サカイ優佳子の食育のヒント
春を感じる 花わさび
花わさびの醤油漬けを食べながら、考えた、、、
太陽の光に春を感じる季節になると、「そろそろ出ていないかな?」と探すものがあります。花わさびや葉わさび。小さいですが根っこ=わさびも一緒について売られているのを見つけると、ちょっとトクをした気分にもなります。
以前、わさび農家さんに伺ったのですが、ここ10年ほどで鹿の害がとても増えたとのこと。鹿の害を防ぐことは喫緊の課題なのだそうです。
鹿の個体数が減少したために、1948年から雌の鹿を獲ってはいけないと「鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律」に定められたことにより、その数は復活しましたが、想定以上に増えてしまったのだといいます。それに伴い農作物が食べられてしまうことも問題になってきました。1998年に狩猟期間短縮措置を廃止したものの、増えた鹿はさらにその個体数を増やしてきました。1平方キロメートルあたり3~5頭が適正数と言われる中、今ではその10倍もの鹿が生息する地域も少なくないと言われています。
鹿は1日に5kg程度の食物を必要とする上、草や木の実や葉を食べるだけでなく、木の皮も食べるため、倒木の被害も出て(樹皮を環状に剥ぐと、栄養分が行き渡らなくなるため)、森が荒れてきていることも問題視されています。わさびは清流で育つことから、森が荒れればそれを育てることも難しくなります。そして、辛みのあるわさびですらも鹿が直接その新芽を食べるほどになっているのは、それだけ鹿の食べものが不足しているからでもあります。
先日、今年初めての花わさびを目にして早速醤油漬けを作りました。その心地よい辛みに春が近いことを感じます。美味しいわさびを楽しむためには、その育つ環境を守ることが必要です。増えすぎてしまった鹿を美味しく食べる仕組み作りはこれからの課題。そんなことも考えていきたいと思いながら、花わさびのツーンと鼻にぬける辛みを味わっています。
#174 花わさびの醤油漬け 材料
- 花わさび 200g、 ★A
- {醤油 大さじ2
- 酢大さじ1
- 昆布2cm角}
作り方
- 花わさびは、包丁の背で全体を叩いた後、2cm長さに刻み、熱湯をまわしかける。
- 1.の粗熱が取れたらぎゅっと水気を絞り、Aとともに密封容器に入れて冷蔵庫で半日ほどおく。
※密封容器に入れておかないと香りが逃げてしまいます。
※漬けて半日おくことで、香りと辛みのバランスが取れます。
※1週間程度で食べきってください。
教えてくれた人
サカイ 優佳子 サステナブル料理研究家/一般社団法人DRYandPEACE代表理事 外資系金融機関等に勤務の後、娘のアトピーをきっかけに食の活動を開始。海外での豊富な食体験をベースにレシピを開発する。2002年から、あえて栄養学に触れず、五感で感じること、食から社会を見ることを重視する食育ワークショップ「食の探偵団」を主宰。08年からは田んぼを残したいと米粉の普及に尽力。11年から食品ロス削減にもなり、冷蔵庫に頼らず、輸送の際のCO2も削減できる乾物は未来食との想いから、乾物の普及につとめる。2013年から乾物を使ったカレーを食べることで内モンゴルの砂漠緑化に繋げる乾物ドライカレーパンプロジェクト及び乾物カレーの日をプロデュース。「レシピをみないでささっと料理ができる」、「毎日の料理が楽しくなる」家庭料理全般のパーソナルトレーニングをオンラインで実施して好評を得ている。
https://yukakosakai.com/