50g
- クコの実 20粒(レーズンでも)
- ポアブルロゼ(ピンクペッパー) 少々
- 油 適量
作り方
- 米をとぎ、鶏がらスープを通常の炊飯の際と同量(少し硬めが美味しい)入れ、Aを加えてターメリックで好みの濃さに色をつけて炊く。
- フライパンに油をひいて玉葱を炒め、しんなりしたら合挽き肉を加えて炒める。
- 2にオールスパイスを加え、塩・胡椒で味を調える。
- ボウルの底に、から煎りした好みのナッツとクコの実、ポアブルロゼを敷き、3の肉、1のご飯、3の肉、1のご飯とぎゅっと詰めたら、皿の上に引っくり返す。
教えてくれた人
サカイ 優佳子 サステナブル料理研究家/一般社団法人DRYandPEACE代表理事 外資系金融機関等に勤務の後、娘のアトピーをきっかけに食の活動を開始。海外での豊富な食体験をベースにレシピを開発する。2002年から、あえて栄養学に触れず、五感で感じること、食から社会を見ることを重視する食育ワークショップ「食の探偵団」を主宰。08年からは田んぼを残したいと米粉の普及に尽力。11年から食品ロス削減にもなり、冷蔵庫に頼らず、輸送の際のCO2も削減できる乾物は未来食との想いから、乾物の普及につとめる。2013年から乾物を使ったカレーを食べることで内モンゴルの砂漠緑化に繋げる乾物ドライカレーパンプロジェクト及び乾物カレーの日をプロデュース。「レシピをみないでささっと料理ができる」、「毎日の料理が楽しくなる」家庭料理全般のパーソナルトレーニングをオンラインで実施して好評を得ている。
https://yukakosakai.com/