答えてくれたのはこの人
シェフショコラティエ
小抜知博さん
「Bean to Bar」にこだわる〈プレスキルショコラトリー〉
―まずは〈プレスキルショコラトリー〉の紹介からお願いします。
小抜さん:自社でカカオ豆の焙煎からチョコレートを手掛ける「Bean to Bar」のショコラトリーとして、2016年に吉祥寺でオープンしました。鮮度にこだわり、「上質な素材」「香りのマリアージュ」を追求してチョコレートの本質的なおいしさを探求していますが、私はパティシエの経験もあるので、夏には専門店に協力いただいてジェラートを提供するなど、チョコレートを使ったいろいろなお菓子も手掛けています。
―小抜さんのチョコレート作り、スイーツ作りにおけるモットーを教えてください。
小抜さん:大きな枠では言えばチョコレートもスイーツですが、私の中では明確な線引きをしています。チョコレートについては、毎年カカオ農園の生産者に会いに行ったり現場を見たりして、その背景をしっかり伝えることを大切にしていて、生産者の“顔が見える”アプローチを心がけています。ケーキなどのいわゆるスイーツづくりで心がけているのは、複雑にしすぎないこと。素材の味をしっかり感じられるものを作るために、菓子作りのセオリーを重視して、基本的に「使う素材は3つ以内」というルールで構成しています。
青い花びらをポイントにした上品で華やかな仕上がり
―今年のクリスマスケーキの紹介をお願いします!
小抜さん:こちらの「ショコラ エ ミュール」です。最後までカカオを感じながらおいしく食べていただきたいという想いを込めてお作りしました。
―艶やかで上品な仕上がりですね。
小抜さん:見た目のポイントは青い花びらです。クリスマスは赤のイメージが強いと思いますが、上品で大人っぽい仕上がりのためにあえて青をチョイスし、金箔で華やかさも加えました。
―全体が円形を主にして構成されているのも特徴的です。
小抜さん:デザインにメリハリをつけるために普段はカドがある形も組み合わせますが、試しに円形だけで構成してみたところ意外と上手くまとまったので、これも面白いなと。上面の大きな円形チョコレートには、ちょっとした遊び心として木目のデザインを施しました。
重なりあう多彩な味わいをショコラムースで包み込んで
―全体はどういう構成になっているのでしょうか。
小抜さん:上部のデコレーションは、ガナッシュベースのショコラクリームと、円形や雪の結晶の形のチョコレート。クリームの絞り方も、目をひくように動きをつけました。本体の表面にまとわせたのは光沢のあるグラサージュショコラで、ただの艶出しではなく、ソースの役割で味わいの要素のひとつになっています。
小抜さん:中身の主役となるのは、マダガスカル産カカオを使用し、紅茶のフレーバーを少し加えたショコラムースです。そのショコラムースで包み込んだのが、甘酸っぱい桑の実のジュレ、香り高い紅茶のクリーム、桑の実のピューレを含ませたビスキュイショコラという3層。底の部分にはサクサク食感のショコラサブレを敷きました。
―ショコラ好きにはたまらないですね!桑の実のジュレなどは想像がつかないのですが…味わいとしてはどんな仕上がりなのでしょう。
小抜さん:ショコラムースでカカオをしっかりと感じ、紅茶のクリームが味に奥行きを与え、爽やかな味わいの桑の実のジュレですっきりとキレを出す、甘さ・酸味・苦み・香りの調和を大切した構成です。ビスキュイショコラのしっとり感、ショコラサブレのサクサク感もあわせ、ひと口ごとに変化するテクスチャーと余韻が楽しめます。
―大人のケーキという感じですね!
小抜さん:カップル向けというのは少し意識しました。重たい仕上がりではないので、二人で半分ずつでもいけちゃうと思いますよ。がんばった一年の締めくくりに、大切な人といっしょに、そして自分へのご褒美として、お楽しみいただければと思います!
