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夫、6歳の息子、4歳・2歳の娘たちと暮らす、渋谷に住む30代ママ。メガバンク→経済メディア→フリーの文筆家。たまに翻訳も。癒やしと家事育児が楽になるツールやサービスを全力で探し続ける日々。趣味はサウナ。
コンビニの「冷やし中華はじめました」ののぼり旗を見ると、夏だな、と思う方もいるだろう。かたや、小さな子どもを持つママにとっては、「トイレトレーニング」のスタートを意識するサインになるかもしれない。
ねんねトレーニングと同じく、トイレトレーニングについても、先人たちが試行錯誤を繰り返し考え出したメソッドが巷に溢れている。以前は 育児書でしか手に入らなかった情報も、今やウェブ上で取得できる時代。一見、便利に思えるが、これは一長一短である。SNS等で披露される華麗な成功体験を見ると、「どうして自分だけできないのだろう」と落ち込んでしまう場合もあるからだ。別のトレーニングのメソッドを試しては、またできなくて再び落ち込む……、という負のスパイラルに陥ってしまうこともあるだろう。
現在7歳となる長男だが、彼が3歳の時、私も同じ状況に陥っていた。
周りが続々とおむつを卒業していくなか、「どうしてうちの子だけ」と思ってしまうことも。おむつのサイズアップとともに値段が上がることもあり、一刻も早くトレーニングを終了させたかった。最終的にトレーニングは成功したのだが、その後に起こったある出来事をきっかけに、私は第2子と第3子のトイレトレーニングは行わないことにした。
ある出来事とは、息子が発症した病気だ。
息子が3歳を迎えた直後、「小児ネフローゼ症候群」という原因不明の腎臓系の難病にかかってしまった。ちょうどトイレトレーニングを終了した直後だった。5週間の入院を要することになって、その間はおむつをしなくてはならなかった。またおむつに逆戻りである。
当時、転職直後だったこともあり、この入院は大変だった。しかし、悪いことばかりではなかった。実家の両親に来てもらったり、ファミリーサポートの方に第2子を見てもらったりするなかで、人に頼ることの大切さと、助けてもらえるありがたみを感じられたのだ。すべてこの入院がきっかけだった。
そして何より、「トレーニングをなんとか成功させたところで、子どもって思い通りに行かない」と学んだことも大きかった。
トイレもねんねも、いつかはできるようになる。それを「トレーニング」という名の元、多くの親は真面目さゆえに、無理をして頑張りすぎている一面があるのかもしれない。
お陰さまで、現在長男の治療はうまく進んでおり、元気に小学校生活を送っている。人生何があるのか分からないのだからと思い、こういったトレーニングには固執しなくなった。
「misfortune」という英単語がある。不運や不幸な出来事という意味があり、ホームレスや会社をクビになった人、貧しい人に対しても使われるようだ。その時に恵まれていないのは運が悪かっただけ、という西洋の考え方が現れているのかもしれない。本人の実力があっても成功できないこともあるし、できなかったからといって幸せではないわけではない、という考え方。
だから、「夏にトイレトレーニングを成功させなければ!」と意気込み、そのまま冬が来てしまっても、落ち込むことはないと思う。その子なりのペースがあるのだから。のんびり付き合えばいいだけなのだ。
子どもと一つ屋根の下でご飯を食べて眠ることは、実はものすごく幸運なことだったりする。その後に入退院を繰り返した息子を含め、それができない子どもたちをたくさん見てきたからこそ、強く思う。
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