サカイ優佳子の食育のヒント
乾物の魅力がつまった乾物スープ
乾物を普段から使いこなして、もしもに備える
乾物っておもしろいな。そう思ったのは、2010年の暮れ。その数ヶ月後、東日本大震災が起き、私が住む地域は計画停電が実施されることになりました。冷蔵庫を使うことができない状況にもかかわらず、生鮮食品が売り切れているのに、乾物はいつもと同じようにスーパーの棚に並んでいます。その光景を見た時に「今の時代のライフスタイルにあった乾物の使い方を研究し発信していこう!」と心に決めたのでした。
日本は、その後も各地で震災被害に見舞われ、西日本の豪雨でも多くの方が避難所で過ごすことになりました。防災の専門家に伺ったお話では、避難生活で最も怖いのは「出なくなること」なのだそうです。トイレの整備は本当に重要で、出なくなると食べることができなくなり、急激に衰弱するケースがあるとのこと。そんな時に大切なのが食物繊維の摂取です。冷蔵庫が不要で水分があれば戻すことができる乾物は、食物繊維の宝庫でもあります。そして煮るだけでダシがたっぷりと出ます。
その方も自ら野菜を切って乾物を作り、市販の乾物も組み合わせて普段からいろいろな料理に使っているとのことでした。もしもの時には、普段していることしかできないから、と。そして、普段づかいすることでこそ、ローリングストック(使ったら補充することで常に新しい備蓄を実現するストック方法)の実現もできます。
乾物は煮物という枠を外し、乾燥することで長期保存ができる食材と捉え直せば、和食だけではなく、洋風にもエスニックにもさまざまな料理に便利に使うことができます。普段はそういう料理を楽しみながら、もしもの時のために一鍋で作ることができる簡単乾物料理を知っておくことには意味があると思います。
海の物、山の物を取り合わせて鍋に入れて沸騰したら弱火で10分ほども煮れば、塩胡椒だけでも滋味深いスープが出来上がります。小麦粉を溶いてスプーンですくって落とせばすいとんに。春雨やパスタを入れてもいいでしょう。簡単に栄養バランスに優れた温かい料理が出来上がります。レシピと言えるほどのものではありませんが、参考の分量を記しておきます。
なお、もしもの時に使える乾物料理のヒントをブログに書いています。
参考にしていただけたら嬉しいです。
#179 乾物スープ 材料
- 茄子(中) 2本
- 卵 2個
- 万能ネギ(あるいは三つ葉) 適量 ★A
- {切干大根 10g、干しにんじん 5g
- スライス干し椎茸 2g
- 煎り大豆 5g
- 刻み昆布 1g
- 水 2カップ}
- 塩 小さじ1/4
- 粉山椒 少々
作り方
- Aを鍋に入れて火にかけ、沸騰したら蓋をして弱火で10分ほど煮る。
- 塩、胡椒で味を調える。
※ジャコや小エビ、鰹節などを加えても。
教えてくれた人
サカイ 優佳子 サステナブル料理研究家/一般社団法人DRYandPEACE代表理事 外資系金融機関等に勤務の後、娘のアトピーをきっかけに食の活動を開始。海外での豊富な食体験をベースにレシピを開発する。2002年から、あえて栄養学に触れず、五感で感じること、食から社会を見ることを重視する食育ワークショップ「食の探偵団」を主宰。08年からは田んぼを残したいと米粉の普及に尽力。11年から食品ロス削減にもなり、冷蔵庫に頼らず、輸送の際のCO2も削減できる乾物は未来食との想いから、乾物の普及につとめる。2013年から乾物を使ったカレーを食べることで内モンゴルの砂漠緑化に繋げる乾物ドライカレーパンプロジェクト及び乾物カレーの日をプロデュース。「レシピをみないでささっと料理ができる」、「毎日の料理が楽しくなる」家庭料理全般のパーソナルトレーニングをオンラインで実施して好評を得ている。