日常の食卓にちょっとした異国の旅気分を
秋になると、果物売り場に色とりどりのぶどうが並びます。ぶどうが一年で最も甘くなるのは、この季節。昼間は日差しを受けて光合成が進み、葉で作られた糖分が実に蓄えられます。夜は気温が下がるため、呼吸による糖の消費が抑えられて、甘みがぎゅっと凝縮。昼夜の寒暖差が大きいほど、昼に糖を増やし、夜に減らさないから、甘みが強くなります。山梨や長野などが名産地として知られています。
本来、日本のように雨の多い気候は、病害や虫害が出やすく、果皮が裂けやすいため、ぶどうの栽培には向かないのだそうです。研究者や生産者が長年品種改良に取り組んできたことで、日本の気候に適し、耐病性を備えた品種が次々に誕生しました。おかげで私たちは美味しいぶどうを食べることができるのですね。
ちなみに、世界で生産されるぶどうの約7割はワイン用ですが、日本ではそのまま食べる生食用が9割を占めています。フルーツ用ぶどうは果皮の色によって、黒系、赤系、黄緑系の3つにわけられ、アントシアニンという色素が多いほど色が濃くなります。
今回は、そんなぶどうを主役にして「カルダモンとシナモン香る 鶏肉とぶどうの煮込み」を作ってみました。料理の見栄えを考えて黒系と黄緑系を使っています。
カルダモンは爽やかで甘い香り、シナモンは温かみと奥行きを加えます。どちらも香りを楽しむスパイスで、私はこの二種類の組み合わせが大好き!モロッコ料理などでよく使われる組み合わせです。仕上げにほんの少しカイエンペッパーを加えることで、味全体がきりっと引き締まります。
日常の食卓にちょっとした異国の旅気分をもたらしてくれる一皿。旬の香りと味わいを、ぜひ秋の食卓で楽しんでみてください。
#263 鶏肉とぶどうの煮込み
材料
鶏もも肉 400g
ぶどう 200g (できれば黒系と黄緑系を合わせて、種無しが食べやすい)
玉ねぎ 1/2個 (100g程度)
にんにく 1かけ
白ワイン 大さじ1
A {シナモンスティック 1本、カルダモン(ホール) 5粒、昆布水(※) 100ml}
オリーブオイル 適量
塩・胡椒 各少々
カイエンヌペッパー 少々
作り方
1. 鶏肉は一口大に切り、オリーブオイルをひいた鍋で両面に焼き色をつけたら取り出す(この段階で中まで火が通っている必要はない)。
2. 薄切りの玉ねぎとみじん切りのニンニクを1の鍋に入れて中火で炒め、玉ねぎがしんなりしたら1の鶏肉と白ワインを入れてさっと炒め合わせる。
3. Aを加えて蓋をし、沸騰したら弱火にして15分ほど蒸し煮にする。
4. 枝からはずしたぶどうを3に加え、5分ほど中火で煮たら、塩・胡椒で味を調え、カイエンヌペッパーをふる。
※昆布水は、1リットルの水に昆布20g程度を入れて7~8時間以上おいたもの。なければ水あるいは野菜ブイヨンや鶏がらスープでも。
教えてくれた人
サカイ 優佳子 サステナブル料理研究家/一般社団法人DRYandPEACE代表理事 外資系金融機関等に勤務の後、娘のアトピーをきっかけに食の活動を開始。海外での豊富な食体験をベースにレシピを開発する。2002年から、あえて栄養学に触れず、五感で感じること、食から社会を見ることを重視する食育ワークショップ「食の探偵団」を主宰。08年からは田んぼを残したいと米粉の普及に尽力。11年から食品ロス削減にもなり、冷蔵庫に頼らず、輸送の際のCO2も削減できる乾物は未来食との想いから、乾物の普及につとめる。2013年から乾物を使ったカレーを食べることで内モンゴルの砂漠緑化に繋げる乾物ドライカレーパンプロジェクト及び乾物カレーの日をプロデュース。「レシピをみないでささっと料理ができる」、「毎日の料理が楽しくなる」家庭料理全般のパーソナルトレーニングをオンラインで実施して好評を得ている。